異変1 克慈宅
廃校舎
で
【椅子取りゲーム】
を
した日から
四週間後
犠牲者 四人目
椅子取りゲームをした日から、四週間が経った。
あの日の出来事が、頻繁に頭に浮かんで来ては、私の頭の中をグルグルと回っている。
くだらない,阿呆らしい,迷惑……そう思っていたけれど、実際に参加してみたら結構楽しかったんだ。
場所や小道具の数々には色々とツッコミたいけど……。
初めて会った人達と、アン◯ンマン◯ーチを手拍子しながら歌って、椅子取りをした事も……、ただのお遊びなのに皆が真剣になって、椅子を取り合った事も……、時間が経ったからなのかな……今思えば、かなり笑えるんだよね。
まるで童心に返ったような、あんなに楽しい気持ちで遊んだ事が、今迄あっただろうか?
誰もがって訳じゃないけど、結構ハメを外して楽しめていたんじゃないかな……と思う。
高校時代のクラスメートを亡くして、沈んだまま浮かび上がれない私にとって、一二人で参加した【椅子取りゲーム】は、私の中で懐かしくも楽しかった良い思い出になりつつあった。
『あの日に戻りたい!』とすら思う程に━━。
克慈
「惠美、……まだ?」
惠美
「はーい、今直ぐに!」
四週間前に浸っている私の邪魔をしたのは、眠た気な克慈の声。
いい気なもんですよ!
昨日夜、克慈と私は深夜過ぎに勤先から帰宅した。
克慈の部署でトラブルが起きて、雑務課の私は応援に出された。
克慈が帰れないと私も家に帰れないから『私が応援に行きます!』なんて言っちゃったばっかりに……。
何も知らないで手を挙げたりして、阿呆だ私は……。
私の考えは甘かった。
誰も応援に行きたがらない理由が分かったのは、半端ない雑務を言い付けられてからだった。
私が名乗り上げた時の、あの嬉しそうな皆の顔が忘れられません!!
私も『二度と応援に行くもんかっ!』って、本気で思ったくらいの、それは酷い扱われ様だったんだから〜〜〜!!!!
克慈
「惠美、お腹空いてるんだけど……」
惠美
「だぁかぁらぁ〜、作ってるってば〜!! 黙って待てないの?」
克慈
「早くして……」
惠美
「文句言うなら自分で作りなよ! 次、何か言ったら作るの止めるからね!!」
全く、着替えもしないで!
惠美
「そうだよ! 顔洗って着替えて来なよ。終わった頃には出来てるからさ」
克慈
「……やだ。二度寝したいもん」
『もん』じゃねーよ!
オッサンかよ、グータラめ!
男が『もん』なんて使ったってポッチも可愛く無いんだからね!!!!
惠美
「二度寝するなら朝御飯いらないじゃん! 作らせないでよ。私は時間が惜しいんだからね!!」
克慈
「いいでしょ。……腹減ってると寝れない……」
惠美
「私は早く家に帰って、出掛ける準備したいの! 帰らせてよ〜」
克慈
「駄目。いいから、早くして」
惠美
「……、もう! 手の掛かるお兄ちゃんなんて要らないんですけど!!」
今日は雑務課の雛菊上司と会う約束をしている。
ふふっ、待ちに待ったドライブデートの日なんですよ〜♪
待ち合わせ時間は一一時。
遅れない様に、一〇時五〇分には着いていたいのにぃ〜!!
惠美
「はい! 出来たよ、オムレツスパゲッティ! もう帰っていいよね?」
克慈
「惠美の分が無いね」
惠美
「私はね、食べてる時間も惜しいぐらいなの! さっきも言ったでしょ!! じゃあね、帰るから!」
克慈
「惠美さ、段々と美加さんに似て来たね」
惠美
「はぁ?! 何なの急に? 何でお母さんが出て来るの?」
克慈
「口調とキンキン声が似てる」
惠美
「止めてよ! 私はキンキン声じゃありませ〜ん!」
克慈
「自覚が無いって恐いね」
惠美
「なんっ……と、克ちゃんと無駄話してる暇ないの! もう余計な事は言わないでね!!」
私はエプロンを外して、椅子の上に置くと、時計を見た。
時計は八時半を過ぎてしまっている。
椅子に座ってる克慈の後ろを通り、ソファーに置いてあった荷物を持つ。
惠美
「じゃあね、克ちゃん。食器洗いは自分でしてよ! 夕飯も自分でしてよ! 私、帰り遅くなるかもだからね」
夕食は雛菊上司と食べたいんだもん!
言いたい事だけ伝えて、克慈の家を急いで出た。




