遠出8 寺社
克慈
「惠美、着いたよ」
惠美
「……此処って、何処?」
克慈
「寺だけど」
惠美
「お寺っ?! え〜〜〜、克ちゃ〜ん、何でお寺なの?」
克慈
「何となく」
惠美
「……え、えぇ〜〜〜……。克ちゃんって実は、お寺ファンだったりするの?」
克慈がお寺とか……意外過ぎるんですけど!!
克慈
「別にファンじゃないけど? ほら、行くよ」
惠美
「……石段多いね。すんごく長いし……。上がりきる前に力尽きそうだよ……」
克慈
「いいから、行くよ」
嗚呼っ、何故に私は長い長い石段を上がっているのか。
何の為にお寺へ続く石段を上がっているのか。
克慈に左腕を掴まれたまま、半ば強制的に上がりたくもない石段を上がっている。
私の右手には克慈から手渡されたペットボトル。
石段の横に自動販売機が設置されていて、上がる前に克慈が買ってくれたんだ。
━━けれども、全っ然飲めないんですけどね〜!
漸く石段を上がりきると克慈は私の腕から手を離した。
私はペットボトルの蓋を開け、水を一気に飲む。
克慈も自分の左手に持っていたペットボトルの蓋を開けて飲んでいる。
克慈は私みたいに一気飲みはしないみたいね。
惠美
「やっと着けたね〜! 明日は筋肉痛だよ〜。治るのに四日も掛かっちゃうんだよ!」
克慈
「これを機に運動しなよ」
私の頭に手を置き、ポンポンと軽く叩くと空になったペットボトルをゴミ箱に捨ててくれた。
……子供扱いされてる気がする。
惠美
「もうっ、一歳しか違わないのにっ! 子供扱いとかしないでよ〜!」
克慈
「はは、一年半と23日も離れてるのに? 俺からしたら十分子供だけど?」
惠美
「どうせ私は、お酒飲めませんよーだっ!!」
克慈
「山葵もでしょ。行くよ」
惠美
「……ムカつく」
克慈はまた私の腕を掴むと歩き出した。
……私に拒否権は無いのね?
ここは“蒔邑寺社”と呼ばれているらしい。
どう見てもお寺に見えるんですけど!
何代か前の蒔邑寺に嫁いで来たお嫁さんが“笹塚神社”を継いだ女性だったそうで、蒔邑寺と笹塚神社は一つになり、蒔邑寺社と呼ばれる様になったとか。
お寺と神社が一緒になってるなんて、一石二鳥だよね。
克慈曰く、平田神道の影響を多分に受けて、一大宗教改革がされてから、お寺と神社は別々にされてしまったらしい。
この寺社では結婚式とかお葬式もしてくれるのかなー?
お寺と神社が元は一つだったって事を私は初めて知った。
━━ってか、克慈は何でそんな事を知ってるんだろう?
……まぁ、いっか。
克慈ってば興味無い的な事を言ってても、実は気になっていて、私をダシにして“お祓い”をして貰おうとか考えてたりしてるかも?
惠美
「克ちゃん、お祓いしてもらうの?」
克慈
「何で?」
惠美
「だって、神社って言ったら“お祓い”か“祈祷”でしょ? それ以外にする事あるの?」
克慈
「惠美、無知過ぎ」
だから、何で笑うの〜!
克慈
「此処に知り合いが居るんだよ」
惠美
「知り合い? ……お坊さんじゃないよね?」
克慈
「未だね」
克慈は勝手が分かっているみたいで、お寺の中へ入って行く。
えぇっ?!
勝手に入っちゃっていいの??




