第77話『聞きたいこと』
屋台で売られていた飲み物を手に、噴水広場のベンチで休憩する。木のコップに注がれた飲み物は白くて、味はヨーグルトの薄い感じがする。体が温まるようで、ホッと一息つく。
クラウスさんを盗み見たら、目が合ってしまった。何か言わないといけないかなと思って、とにかく頭を下げた。
「あの、今日はありがとうございます。久しぶりに街を歩けて楽しかったです」
「こちらこそ。久しぶりに女性と出歩けて楽しかったです」
「じょ、女性なんて」ま、女性ですけど。
クラウスさんはわたしから目をそらして、空を仰いだ。白銀の髪の毛が風でさらっと流れる。同じ人間とは思えないくらい綺麗な横顔をしている。その横顔にずっと聞きたいことがあったんだ。
「クラウスさんはどうしてわたしを見つけてくれたんですか? 護衛になるのも志願してくれたって聞きました。どうしてですか?」
クラウスさんが自ら志願したと聞いたときから、それがどうしても腑に落ちなかった。聞く機会がなかったけど、今なら応えてもらえるような気がした。黒い瞳がわたしに向けられる。
「はじめは後悔からでしょうか。俺の父は以前の神子様を守護する立場でした。しかし、神子様は国王に手をかけることになってしまいました。父は城を追われて、騎士もやめました。それでも、秘密りに届いた手紙には、神子様を守りきれなかった後悔と謝罪しかありませんでした。俺は今度こそ神子様を守りたかったのです」
「そうだったのですか」
きっと、その「神子様」というのがレーコさんなんだと思う。だから、ニホンの文化に興味を持ってくれたのかもしれない。
「ですが、今はあなたを守りたい。その気持ちに偽りはありません」
「あ、ありがとうございます」
クラウスさんのさわやかで素敵すぎる笑顔に、ただただ恐縮するしかなかった。
あとは、とっておきの秘密と言って、クラウスさんは森の外の地図もお父さんからもらい受けたのだと話してくれた。お父さんの後悔を拭うためにわたしについてくれたのだ。それなのに、森の外に出ることになってしまって、申し訳ない。
頭を下げると、クラウスさんは「謝らないでください」と笑顔を浮かべた。
「でも、こんなことに巻きこんじゃって申し訳なくて」
「サディアスに対してもそう感じますか?」
何で今、サディアスが出てくるの? そう思ったけど、わたしは首を横に振った。あいつはいいの。森の外に出たことも楽しんでいたみたいだし、気をつかうことも無駄だからだ。
「どうか俺にも気をつかわないでください」
満面の笑みでクラウスさんはそう言ってくれたけど、気をつかわないってどうやったらいいのか、わからない。だけど、クラウスさんの瞳の強さに負けてうなずいた。そうしたら、彼は嬉しそうにありがとうと言ってくれた。




