克慈宅4 部屋
……いや、別にドキドキする様な事でもないんだけどね?
惠美
「お待たせ〜、克ちゃん。ホットケーキ作って来たよ〜」
テーブルの空いている場所に克慈用の皿を置く。
お皿を別にしたのは、一緒にしていると、克慈に私の分まで食べられてしまうからだ。
克慈
「……皿、別にしたの?」
惠美
「そうでぇ〜す。私だって、ちゃ〜んと学習してるんですよ〜だ!」
克慈
「ふぅん、学習ねぇ?」
惠美
「ちょっとぉ、その如何にも残念そうな子を見るような目するの止めてよ〜」
克慈
「ぷっ、──自覚してるんだ? えらいえらい、いい子だね」
惠美
「馬鹿にしないでよねっ!! 私は残念な子じゃないって言ってるでしょ〜!! そんな意地悪ばっかり言うなら食べたくていいよ! 没収です、没っ収〜!!」
克慈
「惠美、美味いよ」
伸ばした私の手を軽くあしらって、ホットケーキを口に入れた克慈は、味を褒めてくれた。
惠美
「もう〜、当然だよ。私が作ったんだもん。美味しいに決まってるでしょう(////)」
克慈
「うん、そうだね」
はぅんっ!!
や〜んっ、克慈の笑顔、素敵〜っ(////)
彼女には何時も、その笑顔で接してるのかな?
おじさんに似て、肌色よりもちょっと色黒で、黒髪が似合う単髪の克慈。
笑った時にチラリと見える白い歯。
克慈の彼女はきっと私よりも沢山の克慈の笑顔を見てるんだろうな……。
最近の私はと言うと──、底意地の悪い意地悪な克慈しか知らないんだよ?
克慈
「沢庵入りよりもマシって意味でね」
惠美
「うん……、はぁ?! 沢庵入りよりって、どういう意味?」
克慈
「そのままの意味だけど? 惠美が『俺の為に』って初めて作ってくれたホットケーキは、まさかの沢庵入りだったろ。俺さ、あの時はショック受けたよ。ああ、俺はそんなに嫌われてるのか……ってね」
惠美
「……確かに沢庵は入れたけど。でもでも、克ちゃん『美味しいよ』って全部食べてくれたじゃない」
克慈
「食べるしかないでしょ? 悳司さん,美加さんも居たし、罰ゲームだと思って完食したんだよ」
惠美
「罰ゲームって……。私、そんなつもりで作ったんじゃないよ! 克ちゃんに元気になって欲しくって……」
克慈
「でもねぇ、沢庵は無いでしょ? 何で入れたの?」
惠美
「……沢庵があったからだけど」
克慈
「で?」
惠美
「──だって、美味しい沢庵なんだよ! テーブルの上に置かれてて、私もついつい摘まんで食べちゃうくらい美味しい沢庵だったんだもん! ホットケーキに入れたら、もっと美味しくなるかもって思って、頑張って微塵切りにしたんだよ」
克慈
「味見は──するわけ無いか。してたら食べなくて済んでた筈だしな」
惠美
「美味しいホットケーキを食べて欲しかっただけだよ……」
克慈
「俺は至って普通のホットケーキを食べたかったけどね」
惠美
「……」
克慈
「今回は何を入れてくれたわけ?」
惠美
「……もみじおろし」
克慈
「馬鹿でしょ? あの頃から全然進歩してないでしょ? 残念過ぎて涙も出てこないね……」
なんて酷い──って言うか、失礼極まりない発言か!!
ホットケーキに、もみじおろしの組合せが何で駄目なわけ?!
克慈はまるで底意地の悪い我儘暴君だ。
どうせ彼女が同じの作ったら、笑顔で完食するくせにぃぃぃいいいいッッッッ!!!!
……、彼女が羨ましいな。
いい加減、ホットケーキの話題から離れよう。
克慈に話さないといけない事もあるし!
惠美
「克ちゃん、私ねぇ、とんもないビッグな事を思い出したんだよ!!」
克慈
「は? 何なの急に」
惠美
「えへへ、知りたい? 克ちゃんが『どうしても』って言うなら〜〜〜」
克慈
「勿体ぶらずに話せよ」
惠美
「……はいです」
何さ、偉そうに!
ムカつくんじゃボケがぁぁぁぁあああああッッッッ!!!!
……なんて声に出して言えない私は、弱虫ちゃん。
惠美
「あのね、ニュースを見ていたらね、お父さん,お母さんが話してくれたの」
克慈
「何を?」
惠美
「大事故の事! 学生の頃とか社会人になりたての頃とかに度々起こってたみたいなの」
克慈
「それで?」
惠美
「うん……『一週間に一度、必ず何処かで大事故が起きていたね〜』って言ってたの。犠牲者が凄く多くて特番に組まれたりしてたみたい。『大予言が当たった!』とか色々言われて、当時はかなり話題になってたみたいなの。お父さん,お母さんが『同世代の人ならニュースを見てれば思い出すんじゃないか〜』って言ってたよ。もしかしたら、おじさん,おばさんも覚えてるかも知れないね」
克慈
「……二〇数年前に今と同じ様な大事故か。──確かに、ネットで検索してたら同様の書き込みが何百も上がってたよ」
惠美
「え〜っ、なにそれ〜?! せっかく思い出したのにぃ〜!」
克慈
「ハハ、残念だったね」
惠美
「……むうっ、思い出し損じゃんか〜」
克慈
「そうでもないよ。惠美のお蔭でネットの書き込みが本当だって判ったからね。お手柄だよ、惠美」
惠美
「克ちゃん(////)」
克慈
「惠美に御褒美あげないとね」
惠美
「御褒美? 御褒美くれるの?! え〜そんなぁ(////)
どんな御褒美くれるの?」
はう〜、嬉しいよ〜♪
克慈
「はい。これ、頼むね」
惠美
「……はい?」
克慈が私の前に置いたのは、ゴミ箱に入っていたごみ袋だった。
惠美
「えへへ。克ちゃん、これって何のつもりぃ?」
克慈
「御褒美だよ。一杯になったからね。捨てて来て」
惠美
「……ねぇ、これは御褒美とは言わないんじゃ……」
克慈
「何言ってるの? 俺にパシられる有難い御褒美でしょ」
惠美
「そんなの御褒美なんて言わない!! 全っ然、有難くもないっ!!」
克慈
「惠美、我儘言わないの。俺の事、好きなんでしょ」
惠美
「──すっ好きじゃないし!! 思い上がりも甚だしいよっ!! パシるなら私じゃなくて彼女をパシればいいじゃんか!!」
克慈
「馬鹿なの? 彼女にそんな事したら嫌われるでしょ。惠美は俺が彼女にフラれてもいいの?」
惠美
「逸そ、こっぴどくフラれてしまえや!! 彼女もパシれない腰抜けのチキン野郎なんかね!!」
克慈
「……。いいから捨てて来なよ」
な゛っ──、なんて、なんて、なんてッッッ、涼しい顔して言いやがるのかしら!!!!
克慈ぇ、殴りてぇぇぇええええッッッ!!!!




