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現代→古代  作者: 一理
comeback love
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デートのようで

 部屋で服をたたんでいると、誰かが部屋に入ってきた。

「カオル」

 肩をとんとん、と叩かれた。振り返るとふくれっ面のホマーが居た。

 あれからロスタムはアリーシャとミラ、それぞれとデートを重ねている。

「なんですか?」

「兄さんと会えなくて、さみしい?」

「いいえ」

「どうして?! やっと会えたのに」

「やっと会えたからですよ」

 カオルは微笑んだ。

 長いこと会えなかった、でも会えた。

 そもそも本来なら出会うはずのなかった私たちだ。なのに、不思議なことに出会い、一緒に過ごしている。

 このことは自信につながった。

「どんなことがあっても、きっとロスタムに出会えます」

 永遠の別れでない限り、出会えるんだから。

「それに朝は会ってますし」

 誰が彼を起こしていると?

 そう言えば不満そうに「そうだけど」と言い、ホマーはまたふくれっ面になった。

 ドアがノックされた音が響く。

「はい?」

 振り向くとロスタムが立っていた。

 空気をよんでかホマーは去って行った。これはいつかあった日の光景に似ている。

「今日は、誰とデート?」

「そういうの平然と聞くかふつう」

 人のベットに腰かける。

「ちょっとからかってみただけ。……誰と居ても、私はロスタムが好きだよ」

 服をたたみ終えた物を箱の中にしまう。

「おい」

 顔をあげるとキスされた。

 何故だろう、男なのに、乙女に見えるのは

「ん……ロスタムってさ」

 息がかかってこしょばい。

「犬みたいだよね」

「あ?」

「それも大型犬」

 ロットワイラーっぽいかも。それでいったらきっとホマーちゃんはミニチュア・ダックス・フンドだね。サイードさんはサモエドかな。シーリーンさんはペキニーズだと思う。

 想像したら可笑しくて堪らない。

 クスクス笑っていると、頬をつつかれた。何やらとても不満そうだ。

「なんで? いいじゃん、好きだよ」

「お前」

 ジト目で見られた。

「俺をペットと同等の目でみてんじゃねーだろうな」

 カオルは何も言わず微笑んだ。

「おい」

「ん?」

 手を握られた。

「デート、付き合えよ」

「今日は私となんだ」

「嬉しいだろ? 光栄に思え」

 そういって反論する間も貰えず、ただ手をひかれた。

「あ、カオルこの後……むぐ」

 廊下を歩いているとホマーと出会い、何か言いかけていたがシーリーンに口をふさがれ、サイードが手を振って見送ってくれた。

 察し、ありがとうございます。

「どこ行くの?」

「二人っきりになれるとこだ」

 町中で手をつないで歩いていると、まぁなんというか、商人ゆえの縁か、ことごとく出会う知り合いにからかわれた。

「仲良いねぇ。こうしてみると夫婦みたいじゃないか」

「婚儀はいつだい?」

「子どもは早いほうがいいぞ」

「やあ、赤くなっちゃって。ウブだねロスタム」

 そのたびにロスタムは顔を真っ赤に染めて、何も言わず早足でその場を去って行った。

 おかげで、町の様子をのんびり見れなかった。そのことを文句言うつもりはない。

(いつでも見れるし……、真っ赤なロスタムも面白いし)

 なんて、考えてると彼は露とも思ってないんだろうなぁ。

 町から少し離れたところに出た。そこではだんだん秋色に移り変わっていく木々と、主張の無い小さな花々がひっそりと咲いている。

「風やっぱ寒いね」

「秋になったからな」

 だけど繋がれた手だけが温かい。

 カオルは小さく笑った

「なんだよ」

「いや」

「……」

 またも不満げにこちらを睨む度量の小さい恋人に、カオルは苦笑いを浮かべおでこをぶつけた。

「一気に伸びたね。背」

「おう。気合だな」

 そんな気合で身長が急激に伸びたら、どんな奇跡だ! と言いたい。

 しかし、それほど伸びた。一年と半年前は拳一個分の差はあったはずだ。だが今は同じぐらいだ。

(現代でも私結構背が高いほうだったんだけどな)

 古代人の気合ってすごいな。

 っというか、まぁ、ロスタムまだまだ成長期だしな。

「ねえねえ」

 カオルは適当に座り込みながらロスタムを見上げた。

「私のどこが気に入ったわけ? 川で沈んでたんでしょ?」

 ふつう水死体って思わなかったの? 私ならそう思って自分で飛び込むより、他の人呼ぶけどな。

 ロスタムはきょとんっとしていたが、あぁ、と言いながら同じように座った。

「なんとなく、生きてるって分かったし。今助けなきゃ死ぬっていう勘もあった」

「へえ」

 でも出会った当初すぐ私は目が覚めたらしいけど。どうなんだろうね、その勘は

「お前今『当てにならない勘だな』って思ったろう。思ったなこの野郎」

 頭を掴まれわしゃわしゃと乱された。

 何故バレタし。

「まああれだ! 俺も最初『なんだあれ?』ってノリで見ただけだしな……それに、川に最初っから沈んでたわけじゃねーし」

「え?」 

 それは初耳なんですけど。

「お前、最初川の浅瀬のところで立ってたんだよ」

 その時の凛々しい顔つきのカオルがこちらを見て、一瞬だけ微笑んだ。

 水に濡れ、太陽の光で輝くその姿は、まさしく美の女神イシュタルのようだった。

 とはさすがにいえず、ロスタムは黙る。

「えぇ~」

 カオルの低い声。

「なんか嫌だなそれ。怖くない?」

「言っとくけどそれお前だぞ」

 記憶がないらしい。

 カオルのあんな光景を見ていなきゃ、俺だってイナンナの存在も、神の存在も信じなかっただろう。

 けど、あやふやなものはある。

「お前が居た時、川の水ほんっと少なかったんだよな。めったにないんだぜ川の水が低い時って」

「とか言ってるけど、去年の夏季わりと多かったよね」

 鼻を掴まれた。

 本当のことを言っただけなのに。

「なあ、カオル」

 肩にもたれかかるロスタム。

 なんだか疲れているようにも見えるのは何故だろう。

「俺さ、お前が好きなんだ」

「知ってるよ」

「ハニシュのやろーは『初恋に恋して憧れてるだけなんだよ』って馬鹿にしてくるけど、俺は違うと思うんだ」

「っていうか、ハニシュのやろーは恋してたことすら気づいてなかった鈍感君だよ。いつもの如く焼きもちと嫉妬でいらないこと言って構ってほしいだけなんだよ」

「鈍感一号に言われるならそうだろうな」

(一号……?)

 なんだその不名誉な

 風が急に強く吹き、カオルのヴェールを飛ばした。

「あ」

 カオルが手を伸ばすと、目の前に腕が伸びたのが見えた。その手にはしっかりカオルのヴェールがある。

「ほら」

「ありがと」

 ちゃんと頭に付け直してくれる。なんということでしょう。今は紳士です。

「……お前ってさ、俺より年上じゃんか」

「何?」

 今更気にすること?

 ロスタムは嫌そうにこちらを見た。

「やっぱ、前に誰かと付き合ってたりとか……あるのか。俺が初恋じゃないのか?」

 だから、お前は乙女か。

「ち……や、まあ。どうだろうねー」

「いいよ、そういう気の使いまわし。つうかその態度で分かったし」

 嘘はつけない性質なもので。

 急に真顔になったと思ったら抱きしめられた。

「!」

「いいか。絶対俺から離れるな」

 相変わらずの俺様で、恋に乙女で、まっすぐな男だ。

 そんな男だからこそ、逆に惹かれたのだろう。

 カオルは小さく笑って抱き返した。

「!」

 答えの代わりに愛おしい人にキスを

「……」

 誓いの口付を貴方に

 何を捨てても、何を犠牲に払っても、私は貴方と共に……

ロスタムはオトメンなのかい?

どうやってもカオルが男前になってしまう……乙女にならないッ(._.;)

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