特別編『ハッピー・ハロウィン』10月31
※本編とは一切の関わりありません。キャラ崩壊もあり。
国境も時間も超えてます。
「ということで紀伊さん、はい」
「何がどうなってということなのか」
カオルは手渡された被り物を見た。何故か目が赤色に発光している本物のかぼちゃ。中身の行方はどこだろう。
(本物なのに目が発光してるのは何故だろう。気にしちゃ負けなのだろうか……)
「いいから、着替えてね~」
笑顔で手を振り、七菜は何かを持って去って行った。
横を見るといつのまにやら簡易試着室があった。他にやることもなく、仕方なくそこに入って着替えることにする。
~数分後~
「カオルー!」
ホマーの声が聞こえる。
簡易試着室から出ると小悪魔チックな格好をしているホマーが抱きついてきた。
可愛い。が、いつの間に
「女神様が来てねー、これ着てねって」
「へえ」
頭を撫でていると、シーリーンさんやサイードさんもやってきた。
「父さんと母さんはお菓子配りに散ったわ」
「そこは「行ったわ」って言いましょうよ」
散っちゃダメでしょ。いや、いいけど。
「……あなたカオル?」
「そうですけど」
「! カオル顔かぼちゃになってる」
「え? ホマーちゃん今気づいたんですか?」
抱きついておいて今更?
かぼちゃの被り物に、かぼちゃずぼんというチョイスに悪意を感じる。
「そういえばロスタムは?」
「寝てるわ」
「……らしいといえば、そうね」
今は朝ですからね。
「わー!! 紀伊さん、見事なかぼちゃキングっぷりだね!」
「褒められている気がしない。で、自分は魔女と」
「うん! 猫耳と猫帽子どっちがいいかなって悩んだんだけどね~」
にゃんにゃんと招き猫の様に手を丸め動かす七菜に、猫ダマシを食らわせるカオル。
本人は目をまん丸にしてぱちくりさせていたが、首を横に三度ふり手を広げた。
「trick or treat」
カオルは言われる前に手を出した。
「いいよー」
ぽん、と手に飴を一個手渡された。
(何故、男梅飴!?)
「紀伊さん紀伊さん、えっへへ~! trick or trick」
「どこのゲスだよお前」
Treatはどこいった。
「分かったtrickだね!」
「解せぬ」
七菜は猫のステッキを取り出し(コイツもなぜか目が発光している)振り回した。
「その猫の杖なんかゲスイ顔してるな」
「聖なるハロウィン・マジック!!」
「ハロウィンの意味分かってる?」
本来は海外のお盆だぞコラ
猫の口が開いて赤い光が発光した。
ぺかー。
光が消えるのと同時に、目の前に広がる男たち。
「あ、キィだ! はぴはろ~」
「イリアス様!?」
はぴはろって、あけおめ風に言われても。
よく見ればガイウスも、レントゥティスも、カロロス君も名前のわからぬ唾吐き爺さん(根に持ってる)もいた。
「キィか、久しぶりだな。あれだな。うん、丸くなったな!! なんというか、うん、いいカボチャ色だな!」
「レントゥティス様、冗談にしても殴りますよ」
サルのキィがカオルからかぼちゃを奪ってむしゃむしゃ食べ始めた。生でいける口ですか。
「なんで、俺は召喚されないんだー!!」
叫びながらアリーがどこからともなく現れた。
「だって、居るの見えたし」
「女神様すごーい」
「ご都合魔法だよ☆」
本人が言うなよ。
なんだか、一種のパーティっぽくなってきたなと思っていると、料理とお菓子を持ってミラとアリーシャがやってきた。
「まあまあ、キィ。こんなときぐらい楽しもうじゃないか」
「ガイウス様、魔法使いの格好似合ってますね」
本当に賢者っぽい。
「ねえキィ。僕の仮装どう?」
「お美しいですよイリアス様」
天使の服装、もしイリアスでなく他の人が来ていたらドン引きだったであろう。しかし、その服装すら、まるで彼のために作られたようににあっていた。
その美に嫉妬。
べり。
「「あ」」
不機嫌顔のロスタムが、嬉しそうに傍に居たガイウスとイリアスをカオルから強引に引き離す。
そしていそいそとカオルを自分の背中に隠しながら叫んだ。
「散れ! フラグ折れた組」
「うっ、煩いよ!!」
「私は死亡フラグが立ったからね……」
「悲しすぎますガイウス様!!」
イリアス様がドン引きしてますよ。
七菜がとっとこーとカオルの側によってきた。
「何?」
「モテて嬉しい?」
頭を掴んで持ち上げた。「があああ」と叫んでいるが聞こえないふり。
「まぁまあ、ところでカオル」
「なんですか? シーリーンさん」
「ハロウィンって何するものだっけ?」
「さあ? やったことないので」
「私もないのよ」
テレビで見る程度。
「宗教違うもので」
「そうだよね」
サイードが頷いた。
「日本人って楽しいイベントあったらなんでもやっちゃうからね」
「貴方さも日本人ですみたいな発言しないでください」
人多すぎで何が何やら。
と、頭を掴まれ倒れていた七菜が復活した。
「第二弾! ハロウィンマジック!」
普通に魔法って言えよ。
ぺかー。
カオルは目を擦った。
「次は何したんだ……え?」
声が太くなった?
「やだ! 男の紀伊さんかっこいい……!」
頬を染めながら、目を輝かせている七菜の目に映る自分はまさしく『男』だった。
「カオルから離れな!」
ふわっと甘い匂いがしたと思ったら、気の強そうな女に抱きつかれた。慎ましやかな胸が腕にあたる。もしかしなくとも、ロスタム?
「私も参戦するわ!」
はちみつ色の肌をしたボインな姉ちゃんがカオルを後ろから抱きついてきた。背にあたる柔らかい感触。これはアリーか?
「なんで、性格も性別にともなってんだ?」
「女言葉の男は嫌でしょ?」
「有りだけど。で、なんで自分だけ平気なんだよ」
「都合魔法だから」
「それ言えば許されると思うなよ」
頭を掴むと、その手を奪われた。
「ねえ、今からでも折れたフラグ回復できるよね」
「立ってすらなかったよね、イリアスちゃん」
手を握ってうるうると瞳を潤ませる美しすぎる美少女と、にこやかにほほ笑む薄幸の美女。イリアスとガイウス様だろう。やばい、これは……良い。
女の時には思わなかったけど、かなりの目の保養ではないだろうか。
まさに眼福。天国はここにあった。
「ロスタムさん!」
細マッチョなミラと、あんまり変わらないアリーシャがロスタムにハートの形をしたカボチャを差し出した。
「僕の愛を受け取ってください」
「僕のほうをぜひ、受け取ってくださいまし」
こいつら性格あんま変わんないな。というか愛というよりカボチャじゃん。
その愛は食べれますか?
「嫌よ。ど、どうせなら……」
「ん?」
目がこちらへ向いた。
「ああ、愛なら猿に食われたぞ」
最初に。
「「カオルのばかーああああ」」
何故アリーにもバカ扱いされたのか。
「さて、七菜よ」
「はい」
(ん? 素直だな)
親指を群集のほうへ向けた。
「戻せ」
「えぇぇ~似合ってるのにぃ~。むしろそっちのほうがいいよ! あたしの理想だもん。むしろ生まれてくる性別間違えたんだよ」
「煩いよ」
カオルは少し考え、何故か泣き崩れているロスタムの肩を掴んだ。
「悪いけど、俺にはこいつがいるから」
「!!」
嬉し涙を流すロスタムに、ショックの顔を見せるアリー&七菜
「わああん」
七菜はステッキを振り回した。
「あぶな、普通に危ない」
「はろいーん!」
ぴかー。
再び光る魔法。
最後にごすっと、腹部に加えられた痛みに記憶は薄れた。
「紀伊さん、紀伊さん。ねえ、起きて紀伊さん!」
カオルは目を覚ました。
「七菜?」
「大丈夫? 寝てたみたいだけど」
「夢か……」
嫌な夢だった。
立ち上がろうとして、何かが手に触れた。
「ん?」
それは見たことのある、ゲスイ顔をした猫のステッキだった。




