夜の見張りの在り方
食事を終えて、只今絶賛見張り中である
「フンッ、フンッ!」
この世界の夜空は、人工の明かりが殆どないのでとても綺麗だ
しかし、星の数が余りに多すぎて、若干気圧されてしまう
「ハッ、ホッ!」
元の世界では、それこそ秘境に行かなければ拝めない光景だ
でも、星座は見つけられなかった
やはり、元の世界の天体とは違うのだろうか
まあ単純に、僕が星座の位置を覚えてなかっただけかもしれないけど
「チェスト~~ッ!!」
・・・あの人は、一体何をしているのだろう?
「ふうっ、いい汗をかいた」
レフィさんがトレーニングを終えて戻ってきた
そう、今日の見張りはレフィさんと一緒なのだ
やはり新人が一人で見張りなどという、無謀な自体は避けたいのだろう
「どうぞ」
そういって、僕は水を渡す
「ああ、ありがとう」
それを一息で飲み干して、レフィさんは僕の隣に腰掛けた
「そのトレーニングは、毎日行っているのですか?」
僕が問いかけた
「そうだな、基本的には毎日だ、やはり日頃の鍛錬が大事だからな」
そうなのか
だからこそ、あれほどの剣技を身につけられたのだな
「そういえば、お前は一体どういった鍛錬をしているのだ?」
レフィさんが、僕に問う
う、鍛錬なんてしたことない
「僕はあまり鍛錬をしたことがないんです、しいて言うなら実戦が、そのまま鍛錬ともいえなくないかなってとこです」
そういえば僕はこの怪力に頼りきりで、碌に鍛えていなかったな
しかし僕はどうすれば、鍛える事ができるのだろう
筋力は、今の状態でも制御できないのに・・・
「そうか!そういった方法もあるのだな!うむ、実戦でこそ、磨かれる実力といったところか」
そんな大層なものじゃ無いのに・・・
「でもレフィさんも凄いですよね、実戦で魔法を使っている人って、殆どいないですよ」
そうなのである、実線で魔法を使う人を、僕は余り見たことがない
あんなに便利そうなのに、何故使わないのだろう?
「うむ、魔法は才能の問題もあるから何ともいえないのだが、実線で魔法を使うのは、実はいいことじゃないんだ」
そんな馬鹿な、殆ど一撃必殺で、口さえ動けば攻撃できるのに
「知っていると思うが、魔法は意思の力を使う、だから使った後は攻撃の意思が薄れてしまうんだ」
意思を使う、魔法を使った事のない僕にとっては未知の感覚だ
「だからもし仕留めきれず、反撃を受ければ、それは一気にピンチに変わる」
なるほど、一撃で仕留めれば、これ以上ない攻撃だが、それ相応のリスクもあるのか
「まあもっとも、ラギ殿程の才能があれば、全く問題ないのだがな」
ラギ殿って、あのヨボヨボのお爺ちゃんの事か
「それは、どうしてですか?」
「彼ほどの腕になると、威力を調整して、完全に意思を使い切らずに敵を倒せるからだ」
力の調整なんて事もできるのか
「まあ彼が全力で魔法を使って、仕留められない魔物などいないと思うがな」
う~ん、ラギさんってすごい魔法使いなんだな
「それにしてもその力、どうやって手に入れたんだ?いくら実戦を積んだといえど、それほどの腕力は普通、手に入らないだろ?」
ですよね~、僕はどうしてこんな手足を手に入れられたんだろう?
「実は、僕にもわからないんです、気付いたら怪力になっていて・・・」
「それは、・・なんとも難儀な話だな・・・」
あれ?羨ましがると思ったんだけど、違ったな
「何、それをいいことに使い続けていれば、きっと報われるさ!」
レフィさんはそう言って、森の方に視線を向けた
僕が報われるというのは、どういった状態なのだろうか
人々に恐れられなくなる?
安心して、生きていけるようになる?
はたまた、英雄になって、皆に讃えられる?
・・・どれも違う気がするな
もちろん恐れられるのは嫌だし、安定した生活を送りたい、出来れば賞賛されたいけど、果たして、僕が望むものって、一体なんなのだろう・・・?
「そうだミコト、見張りの鉄則を教えてやる!」
「見張りの鉄則、ですか?」
一体なんなんだろう?
「それはな・・・」
「それは・・・?」
ゴクリ・・
「相方が寝たら起こすってことだ!」
「・・・」
すごく、当たり前の事な気がする
「それって、普通じゃないんですか?」
「いやいやいや、それが一番大事なんだよ」
それはそうだけど・・・
「例えば私が眠ってしまったとして、お前が起こす立場になったとする」
ふむふむ
「ああ、先輩寝ちゃったな、けど、疲れているみたいだから起こさないでおこう」
ああ、確かにあるかもしれない
「これが一番危険だ!何故見張りが二人で行われているか知っているか?」
そうか、片方が寝てる時に起こして、絶対に一人は起きている状態を保つためか
「かく言う私も何度同じ間違えを繰り返したか・・・!」
どうやらレフィさんには経験があるみたいだ
というか、いつ見張りの経験なんて積んだんだ?
「どうやって見張りの経験を積んだんですか?もしかして遠征自体、2回目なんですか?」
聞いてみた
「いや、私は遠征は初めてだ、ただ、イーア国内に学校があってな、その関係で・・・」
そういやって、話ながら、夜が更けていった
満点の星空の下、焚き火にあたりながらの見張りは決して、悪い物ではなかった
私の祖父母の家が、結構な田舎なのですが
その家に泊まる際に夜空を見上げて、余りの星の多さに恐怖した事があります
いつもと違う空というのが、私にはとても恐ろしく映ったのでしょうね
しかし、夜空というのは素晴らしいものです
皆さんも是非、何も考えずにボケっと夜空を見上げてみてください
少し、気持ちが楽になりますよ