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Kiss of Monster 01  作者: 奏路野仁
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皆を呼びに行ったのだが小室絢は僕を部屋に入れなかった。

「乙女な本性がバレるのイヤなの?」

「乙女じゃねぇっ。」

南室綴が教えてくれたが小室絢は必死に否定した。

「で、父ちゃん何だって。」

うん。自由に見学して行きなさいって。空いている時間なら監督者さえいれば使っていいとも言ってくれた。

それから橘さんにも、もっと道場で身体動かしなさいって。

「うん。」

「見学くらいは問題ないと思っていたけど随分と寛容ね。」

南室綴の指摘に

「まあ姫のお友達だからじゃね?」

完全に何かを誤魔化そうあとしているのが僕にも判った。

えっと、小室さん本人がイヤならそう言って。僕が無理して

「うわああっ。」

部屋の前で頭を抱えて座り込んだ。

何だどうした。


高校生。

両親が「将来の夢」について確認しようとしても何の不思議はない。

一人娘の将来が気にならない親なんていないだろう。

「自分のなりたい者になれ」

と口では言うがやはり道場を継いで欲しい。

小室絢にはまだ「将来」が見えていない。

小さい女の子がお菓子作り好きでも、将来それを商売にしようと決意するのはどれほどいるだろう。

同様に、空手や他の武術も好きで子供の相手も楽しいからとそれだけで道場を継げるのかと。

「道場を継ぐ」に何の蟠りはない。

しかし「小室:を継ぐ」となると話は異なる。

婿選びを進めようとする両親。

塾生の中からなのかそれとも他所の誰かなのかは判らないが

「恋くらいしたいわよねぇ。」

「悪いかっ。」

乙女小室絢。

「条件でも出されたの?自分より強い人とか。」

そんな人いるのか。と言ったら殴られるだろうな。

「条件なんてないよ。私だって別に強い人がどうとか無い。」

「あっ。」

南室綴は正確に核心を突いた。

「キズナの事彼氏って言ったんでしよ。」

「いっっ。」

ああそれでか。

「それでって、オマエ何言われたんだよっ。」

小室さんと付き合っているのか的な事を聞かれました。

「それで?それで?」

どうして南室綴がこんなにワクワクしているのか判らない。

皆と一緒にファミレスくらいは行きますって。

「あら。じゃあ絢ちゃんの片思いじゃない。」

「うわああっ。」

頭を抱えてしゃがみこんだ。

橘結は笑いを堪えているのか顔を反らして震えている。

あれ?ごめんなさい。ダメな答え方でしたか?

「いや、ダメじゃない。ダメなのはオレだから。」

「キズナは何も悪くないよ。」

そう言って立ち上がるのだが

「うわああっ。」

ともう一度頭を抱えた。

ええ?

「照れてるだけだから気にしなくていいのよ。」

そうなのか?

あの、小室さん?ええっともしもし?

僕に出来ることあったら言ってください。協力しますから。

「・・・ホントか?」

勿論です。ただでさえ迷惑かけて

自分の修練そっちのけで僕の修行に付き合ってもらって。

何より命の恩人と言っても差し支えない事まで。

「じゃあさ」

「オレと付き合ってよ。」

はい?

「だっ大胆ねいきなり告白なんて。」

「ちがっ。いや違うから。違わなくないけど違うからっ。」

「私達、席外そうか?」

「姫まで何言ってんだよっ。違うから。ただのフリだよ。彼氏のフリっ。」

簡単に言うと

小室絢に本当に好きな人が出来て

彼氏ができて、恋人ができるその日までの「フリ」。

小室絢の両親の前では「恋人のように」振る舞え。と。

「恋人じゃなくていい。彼氏でいい。」

「トモダチ以上恋人未満的なのでいいからっ。」

「本当に乙女みたいな事言って。」

「うるさいっ。それで、いいかな姫。」

「ええ?どうして私に聞くのよ。」

「だって姫はキズナの」

「うわああーーっ。イイわよ。好きにしてイイわよっ。」

こんな事はまで小室家は橘家に確認するとか大変だな。

まあ普段日頃からどうこうは無くて

小室絢の両親さえそう思い込んでいれば問題ない。

と、簡単に考えていたのだが、後にこれでまた少々面倒な事が起きる。

帰り際

「何だその、イロイロとありがとな。」

こちらこそ。少しでもお礼ができれば。

「でも実際迷惑とかじゃないか?」

迷惑って?

「いやほら。フリって言ってもオレみたいな奴とさ。」

光栄ですよ。

「でもオレ姫と違ってこんなんだし。」

小室さんて僕の事嫌いでしたよね。

「なんだよ急に。」

出会った頃って大嫌いだったでしょ?

「嫌いって言うか。あれはあれだぞ。あの時は事情があって。」

僕は小室絢の言い訳を遮って答えた。

あの時ね、小室さんの事、素敵な人だなって思ったんですよ。

「えっ髪の毛とか掴んだのに?」

あれはまあ驚いたけど。でもすぐに皆の関係性みたいのが判って

小室さんて、橘さんの王子様なんだろうなって。

あいや男の人みたいって意味じゃないですよ。

役割と言うよりその姿勢に素直に素敵な人だと思った。

内容が何だろうと小室さんが僕に何かを頼んでくれたのって

やっと僕をトモダチとして認められたのかなって。

ほらあのとき、オマエは姫とはトモダチでもオレとはトモダチじゃない的な事言われていたから。

「何だよ。そんな事気にしていたのかよ。」

「オレは、私はもうとっくにキズナとトモダチのつもりでいたぞ。」

ありがとうございます。

だから何かあったらいつでも呼んでください。頑張って恋人になりますから。

「ふりな。フリ。」

判ってますよ。

いつか小室さんにも素敵な王子様が現れますから。それまで

「なっ。バカだろオマエ。ばーかばーか。」

小室絢はそう言いながらいつものように僕の頭を掻き乱す。

子供か。

「恋人気分でイチャイチャするのはワタシ達が帰ってからにして。」

「だから恋人じゃねぇっただのトモダチだっ。」

「トモダチ以上恋人未満でしょ。」

「やめろっそれやめろっ。」

「やめろって。自分で言ったくせに。」


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