遺書の在り方
予定より進みませんでしたので、まだ大丈夫な話です
遂に国までたどり着いた
しかしその城壁の向こうには栄光はなく、あったとしても、偽りの安寧だけが待ちわびている
この街はまるで希望のないパンドラの箱の様だった
「お~し!!いいぞ!ついてこい!!」
異様な雰囲気だった
ある筈の無いことが起きた、街の人々は皆そういう顔だった
それはそうか、これまで殆ど全滅だった遠征部隊が殆ど無事で帰ってきたのだから
そう、二人を除いて
しかもそれが、遠征が成功した訳ではないというのだから
やはり例外的な状況だったみたいで、対応が追いつかないみたいだ
とりあえず僕たちはそれぞれの部屋に待機させられた
また次の日も、待機を命じられた
対応が後手後手に回っているようだ
さらに翌日、訓練場に行くと皆が集まっていた
これから何かを行うみたいだ
話を聞くと、亡くなった人を送る、葬式の様な事をやるらしい
何をしたらいいのか、何をしてはいけないのか
僕にはさっぱりわからないので聞いてみたら
「別に何もしなくていいでやんすよ、変な事しなければ大丈夫でやんす」
という事だった
皆についていくと、教会の様な場所にたどり着いた
ステンドグラスと鐘がある、所謂教会だ
ただし基本的に黒く、結婚式には向かないだろう
そういえばこの世界にも宗教はあるのだろうか
だが、今はその事を聞くべき時ではない
皆がそこに入り、特に決めごともない様でバラバラに椅子の前に立つ
よく見ると、知らない人も数人いる
偶にこちらを睨みつける人もいるが、理由はわからない
しばらくして、小奇麗な人が壇上に上がっていった
そしてなにやら儀式の様な物を行う
何かが浮かび上がり消えていく
どうやら魔法で何かをしている様だ
そうしてしばらくして、その人がしゃべりだした
「今回は遠征部隊の隊長である、ゴウ・ホーク=ライラ氏と、偉大な魔術師であるギラ・レイフォス・チョウタイ氏の死を憂い、その魂を安らかに天に送る為の式である」
やはりあの人は神父さんのような役目の人みたいだ
「しかし、」
ん?神父さんの様子が変だ
何か葛藤している様にも見える
「しかし!」
どうやら吹っ切れた様だ
何を言うのだろう
「前回の遠征部隊に比べ、これだけの人が生き残ってくれた!!」
さっきまでの真面目な顔が嘘の様だ
泣きながら笑っている
「私はとても嬉しく思う!!二人は確かに残念だったが、君たちは生きて帰ってきた!!これは素晴らしい事だ!」
悲しんでいるんだか喜んでいるんだかわからない顔のまま話しつづける
「君たちが生きて帰ってこれた二人の勇姿は聞いた!!今は静かに祈りましょう!!それでは・・・黙祷!」
その言葉と同時に皆がそれぞれに格好をとる
ある人は武器を心臓の位置に抱え、ある人は膝をついて頭を垂れる
ある人は耳を塞ぎ、またある人は何もしない
よくわからなかったが、それでも空気は真剣だった
きっとこれがそれぞれの黙祷の正しい形なのだろう
僕は合掌して目を閉じ、静かに祈った
辺りが静寂に包まれる
誰だって死にたくはない
だったらゴウ隊長も、ラギさんも死にたくなかったのだろう
それでも命を賭して行動したのは、きっと
黙祷が終わり、誰からでもなく動き出す
グランさんが前に出る
「今回、俺の独断で撤退を決めた、お前たちはそれに従っただけだ、ただ!!遠征部隊はまだ終わっちゃいねぇ!!あいつを倒す術を見つけて必ずまた遠征を行う!!!」
グランさんの声が響き渡る
「わかっていると思うが絶対に楽な道じゃねぇ、俺にも検討がつかねぇからな、だから辞めたい奴は今からいつでも受け付ける!!それでも俺についていきたい奴は残れ!!以上だ」
そういってグランさんは壇の上から降りた
そして今度は知らない人が壇上に上がる
「私どもはギラ先生に教えを受けた物たちです」
ギラさんは教師をしていたのか・・?
それなりに歳を取った人たちが一塊になっている場所があるのだが、おそらくそれが全てギラさんの教え子なのだろう
所々涙を流している人がいる
「ギラ先生は生前、遺書を残しています」
そう言ってその人が遺書を取り出した
そして読み上げる
「
これを読んでいると言うことは、ワシはもう死んでこの世にいないのだろう
最後だと思うので、ここにワシの人生を記しておく
ワシの人生は、魔物に追われるような人生だった
生まれてすぐに魔物の群れに襲われ、村を後にした両親は、そこで深い傷を負った
母はワシを生んで弱っていたのですぐに死んだそうだ
父は生き残り、魔物の討伐を仕事にしていたのじゃが、ワシが15の夜、魔物に敗れ死んだ
その後学院で勉強し、魔術を志し、妻と出会って子をもうけた
3人いた子は1人だけ病気で死んでしまったが、2人は無事成人を迎えた
娘は遠征に参加して死んだ
息子はライドに移り住み、そこで妻を娶ったが魔物に襲撃されて死んだ
妻は娘に会いに行くといい、病にかかって死んだ
ワシにはもう何もない
よってワシも家族の元に逝く事にする
その置き土産として遠征に参加することにした
後の人の人生が、魔物に囚われる事がないと祈りたい
だからワシを哀れんでくれるな
それが、ワシの最後のお願いじゃ
それでは、旅立つとしよう
それではのう
ギラ・レイフォス・チョウタイ
」
言葉がでない、壮絶な人生だ
「この遺書には先生の死を哀れむなと書かれている、よって私たちはあなたたちを恨まない」
ラギさんと隊長だけ死んで、僕たちだけが生き残った事に対する恨みか・・
「だからどうか・・!どうか仇をとってくれ・・!!頼む!それだけだ!」
そう言って、その人は壇上から降りた
僕は心にある誓いをまたさらに強くした
絶対に僕が仇をとる、そう誓った
次に綺麗な女性が壇上に上がった
いったい誰なのだろう?
「見覚えのない方もいらっしゃると思いますが、私はゴウの婚約者です」
ゴウ隊長には婚約者がいたんだ、知らなかった
「というのも、私が勝手にそう思っているだけかもしれませんが」
・・・なんだろう、少しほんわかした雰囲気の人だ
背は高くないので隊長と並ぶとさぞ身長差があったことだろう
黒いドレスを来て、目はタレ目
口元は薄く笑っているが、その目元は少し赤く腫れていて、泣いた跡だというのがわかる
「私も遺書を預かったので、ここで読ませていただきます」
そういって、女性が取り出したのはまるで果し状のような大きさの紙だ
それを少し手間取りながら開く
息を一つ吸い、読み始める
「
健闘を祈る!!以上
ゴウ・ホーク=ライラ
」
・・・全く、ゴウ隊長らしい遺書だ
遺書に健闘を祈ると書いた人は、ゴウ隊長ぐらいなものだろう
ほんとうに、隊長らしい、遺書だ
「まったく、あの人らしい遺書だわ・・」
遺書を読んだ女性が、微笑みながら言う
しかし、僕はその笑顔にぎこちなさがあったことに気がつかなかった
そうして式は終わり、ある者は残り、ある者は帰る
僕は残った
別に意味があったわけじゃない
ただ、すぐに帰る気にはならなかっただけだ
僕は椅子に腰掛け、何も考えずに前を向いている
色々な事が浮かぶ
これからの事、これまでの事、そして・・・
死んで行った人の事
そうやって、虚空を眺めていた
「あら?あなたは・・?」
ゴウさんの恋人に、話しかけられるまでは
もし待ってくださった方がいらっしゃったならすみません、ようやく再開です(汗
いや、思った以上に予定が立て込みまして、休む暇もないといいますか・・・
少しだけ生活が安定したので再開しますが、更新ペースはとても遅くなると思います
近々引っ越す事にもなりそうだし、週一で更新できたらいいな~程度です、すみません(滝汗




