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異世界フランケンシュタイナー  作者: 雪村宗夫
感謝祭
111/256

カミルの人々

カミルの街の人々は暗く落ち込んでいた。

カミルポーションとメヒコの塩で生じた好景気、それが王の崩御による感謝祭の中止によって生じる損失で

全て失われてしまうのではないかとの恐れ。

後継者争いで内戦になるのではとの不安。

人々の表情は暗く沈み、声にははりが無かった。

「18年前の戦いみたいになっちゃうのかねー」

18年前に起きた王位を争った政変は、辺境の地で中立を保ったハルバット領に直接的な影響は無かった。

だが中立を保ったが故に、敗者の逃走先となったハルバット領には苦い記憶を持つ者が大勢居たのである。

「せっかくカミルポーションが売れるところだったのにね、

王様もせめて感謝祭まで生きててくれれば良かったのに」

人々の会話も暗く希望の見えない話しばかりであった。

「見ろよ、ヒナコデスさんも昼間から酒飲んでヤケになってるよ...」

人々はヒナコデスの自堕落な姿を見て更に落ち込んでしまう。

「あー、マールンさんまで自棄酒かよ...」

「あの人は何時もだろ」

「ククク。だな」

人々はマールンの存在で少しだけ癒される。

そんな時だった、突然広場にマールンの叫びが響いたのは。

「ワシの朝ご飯を食べたのは誰じゃーーー!!!」

「な!?」

驚く広場にいた人々、最初はマールンさんがおかしくなってしまったのかと思った。

しかしヒナコデスが唱和する事でその考えは否定される。

「わーしーの!朝ご飯うぉ!食べたのはー!誰じゃーーー!!!」

マールンの声を更に上回る大声に人々は驚く。

しかしマールンが自分で食べた事を告白するまで2人の唱和は繰り返される。


「そうか、これは俺たちへの謎かけ。メッセージなんだ!!」

広場に居た一人の冒険者がマールンとヒナコデスが去った後に叫ぶ。

「なぁ!俺たち悩み過ぎてたんじゃないか!?

つまり朝ご飯を食べたのか食べて無いかで言い争う、そんな無意味な悩みだったんじゃ無いのか?

カミルの街は王都と距離がある、戦いになる事はないんじゃ無いのか?

仮に戦いになったとしても、俺たちにはドラゴンゾンビを倒す英雄と、

王国最長年の魔術師がついてるじゃないか!何も悩む事は無いんだぞと二人が教えてくれたんだよ!」

「おお!!確かにそうだ!でもヒナコデスも最初は落ち込んで居たよな?酒飲んで。」

「そうさ!だからマールンさんが檄を飛ばしたんだよ!そしてヒナコデスはそれに応えた!

俺たちを守ってみせると!!」

「おおおおおお!!マールン!マールン!マールン!マールン!」


この日の朝の出来事は直ぐに街中に広がり、不安を感じていた人々の表情が一気に明るくなる。

気持ちに余裕が生まれた人々は気付く、道の脇に花が植えられ育てられている事に。

気にも留めていなかったが、いつの頃からか道の脇に花が植えられていた事は知っていた。

だが今意識して見ると花の道は延々と街中に広がっていたのである。

「この花の道...綺麗。心が温かくなるわ」

カミルの街の人々はマールンの叫びと『良い団』の行動により恐怖に打ち勝つ事が出来たのである。


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