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☀ イストリゲ~ム  作者: 雪*苺
   【 遠出 】
36/156

遠出4 約束

 

克慈

「ところで惠美、お腹空いてない?」

 

惠美

「え? お腹ぁ? ……そう言われれば、空いてるかも……」

 

克慈

「食べてく?」

 

惠美

「え? 克ちゃん、いいの?」

 

克慈

「いいよ。惠美は何が食べたい?」

 

惠美

「うん! 玉子焼きとお味噌汁かな♪」

 

克慈

「そう。じゃあ、作って」

 

惠美

「へ? 作るって? 克ちゃんが、だよね? ご馳走してくれるんだよね?」

 

克慈

「あのね、俺の裸を見といてアイスコーヒー 一杯で済むと思ってる? 昨日も約束したでしょ。作って」

 

惠美

「……え、あの、……はい?」

 

克慈

「惠美、作れるでしょ」 



 ご機嫌斜めです。


 

惠美

「……はひっ! 作らせて頂きます、です、はいッッッ!!」


 

 私は克慈に言われた通り、キッチンでお味噌汁と玉子焼きを作る羽目になりました。


 

惠美

「克ちゃん、朝は和食派なの?」


 

 私はお味噌汁に入れる具を切りながら聞く。

 

 具は冷蔵庫の中に入っているのなら何でも使っていいと克慈からお許しを頂いた。

 

 具沢山のお味噌汁になりそう。


 

克慈

「パンだけど」

 

惠美

「パン? 克ちゃん、パンでお味噌汁飲むの? 玉子焼き食べるの?」

 

克慈

「悪いの?」


 

 朝っぱらから自分が作ったお味噌汁と玉子焼きを食べるなんて、あんまり過ぎるよ……。


 

克慈

「うん、調理師免許持ってるだけはあるね」

 

惠美

「ちょっと〜、お母さんみたいなこと言わないでよ〜! そーゆうーの、うんざりするの。調理師とか関係ないし、免許なくても作れるんだからね!」


 

 そうなのです。

 

 実は私……、調理の専門高等学校の卒業生なのです。

 

 とは言っても、調理師の職には就いてなくて……。

 

 母と喧嘩する度に“調理師の免許”って言葉が必ず出て来て更に大喧嘩へ発展するのです。

 

 その度に克慈に会うと笑われて……。

 

 恥ずかしいったらない。

 

 中学時代に『薗野おんのが受かれそうな高校は……、この高校くらいだな〜』って担任の先生から言われて、調理専門高等学校に推薦された。

 

 推薦だからと言って必ずしも受かる訳じゃない。

 

 受かれるようにって、自分なりに努力はした。

 

 努力の甲斐もあって━━の合格だと思いたい。


 

克慈

「惠美、片付けも宜しく」

 

惠美

「え? 片付けも~?!」

 

克慈

「俺の裸を━━」

 

惠美

「分かってますよぅ! 食器洗いもさせて頂きますぅ!!」


 

 ちくしょう、克慈め!

 

 コキ使いやがって!

 

 ……はあ~、まさか人ん家の皿洗いまでする羽目になるなんてぇ~~~。

 

 このまま、洗濯とか掃除とかさせられないよね~?

 

 うぅ、そんな事になったら最悪ですぅ!

 

 食器洗いと後片付けを終わらせた私は克慈に目を向ける。

 

 克慈はテレビを付けっぱなしにして新聞を広げて読んでいる。

 

 ……お父さんを見てるみたいだよ。

 

 何ともオヤジ臭い二〇代か……。


 

惠美

「終わりましたよ、隊長」

 

克慈

「隊長って何? 惠美の言ってた記事は、これだね」


 

 克慈は読んでいた新聞をテーブルに置いて私に見せてくれた。


 

惠美

「うん、そう……。昨日、O子さんと連絡先を交換したの。家に着いたらメールしようと思ってたんだけど、眠かったし……。 お風呂に入ろうと降りたらお母さんと言い合いになっちゃって……」

 

克慈

「知ってる。丸き声だったもんね。笑えた」

 

惠美

「……笑わないで下さい! それでムシャクシャしてたもんだから結局メールしないで寝ちゃって……。番組欄と四コマを読もうと思って新聞を広げたら━━」

 

克慈

「惠美は新聞を何だと思ってるの? 番組欄と四コマしか読まないの?」

 

惠美

「うん。それ以外は別に興味無いし……、駄目かな?」

 

克慈

「読まなくても、一応は記事に目を通しておきなよ」

 

惠美

「……、はーい……」

 

克慈

「で、新聞を広げたらどうしたの」

 

惠美

「お父さんがぶつかって来てね、新聞を落としちゃったの。お父さんってば、新聞を拾ってくれないんだよ〜。新聞を踏んどいて『ああ、すまん。拾っといて』って言うだけでトイレに行っちゃうの! 酷いと思わない?」

 

克慈

「拾ったんだね?」

 

惠美

「まあ、拾いましたけど。番組欄チェックしたかったし。拾おうとした時、変な所を持っちゃってね、新聞が散らばっちゃって……、お母さんに『何やってるの、惠美ちゃん! お父さんが転んじゃうでしょ! 早く拾いなさい』って怒られました。ちゃんと拾うのに、いちいち怒るんだもん! 頭にカッと来ちゃったよ」

 

克慈

「知ってる、丸き声だったからね。朝から賑やかだね、惠美の家族は」

 

惠美

「だーかーら、笑わないでよ〜。新聞を拾ってる途中で、記事を見付けたの。……目に入ったって言った方がいいのかな? ほら、昨日、克ちゃんが教えてくれたじゃない? 大型トラックとバスの衝突事故がどうたらこうたらって。それが頭に残っててね、『あ〜っ!』って思ってね、読んでみたの」

 

克慈

「へぇ、よく覚えてたね。寝たら忘れる鳥頭なのに」

 

惠美

「ちょっと〜、鳥頭って止めてよ! 三歩 歩いても忘れない事もあるからね! ちゃんと〜!」


 

 そうだった!

 

 克慈に智沙の事を話さないといけなかったんだ。

 

 ……すっかり忘れていた。

 

 このまま思い出さずに忘れていたかったよ。


 

克慈

「そう言う事にしとこうか。続きは?」

 

惠美

「だから、読んで吃驚したの! だって、昨日まで笑って話していたO子さんの名前が載ってたから……」

 

克慈

「バスの乗客は全員死亡。生存者は大型トラックの運転手だけ━━。……二人目か」

 

惠美

「え? 何が二人目なの?」

 

克慈

「二週間前に会った人物が二人も死んだって事だけど」

 

惠美

「……こんな事ってあるんだね。自分の身近で起こるなんて思わなかったのに……」

 

克慈

「気にし過ぎ。出掛けるよ、着替えて来て」

 

惠美

「はぃ? 出掛けるって何処に?」

 

克慈

「何処だと思う? いいから着替えてきな。そんな格好で外は歩けないでしょ」

 

惠美

「そんな格好って、どんな格好なの?」

 

克慈

「鏡、見てみな。準備出来たらチャイム押して」


 

 克慈は私の頭に手を置き髪を掻き回す。

 

 克慈はケラケラ笑いながら二階に上がって行った。


 

惠美

「何がそんなに可笑しいの? わけ分かんない!」



 克慈に聞こえる様に大声で文句を言ってから鏡を見に行った。


 克慈に言われた通り鏡を見た私は、自分の姿に絶句するしかなかった。


 克慈が笑う理由も解る。


 パジャマにしている高校のジャージを着たままで、髪はボサボサのスッピン姿。


 普段もスッピンみたいなものだけど、一応は化粧をしていますよ。


 それでも、シミ,そばかす,ホクロ等を上手に隠して化粧を塗りたくっている人よりは、私の化粧は薄い。


 お世辞にも化粧をしても“綺麗ね”とは言えない。


 “スッピン美人”と言われる方がいいのか、塗りたくったバッチリ“メイクで美人”と言われる方がいいのか、私には分からない。

 

 ただ言える事は、私は化粧臭いのが嫌いだという事。

 

 香水臭いのも無理。

 

 だから、私が愛用している化粧品は安くて、あまり化粧臭くない、◯ふれだったりする。

 

 ━━うん、どぅでもぇぇ情報なんか要らないよね。

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