異変4 ライバル宣言
惠美
「智沙、何なの急に?」
智沙
「克慈さんの連絡先を私に教えて」
惠美
「……は? 何で克ちゃんが出て来るの?」
智沙
「克慈さんが好きなの。分かるでしょ。私に克慈さんを譲って」
惠美
「……譲れって、克ちゃんを智沙に? ……譲るとか意味分かんないんだけど!」
智沙
「惠美ちゃんは馬鹿なの? そのままの意味じゃない。克慈さんが好きだから、私が克慈さんと付き合えるように身を引いて別れて、って言ってるの」
惠美
「なっ……?! 何、それ! 勝手なこと言わないでよ! 克ちゃんと私の間に割り込んで来ないでよ!」
智沙
「克慈さん、満更でも無いみたいだったよ? 私の胸をずっと見てたし。色気の無い惠美ちゃんよりも、私の方が魅力的なのは明らかでしょ。私ね、克慈さんと〜し・た・い・の。いいでしょ」
し・た・い・のって……、可愛く言ったって駄目です!!
『病院内でする話じゃねぇだろ!!』とスリッパで頭を叩いてやりたい。
智沙ってば克慈を使って大人の階段を上がっちゃう気なの?
智沙なら男なんて選び放題じゃんか。
別に克慈じゃなくてもいいじゃないの!
智沙と『繋がりたい』って思ってる男は沢山居るっていうのに!
惠美
「良くないよ! いい訳ないでしょ!!」
本当になんて事を言い出すんだろう、この女は!
智沙も蓉子と同様で、克慈と私が付き合っていると思っているみたい。
克慈と私は恋愛感情込みの付き合いはしていないんだけどな。
兄代わりと思って、克慈の気持ちも考えないで、甘えちゃってる事が沢山有り過ぎていて……、申し訳ないと思ってるくらいだ。
克慈は私の誘いには殆どが受身で、断られた事もそんなに無くて……。
いい加減、兄離れしないといけない歳になってるのに大好きだった幸裕兄を克慈に重ねていて……、幸裕兄からも克慈からも卒業出来ないでいる。
ひょっとしたら智沙の申し出は、チャンスなんじゃないかと思う。
幸裕兄と重ねてしまっている克慈からも、自分を卒業させる為には、有難い申し出なのかも知れない。
それなのに当の私は自分が好きで、自分が可愛くて……自愛が強いが為に、智沙の申し出に感謝する処か反発した。
私は……克慈が私の知っている子に取られるのが━━、嫌なんだ。
克慈が私の知らない女性と、どんな関係の付き合いをしていようと、私は何とも思わない。
これは本当で、幾らでもどうぞって感じ。
でも、私が知ってる女性と━━っていうのは嫌だ。
だって、そうでしょう?
肌を重ね合って『アンアン』するって事なんでしょう?
某国民的猫型ロボット◯ラえもんの事じゃないからね。
雑誌の名前でも無いんだよ?
克慈が智沙と━━、何て考えたくもないよ!
勿論、蓉子や杏菜とだって嫌だよ!
U子さん,O子さんと━━ってのも微妙なんだけど……、やっぱり顔を知ってるから嫌だ〜~~!!
私を抜きにして、私の知り合いと二人きりで会って欲しくないとか、連絡先を交換しないで欲しいとか、連絡し合って欲しくないとか……。
私の考え方は、すごく身勝手で、我儘で、底意地が悪くて……、克慈にとっても傍迷惑で、余計なお世話な考え方だと━━思う。
智沙の良さは胸だけじゃないと思うし、本気になった智沙を相手にしたら克慈だって━━、きっと恋愛感情込みの交際に頷くんじゃないかって思う。
未だに克慈の女性の好みとか全く分からない。
私の浅はかな考えでしか無いけど……。
私が知らないだけで、克慈には交際している女性が、ちゃんと居るかも知れないし。
誘いを断られた理由も、彼女とデートする約束をしていたからなのかも知れない。
克慈はあまり自分の事を話してはくれないし、聞いても『どうだろうね』って簡単にあしらわれてしまう程、自分の事を話したがらない男なんです。
克慈は必要以上に自分の中に踏み込まれたく無いと思っているのかも知れない。
そう考えると、克慈に認められた彼女が羨ましく思えてしまう。
克慈に信用されている彼女が━━、克慈に信頼されている彼女が━━、克慈に愛しく想われている彼女が━━、克慈に━━……って、考えたら切りがないね。
逆に阿呆らしいわ!
居るかどうかも定かではないけれど、もしかしたら居るかも知れない克慈の彼女の為にも、智沙には克慈を諦めて貰わないとね!
智沙
「惠美ちゃん、ボケッとしてないで何とか言いなさいよ。克慈さんの連絡先を教えてって言ってるの! シカトしないでよ!」
惠美
「智沙はモテるんだから克慈じゃなくてもいいじゃないの。したいなら、他の男としてよ。智沙には悪いけど、勝手には教えてられないよ。ちゃんと克ちゃんに聞かないと駄目だよ」
智沙
「それなら、今、此処で克慈さんに連絡してよ! 私が直接話すから! ほらっ、早く━━」
惠美
「きょっ今日は駄目!! 克ちゃん、携帯電話を職場に忘れて帰って来ちゃったみたいだから! 私から聞いとくから諦めてよ。良くても駄目でもちゃんと連絡するから!」
智沙
「……本当ね? 嘘ついたら許さないんだから! ちゃんと克慈さんに聞いてよ!」
惠美
「聞くよ! 聞きますよ!」
智沙
「━━フン。無駄な努力は止めなさいよ? 克慈さんに惠美ちゃんは似合わないんだからね!」
……本っ当にムカつくな!!
私が劣ってるとか鼻で笑って〜〜!
……否定は出来ないけど。
兎に角、智沙を何とか誤魔化す事が出来て一安心。
帰ったら、ちゃんと克慈に聞かないとね……。
次いでに交際している彼女が居るか確かめてみよう。
もしも、克慈に彼女が居たら、克慈を卒業出来るように私も努力しなくちゃ!
そうでもしないと、克慈と愛し合っている彼女に申し訳ないもん……。
うわー、私ってば、超良い子ちゃんだわー!




