表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界フランケンシュタイナー  作者: 雪村宗夫
感謝祭
110/256

感謝祭...

マジかよ...。

正直凹んだ。名前も知らない王様が死んだらしい。

別に見た事無い王様が死んだところで、ぶっちゃけ何とも思わないよ?

だって俺この国の名前すら知らんもん。

つか王国だったんだーって感じ。


ん?...異世界に転移した→結構月日はたった→活躍してない→工場の作業員→国の名前すら知らない。

ヤバイ気がして来た、俺結構ツエー筈なのに!?

もしかして優等生とか主人公補正かかってる奴が俺と同じ立場だったら、

既に王様と謁見してたんじゃねーの??つか王子とラブロマンスとかじゃねーの??

それを何だコレは!!工場勤務な異世界冒険って!!!俺のこめかみが痙攣きてますよ?!

いや!落ち着け!そうじゃないんだ!問題はそこじゃない!!

王様が亡くなったんだ!

どういう事か、すなわち感謝しないよね。

今年の感謝祭は無しだ!

どうなるか、工場は注文キャンセルの嵐だ!!

更に言おう、後継者争いで内戦になるらしい。

お?ポーション馬鹿売れ!戦争特需だ!って思うだろ?塩も売れそうだろ?

戦争特需って、戦地やその付近に売りに行く勇気ある商人が得られる称号だと理解したよ。

戦争で必要物資の値段が高くなるのはヘタレ商人が売りに来なくなるからで、

俺たちはヘタレ商人だったのだよ。誰が好き好んで戦地に塩やらポーションやら持って行くか!

欲しけりゃ買い付けに来い!って勇気ある買い付けに来た奴らにとっては特需なんだろうなー。

俺らに残されたのは感謝祭を期待して作った売れ残り在庫の山。

そして今日、私リストラされました!!

それが正直凹んだ理由だ!タコこら!

サボテンの養殖に成功したらしい、天然サボテンはもう要らないそうだ。

塩もリュック自動補充を夜中も放置してたらヤバイ量になってて、

内戦で出荷しないからしばらく要らないってチクショー!!!

又必要になったらよろしくってチクショー!!!

ウェックスの野郎!!いっそのことヒナコデス商会でも作ってやろうか!

....あーでも脱サラして苦労した話よくあるよね〜、嫌だな〜苦労、ウェックスさん又呼んでくれるかな〜。


俺は考え事をしながら広場の屋台を回る。

勿論左手にはビールの入った大ジョッキだ。

「あーまだ昼だよー」

一人呟くが返事は無い、屋台て買った串肉をツマミにベンチに腰掛け日光浴を楽しみつつビールを飲む。

「なんだろう...冒険って」

ふと見ると向かいのベンチに腰掛けた爺さんが真昼間から酒を飲んでいる。

社会の落伍者ってあーいう奴の事だろうな、可哀想に。

つかアイツ魔術師マールンじゃん!マールン落伍者かよ!

「おーいマールン!!お前何真昼間から酒なんて飲んでるんだよ!!」

「ウヒョウヒョウヒョ、はて?どちら様かの?」

うえ!?お前フォンフォンフォンじゃねーの!?つか俺覚えてねーの!?

「いやヒナコデスだよ!こないだファイヤーアロー撃ち合いしたろ!?」

「ウヒョウヒョヒョ!はて?わかりませんな〜」

ウヒョウヒョが何かムカつくぞ!?コイツ解ってて言ってないか??

「まー良いや、マールン一緒に飲もうぜ!」

「ウヒョウヒョヒョ!よろしいですぞ、ホレ、ワシのおすすめのツマミを食いなされ」

マールンがタコスっぽいのを差し出して来た、正直めっちゃ美味そうだ。

「おお!サンキュー!」

マールンの差し出して来たタコスを食べる、美味い!これは美味い!そしてビールに合う!!

「うめー!!マールンお礼にコレやるよ」

おれはオデンの串肉を差し出す。

「ウヒョウヒョヒョ、おおコレは中々」

マールンが美味そうに食べる、俺もなんだか嬉しくなる。

工場をリストラされた気分も吹き飛ばせそうだ。

「わ.....わ....」

ん?

マールンの様子がおかしい、目が見開きこめかみの辺りには血管が浮き上がっている。

「どうした!?マールン!?」

「ワシの朝ご飯を食べたのは誰じゃーー!!!!!」

「な!?」

『ワシの朝ご飯を食べたのは誰じゃ』は

俺が高校時代に演劇部で助演女優賞を男役だけど取った時のセリフ!何故それを知っている!?

マールン、王国最年長の冒険者と聞いてはいたが一体何者!?

しかし負けられん!俺も男役だけど助演女優賞を取ったセリフを譲る訳にはいかん!

「ワシのーー!朝ご飯をー!!食べたのは誰じゃーーー!!!」

目を大きく開き驚くマールン、どうやら俺の覚悟が伝わったようだ。

「ワシの朝ご飯を食べたのは誰じゃ?」

勢いがなくなっているぞマールン、真のお爺さん役を見せてくれる!

「ワーシーの!!朝ご飯うぉぉ食べたのは!!誰じゃ!誰じゃ!誰じゃーーーー!!!」

魂を込めた渾身のセリフ、どうだマールン見えただろう朝ご飯が。

「あーワシもう食ったんじゃった」

マールンはそう呟き去って行った。俺の想いが通じたようだ。

しかし流石は王国最長年の魔術師、俺の過去まで読み取るとは...。

俺は魔術師マールンのお陰で鬱な気分を吹き飛ばし、楽しい気分で2杯目のビールを頼む事が出来た。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ