プロジェクトウェックス
カミルの街の冒険者ギルドのギルドマスター、アレキサンドリアはその日ギルド職員達を集めて言った。
「ポーションの常識を変える」
これまでのポーションは薬草を原材料とし、傷口を塞ぎ痛みを緩和させ体力を回復させる物だった。
だがアレキサンドリアは言った。「完全なる回復をもたらすポーションを作る」と。
誰かが言った「不可能だ」と。
「完全なるポーション」即ち「フルポーション」の生産は王都で最新鋭の施設を持ってしても成功していない。こんな辺境で予算も無しに出来る物か。誰もがそう思った。
一人の男が居た。
ウェックスと言う名の若者は言った。「そのプロジェクト、やらせてもらえませんか?」
ウェックスの父親は薬草調合を生業としていたが常に「フルポーションを目指す事が我が家の目標」と息子であるウェックスに言い続けていた。
ウェックスは薬草調合師としての生き方を選ばなかったが、「父の夢を叶えられるかもしれない」そう思いプロジェクトに名乗りを上げた。
アレキサンドリアはプロジェクトをウェックスに任せる事にした。
「プロジェクトウェックス」プロジェクト名が付けられた。
だがその際にウェックスに告げた一言がウェックスを絶望へと追いやる。
「原材料はヒナコデス・フランケンシュタイナーから受け取れ。
奴と協力してフルポーションを作るのが本プロジェクトだ」
ヒナコデス・フランケンシュタイナー。彼女の異業の数々にギルド職員達は恐々としていた。
その彼女と協力するなんて!
ウェックスはその日、新妻の胸の中で泣いた。
ウェックスの元にアレキサンドリアの命を受けメンバーが集まった。
流通担当のミートン、保管係のミネルバ、皆、ギルド内で揉め事を起こした問題児ばかりだった。
アレキサンドリアから受け取った謎の植物「サボテン」これを原材料にポーションを作る、初めは簡単に成功すると考えていた。
薬草をすり潰し煮込む、この方法でサボテンをポーションにすれば良いと考えていた、しかし。
サボテンは手に刺さった。
「痛い」
誰かが言った。
「これは無理だ」「痛すぎる」
心が.....折れた。
翌日、アドバイザーとしてヒナコデスが現れた。
棘の取り方を指導してくれると思った。
しかしヒナコデスはプロジェクト名が「プロジェクトウェックス」と知ると。
鼻声で歌うだけだった。
歌詞も「その辺のペガサス」やらなんやらで、意味が解らなかった。
毎日遅くまでサボテンと格闘した。
何とか棘を取り除き煮込んだポーションを飲む毎日。
新妻の食事が喉を通らなかった。
そんなある日、ミートンが言った。
「もう棘取るのも煮込むのもウンザリだ!」
ウェックスは閃いた。
「叩き割って中の粘液そのまま瓶に詰めよう!」
発想の転換だった。
保管担当のミネルバが言った。
「日持ちなんてどうでも良いわ!痛いのはもうイヤよ!」
流通担当のミートンが言った。
「もう何でも良いよ!意外と日持ちするよ多分」
後に「カミルポーション」と呼ばれるサボテンポーション誕生の瞬間であった。




