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異世界フランケンシュタイナー  作者: 雪村宗夫
カミルの街
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プロジェクトウェックス4

流通担当のミートンが静かにウェックスに伝えた。

「容器が....足りない...」

生産体制は整った、だが容器となる瓶の供給が生産に追いつかなかったのだ。

この世界で瓶はまだ大量生産に至っておらず、基本的には再利用する貴重品であった。

「このままだと納期に間に合わない..」

実際には納期に間に合わなくとも問題は無かったのだが、作った矢先に出荷され自身の給与へと変わる、

言ってみれば「フィーバー状態」とも言える現状に、ヒナコデス以外の工場内で働いていた全ての人が思った。「このフィーバーを続けたい」と。

苦渋の表情で目を閉じるウェックス、壁を殴るミートン、座り込むミネルバ、悔しげに俯く孤児達、

酒を飲むヒナコデス、「フィーバーは終わった」そう誰もが思った時一人の人物が声を上げる。

「容器なら用意出来るよ」

ヒナコデスだった。

ヒナコデスは酒の飲み過ぎで現状を理解出来ていなかった、ただ「あれー?なんで作業止まったの?」とその程度の軽い気持ちで声を掛けただけであった。

「えとー1番と2番の穴にサボテン落として3番の穴に容器落とすから〜、後はよろしく〜。あ!チーズとワイン追加で」

ヒナコデスの用意した容器、それは「ペットボトル水」だった。

ヒナコデスはフタを開け水を零しながらペットボトルを落とす、使用された事により新たなペットボトルが取り出せるようになる、サボテンと同じだった。

「何という幸運!」ウェックスは自身に幸運の女神が付いている事を感謝した、但しヒナコデスの事では無かった。

(女神様ありがとうござます!ヒナコデスさんを使い切って皆を幸せにしてみせます!)

ウェックス酷い奴であった。

カミルポーションの生産が再開される。

ヒナコデスのペットボトルを利用した事で辺りが水浸しになっているのを見た保管担当のミネルバの一言がウェックス商会を更なる飛躍へと導く。

「これ水で薄めて売れば倍儲かるわよね」

その日からカミルポーションは原液を2倍濃縮、水で薄めた物こそが真の「カミルポーション」となった。

水で薄めても効果の差は素人目にはわからなかったのである。

カミルポーションは領内を超え王国内に行き渡る。

その際にマガナ商会が「自由移動の権利」を行使する事で更なる利益を上げ、カミルの街、カミル冒険者ギルド、ウェックス商会、そしてマガナ商会は空前の好景気に沸いた。


カミルポーションの生産体制を見学に来た冒険者ギルドのギルドマスターであるアレキサンドリアは当時の工場についてこう語る。

「アレは地獄図だった、2階ではヒナコデスが酒池肉林、1階では子供達が汚泥に塗れながら必死で緑の粘液をかき集める。棘が刺さって泣いていた子供も居た、私は直ぐ関係者以外立ち入り禁止にしたよ。あの光景を見たらカミルポーションが飲めなくなるからね」

当時の工場はヒナコデスがペットボトル水を撒き散らす為水浸し、更にサボテンの破片は飛び散り汚泥と化し、人々が見たことの無いカビが発生し、もしカミルポーションがこの様な場所で作られていると知れば、誰も使わなくなるのは明確であった。

ウェックス商会の好景気は続き、孤児達の収入が冒険者達の収入を超える逆転現象も起きた。

もはや第2工場の建設も検討しなければ、そうウェックスが考え始めた頃、

カミルポーションの生産量はある時期より一定数で安定する事となる。

ヒナコデスのストレスが限界に達したのである。

もはやボーナス12ヶ月分でも引き止める事は出来なかった。


ヒナコデスは言った。「これって魔王の城に閉じ込められて魔力吸い取られ続けるヒロインじゃね!?」

言葉の意味を誰も理解出来なかったがヒナコデスが限界である事は皆が理解した。

生産量は見直しされ、保管担当であるミネルバの研究で、限界まで薄める事でヒナコデスの負担を減らした。

1ヶ月後、生産量は維持したままヒナコデスの負担はフィーバー以前と変わらなくなった。

カミルの街の税収は過去最高を記録し「カミルポーション」の名は王国を超え隣国まで知れ渡った。

ウェックス商会の偉業を誰もが褒め称えていた。


数年後、異世界より召喚された勇者が道に投げ捨てられたペットボトルを見て

「ゴミ処理問題を異世界に持ち込むアホが居るとは!」と驚いたのは別の話であり、

ゴミ問題よりも、ペットボトルを食べたモンスターの一部が特殊な進化を遂げ、特異体となる現状の方がこの世界では問題であった。

そう言ったモンスターはペットボトルの生産者から名を取り、

「ヒナコデス・アント」「ヒナコデス・オーク」「ヒナコデス・ゴブリン」「ヒナコデス・ドラゴン」

等と呼ばれる事になる事もやはり別の話である。



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