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異世界フランケンシュタイナー  作者: 雪村宗夫
動乱
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ロウジー立つ

その日カミルの街の最高責任者である政務官ロビンソンの執務室に集まっていたのは、

その政務官ロビンソンと、カミルの街で警備隊長を務める軍事面でのトップであるクロエ、

カミルの冒険者ギルドのギルドマスターあるアレキサンドリア、

カミルポーションとメヒコの塩の販売で一気に王国一の商会へと上り詰めたマガナ商会のマガナ氏、

そしてヒナコデスがリーダーを務める赤毛連盟のメンバーであるカシムとマシンレディであった。

彼らは中央の執務机に両肘を突き両手を組み絡ませながら席に座るロビンソンを中心に、両側に用意されたソファーに座り、

互いの表情を伺っていた。

「今日集まってもらったのは他でも無い、例の魔王による宣戦布告についてだ」

ロビンソンが静かに話す始める。

「その宣戦布告に対し、ハルバット領へも援軍要請が来た事は皆も知っていよう。

おそらくハルバット卿は援軍を出すだろうな」

ロビンソンの発言にソファーに座っていたアレキサンドリアの表情に緊張が走る。

平民であるロビンソンがハルバット卿に対して敬語を使用しなかった事に気付いたからである。

「ハルバット領からの援軍も加わり王国軍と魔王軍の戦いが繰り広げられ、

例え勝てたとしても王国は疲弊するだろうな」

既に話の内容を知るクロエ、何が起きても対応できると自負しているカシムは話の内容に動揺は無い。

しかしアレキサンドリアはロビンソンの言葉の一つ一つに動揺してしまう。

アレキサンドリアには相手の力を数値として知るスキルを持っていたが、

目の前にいる二人の冒険者の数値が、今まで見た強者と呼ばれる冒険者と数値の桁が違う事も動揺を増させる一因となっていた。

「ロビンソン政務官は何を言いたいのですかな?」

何かを企んでいるような目をした男、マガナ氏が尋ねる。

「このままの戦いでは五分五分だとして、

もし前王の弟君であられるシールズ・フォン・エルビアの遺児が見つかり、

魔王との戦いに立ち上がって下されば、シールズ・フォン・エルビア派だった者は必ずその者の元へ馳せ参じるとは思いませんかな?」

アレキサンドリアはその一言で理解する、ロビンソンがシールズ派の貴族であった事を、

そして動揺していたのが自分だけだという事実から、この場に居る人間は全てシールズ派に関わり合った者だと言う事を。

「なるほど、ロビンソン政務官のおっしゃる事は解りました。

つまり救国の英雄として魔王を撃退し、その勢いを持って政権をも奪取しようと。

しかしながら!シールズ様のお嬢様がご存命されているとして!

それを望まれてるかで話しはかわりますぞ!?」

「まぁまぁ、落ち着かれて下さい、マガナさん。おっしゃる事はごもっともですがお嬢様逆にそれを望んでいるかもしれないじゃ無いですか、ねぇロウジーさん」

それまで黙っていたカシムの発言で全員の視線は仮面を付けた女性、マシンレディに集まる。


マシンレディことロウジー・フォン・エルビアは自身の半生を思い返していた。

父と母と自身の身分を奪ったゴールズ・フォン・エルビアへの復讐を誓い冒険者となった自分。

努力し続けB級まで上り詰めた自分。そして挫折し復讐を諦め日々を楽しむだけの為に生きた自分。

ヒナコデスと戦い新たな力を手に入れ、諦めていた復讐を思い出した自分。

仮面を被り、再度ヒナコデスに挑戦し真の強者を知った自分。

仮面を被り、ヒナコデスのパーティメンバーとして生きる自分。

ロウジーは思った、真の強者であるヒナコデスを馬鹿にしている「今」が今までで一番好きな瞬間であると。ヒナコデスに「ガガガ」と言うだけで幸せを感じる自分が好きだと。

もし此処で立てば自分は幸せを失う事になるかも知れない、復讐相手は既にこの世に居ない。

自分が立ち上がって何の意味があるのだろうかと。

「ロウジーさん、ヒナコデスさんには揉め事が似合うと思いませんか?」

カシムの言葉に我に帰るロウジー。

「ロウジーさんを旗印に皆が集結した時、あの人には軍師になってもらったら面白そうですよねー」

カシムの軽い一言に執務室の空気が変わる。

アレキサンドリアもヒナコデスが味方ならなんとでもなるか、と気楽になる。

ロウジーは仮面を外し皆に宣言する。

「私がこの国の女王になるべく皆様お力添えをお願いします」

ロウジーの目は力強く輝いていた。

ロビンソンはクロエと目を合わせ頷く。

過去、シールズ派であったマガナ氏は涙を流し喜ぶ。

ただ一人カシムだけが普段と何も変わらない様子だった。

しかしカシムは思い出していた、王都に居た頃に名も知らぬメイドに言われた言葉を。

彼は自身の直感でメイドの言葉は真実だと知る。

「貴方は将来二人の女王に仕える事になるでしょう、そして選択する事になるでしょう」

(二人の女王に仕える所までは辿りつけたな、後は選択か....)

選択が何を意味するものなのか、カシム本人にもこの時にはわかっていなかったのである。


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