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Kiss of Monster 01  作者: 奏路野仁
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カーテンコールに応える演者達は輝いていた。

栄椿もその列に呼ばれるが申し訳なさそうに端で照れ笑いを浮かべる。

舞台脇に引き上げる最中も拍手が鳴っている。

写真を撮っていると

栄椿が手を揚げハイタッチを求めた。殆ど無意識にそれに答えた。

橘結も満面の笑顔で手を合わせ、

小室絢は開いた手を握りしめ、僕の掌にその拳を叩き付けた。

「これでチャラにしてやる。」

と笑い僕の頭をグシャグシャに掻き乱してから橘結と肩を組み引き上げた。

その2人を取り囲むようにクラスメイト達が集まり

言葉にならない感動を何やら喚きあっている。

僕は少し離れて、それを写真に収めた。

「本命誰なの?」

舞台のセットを片付けていると背後から何やら誰かに睨まれているような。

薄暗い舞台脇で他の実行委員と書割を運ぶ最中に背後から声を掛けられても困る。

「ちょっと後で話を聞かせない。」

何?誰?

やがて全てのイベントが終了し各教室の出店も閉店となる。

アチコチから歓声が挙がる。

互いを労い充実感を共有している。

文化祭実行委員だけは片付けに追われ慌ただしく動き回っていた。

片付けを終えた教室はそれぞれ随時解散となり、おそらく打ち上げが行われるのだろう。

見回りを終え会議室に戻った委員長は

「皆さん。本当にお疲れ様でした。各クラスの後片付けは無事に終わりました。」

「私達実行委員はもう少し業務が残っている者もいますがひとまずここで締めましょう。」

打ち上げに参加したい者もいるだろうとの配慮。

「皆様のお蔭でとても楽しい文化祭になりました。本当にありがとうございました。」

彼女が深々と頭を下げると誰からともなく拍手が起こる。

数名の女子生徒が泣きながら委員長に抱き付いて、それをあやしてながら

「それでは本日この場をもって、文化祭実行委員は解散いたします。」

「お疲れさまでした。」

彼女の挨拶に一同

「お疲れ様でしたー」と答え、もう一度拍手に包まれた。

委員長は校長やら教頭やらに報告に行くからと会議室を出る。

他の委員達も帰り支度をして各クラスの打ち上げに合流するのだろう。

会議室には僕と、南室綴。

南室綴に改めてお疲れ様でしたと伝えると

「何言っているの?お祭りはこれからよ。」

と書類の束を目の前に置いた。

各クラスの売上と経費、予算から残金への合わせ。

実行委員での同上。

請求書と納品書を合わせて支払いの手続き。領収書と帳簿の付け合せ

加えと関係各所へのお礼状作成と配布手続き。

「何のためにキズナを実行委員にしたと思っているのよ。」

頑張ります。

「それでその。」

何です?

「いつからワタシはキズナと付き合っているの?」

はい?

「浮気ってどーゆー事?」

ちょっと何を言っているのか判らない。


文化祭が終わると本格的に小室絢との修行(?)が再開された。

ただ本格的にどうこうするには

校庭やら神社の境内では限界がある。

防具がないから間違って小室絢の攻撃を受けたらどうなる事やら

「避けろよ。お前チッコイしショボイんだから正面から受けるな。避けろ。」

そんな簡単に。

「簡単だよ。姫。」

「うえっ?」

小室絢は橘結に蹴りを放つ。

橘結は突然の襲撃にも動揺する事なく反転するようにその長い足を躱す。

その動きはそのまま小室絢の側面に立ち腕を取りつつ軸足を刈ろうとする。

小室絢はバックステップ。

「あぶねっ。何するんだよっ。」

「こっちの台詞よっ。」

改めて言葉でその動きを説明するのは容易いのだが

その時は何がどうなってそうなったのか殆ど判らなかった。

「体捌きの基本からやりましょうよ。」

僕が理解していないのを察して南室綴が進言する。

小室絢が「型通り」の動きをあおて避けていたのは

僕が手っ取り早く強くなりたいからと願ったから。

「コイツに型を教えてしまうと、頭でそれを考えて身体で覚えようとしない。」

だから反射速度を上げつつ状況に対応する方法を実戦的に身体に叩き込もう。と。

「道場使わせてもらえないの?間借りするとかさせてもらえないかな。」

橘結は防具の件も含めて小室絢に確認する。

「それにこれから寒くなるのよね。大体ただ見ているだけって暇なのよ。」

南室綴が文句を付け足した。

小室絢はそれでも渋っている。

入門していない者に道場貸すとか父親が許さないだろう。

程度に僕は思っていたのだが

南室綴は「小室絢が何かを隠している」と感づいた。

「行くだけ行ってみましょう。」

小室絢の静止を無視して小室道場へと向かった。


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