塩2
ウェックスに連れられこの街のトップ、ロビンソン政務官とか言う奴の館に来た。
つか館でけー、個人の家って言うか役所的な場所なのかもな人の出入り多いし。
ヤバイなんか緊張してきた、偉い人に会う感が俺を押しつぶそうとしている。
思い出せ!あの日の舞台を!「ワシの朝ご飯を食べたのは誰じゃ!!」と言い切った自分を!
ウェックスが館内の最奥の部屋へ俺を連れて行く、ノックの音が遠い世界の音に聞こえる。
「ウェックス商会のウェックスですヒナコデスさんをお連れしました」
「入りたまえ」
うわー、入りたくねー!!なんだろ俺偉い人アレルギーだコレ。
いきなりハハーって土下座しそう。
俺の動揺を無視してドアを開けるウェックス、少しは気遣えよ。
「ヒナコデスさん、こちらがこの街の政務官であるロビンソン様、
そしてマガナ商会のマガナ会長だ。挨拶を」
うわー、挨拶しないとなの!?
「日菜子です」
む!?ロビンソン政務官とマガナ会長変な顔して俺見たぞ!?なんで!?
うぉしまった!!俺ヒナコデスだった!
これ逆の立場だと、いきなり目の前のおっさん達が「ロビンソン」「マガナ」って言って黙る感じだ、
それアホだよ!!
自分の名前だけ叫んで登場なんてどんだけアホなのかと!
幼児番組のぬいぐるみか、石から蘇った化け物位だよ許されるのは!!
って待て待て!今はそのアホ俺の事だ!!落ち着いて取り戻せ!!
「フランケンシュタイナーです...」
おけ!これで溜めが長い“ヒナコデス......フランケンシュタイナーです”で誤魔化せた!!はず?
「う、うむ私がロビンソンだ」
「マガナです、お見知り置きを」
「早速だがヒナコデス君、私の頼みを聞いて欲しい」
乗り切ったー!!アホと思われないで済んだー!!
えと、なんだろなんか言ってるよこの人。ロビンソンだっけ。
「君の出した塩を食してみた、え〜と名前はなんと言ったかな?」
おお塩ね!
「博多で作られたメキシコの海水で作られた塩・博多の塩でございます」
よし上手く言えた。
「長いな」
あー確かに長いね。
「名前はメキシコの塩でも構いません」
「何?メヒコ?」
あーメヒコね、メヒコで良いよ別に。
「メヒコの塩でございます」
「そうか、ではそのメヒコの塩をこの街の特産品として売り出す事は可能か?私の頼みとはそれなのだ」
うぇーイヤだよめんどくさい、テキトー理由付けて断ろう。
「今現在王国の塩は海と面したゼブル領に独占されておってな、ゼブル領の顔色を伺いながら商人達はやりくりしておるのだよ、私はその状況を打破したいと考えているのだよ」
うへー、なんか難しい話だけどゼブル領がムカつくのだけわかったや、
うーんめんどいけどゼブル領がざまぁってなるの見たいなー。
「一つだけ条件があります、その条件を守って頂けるのであれば、
メヒコの塩は可能な限りご用意致しましょう」
「おお!やってくれるか!してその条件とは?」
「商人達がメヒコの塩を受け渡す際には必ず『メ♩ヒ♩コ♩の♩塩!』と歌って欲しいのです」
「メ♩ヒ♩コ♩の♩塩♩?」
ウェックスが割り込んで来た、イラつくなーコイツ。
「もっとお腹に力を入れて!」
「メ♩ヒ♩コ♩の♩塩♩」
「もっと感情込めて!!」
「メ♩ヒ♩コ♩の♩塩!」
「いいよーだいぶ良くなって来た、こんな感じで受け渡すのです。ご理解頂けましたか?」
ウェックスで遊んでからロビンソン政務官に説明する。
「行為そのものについては理解した、だがなんの意味があるのだ?」
げーー!!意味なんて無いよー!!ただ取り引きを遠くから見て笑いたかっただけなのに!!
どうしよう!?どうしよう!?
落ち着け俺!俺は口から出まかせ父ちゃんの遺伝子を受け継ぐ女!
「ブランドイメージです!!」
「ブランド??」
「人々は思うでしょう、あの受け渡すメヒコの塩とは何か?と。そして一度味わえば理解するでしょう!
メヒコの塩こそが真の塩であり、受け渡す際に宣言しない塩などゴミであると!
いずれメヒコの塩を国民全てが愛して歌う事と信じてなりません!!
その効果を狙うのがブランドイメージなのです!!!」
どうよこれ!!
「そこまでしなくても普通に売れますよヒナコデスさん」
ウェックス邪魔すんな!!
「何をおっしゃられる!今こそがメヒコの塩大攻勢の時に!
ゼブルの塩を応援する利敵行為とも取られる発言!どうかお控えください!」
ウェックス潰してやった。
「わかった、ヒナコデス君の条件を飲もう。後の実務的な相談はここに居るウェックスとマガナ会長にお任せして、君には食事を用意してある。是非私とディナーを共にして欲しい」
こうして俺はカミルの街の塩大臣になった。あだ名だけの大臣だけど。




