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魔血吸の在り方  作者: スクロー
黄昏の出会いと結束の章
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岩の在り方

目を覚ますと、辺りは既に暗くなっていた


風が吹く


森全体がザワザワと騒ぎだす


しばらくしてまた静かになり、何かの動物の鳴声が聞こえる


僕はまた、瞼を閉じる



初めてこの世界に来て、初めて意識的に野宿した日を思い出す


あの時は、死ぬ事がただただ恐ろしかった


その恐ろしさの余り、気が狂いそうな程だった


しかし今は、それに安らぎを感じる自分がいる


あの時と何が違うのだろうか


あの時の僕と、何が変わったのだろうか


僕は、どうなってしまったのだろうか


今でもやはり、死は恐ろしい


死にたいなんて、少しも思わない


けれどもこの先、いいことなんてあるのだろうか


僕はやっぱり魔物の様な体を持っていて


たとえ意識は人間でも、それは他の人には伝わらない


だからきっと、僕は一人ぼっちなのだろう


遠征部隊の皆も、きっと僕の事なんて、・・・


いや、それは違うな


僕が皆を信用してないだけなんだ


皆が僕を信じてくれる事を、僕自信が信じられなくなっているんだ


だからこんな風に考えてしまうんだ


僕は、駄目な奴だな





生きるってなんなんだろう


僕はずっと生きてきた


それは、息を吸って、物を食べて、寝て


ただそれだけの事なのだろうか


僕は確かに生きている


けど、本当に生きてるって言えるんだろうか


わからない


でも、僕は生きなくちゃ


父さんのために


あの邪竜を倒すために


僕自身のために


でも、それは、誰かを犠牲にしてでも


例えば、誰かを見殺しにしてでも


するべき事なのだろうか


わからない・・・


生きるということは、誰かを犠牲にするということ、なのか?


違う、それは間違っている


ならば誰も、他人が生きることを望まない筈だ


でも、それはその他人を犠牲にするために、自らの糧を得るために他人が生きる事を望んでいる・・・?


違う!そんな事はない!!少なくとも、父さんはそんな事を望む人じゃない!!




目を開ける


昼からずっとここにいるが、一向に襲われる気配がない


もはや肉としても嫌われたのだろうか


ああ、そうだった、僕の体には魔物の血が流れていてもおかしくないんだ


なんてったって、僕がそれを啜っているのだから


そんな体を、たとえ畜生だって食べたがるものか


にしても、少し不自然な気がするけど、


どうでもいいか・・



僕は立ち上がり、周りを見渡す


少し気分が落ち着いた


今は横になりたい気分だ


岩に手をついて立ち上がる

岩は結構な大きさで、森の中にあるのは不自然に感じる

でも僕は別に森に詳しい訳ではないので、それが普通なのかもしれない

興味が沸いた僕は、岩の周りを一巡りしてみる


大きいとは思っていたけど、思った以上だった


僕が背を預けた場所からぐるりとまわってみると、6分ぐらいかかった

大岩という表現でも小さく感じる

しかしその割に高さはないみたいで、僕の身長のせいぜい2倍ぐらいだ

つまり平べったい形をしている様わけだ

そしてその時、岩の割れ目を見つけた

人が一人入るのに十分な大きさの割れ目だった

僕はその割れ目の場所に戻ってきて、入ってみる

中は少し開けていて、横になるには丁度よさそうだ

もしかしたら何かの動物の巣だったのかもしれない

地面がふわふわしている

しかし、獣臭さや見た目、触り心地からして結構な時間が経っている様で、これなら使わせてもらってもいいだろう


僕はそこに横になり、また目を閉じた





(人間・・・かな?)


(寝てるみたいだな)


(ど、どうしよう・・)


(でも、まあ、放っておいても問題ないかな?)


うっすらとした意識の中、声の様な物が聞こえる


(初めてみたけど、本当にこういう体なんだ)


(う~ん、悪い人じゃなかったら友達になれるかな?)


なんだか五月蝿い、なんだこれ、友達・・・?


僕の意識が目覚め始める


(あ、こ、この人起きるみたいだ)


(ど、どうしよう!とりあえず、隠れよう!)




目が覚めた僕は、上半身を起こして、周りを見渡す


外が明るくなっている

どうやら僕は相当寝ていたみたいだ


あれ、目を覚ます前に、何か気になる事があったはずだけど・・・


変な夢でもみたんだろうか


ん?何か地面に落ちてる


・・・つぼみ、だろうか?


いや、植物の芽かもしれない


だって地面に直接生えてるし


しかしこんな岩の隙間で、成長できるのだろうか


見た所、緑色だから、日光が必要なのだと思うけど・・・


いや、ここは異世界だ、何が起きてもおかしくない


とりあえず・・・


摘んでみよう



それが、僕と小さな友達との出会いだった

う~ん、風呂敷を広げすぎてる気がする

いやでも、こういうのって定番っていうか、いると思うんですよね・・・



次回予告

~摘んだ芽は、人を操る力を持つ魔薬の芽だった


「力が欲しいか?誰もを従える力が!」


僕はそれを使い、世界に革命を起こす


もう、誰にも僕をいらないなんて思わせない!~


嘘ですb

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