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第十一話 「帰還」

「ただいま~」

「ただいま」

 日が落ちしばらくして暴食のセブンズシードとの激戦を終えたノアと大地は、孤児院へと帰ってきていた。大地もノアも見るからにぼろぼろで、周りから見ても明らかに満身創痍だった。

 そんな二人を迎えたのは鉄雄と穂香の二人だった。

「大地。無事、なのか」

「まあ、ぎりぎりってところだな。

 これでも五体満足で帰ってきたよ」

「そうか、よかった」

「とりあえず二人とも、おかえりなさい」

「ああ」

「うん」

 ノアに先に風呂に入るように促して、大地は院長の部屋へと向かった。今回の報告とこれからの対策についてだ。

 院長室の部屋の前まで着くと、扉を二度ノックする。

「入っていいぞ」

「失礼します」

「それで報告を聞こうか」

 相変わらず話が分かる院長だな~と考えながら今回の結果を報告する。

 暴食のセブンズシードを確保できたこと、死にかけたこと、大地の本来の力を使ってしまったこと、全員があれほどの使い手ともなるとこれからもただではすまないこと。

そしてそれを踏まえた上でどうするべきか、その対抗策などを聞こうと考えた。しかし院長は実に単純明快な答えを返してきたのだ。

「お前が強くなればいい。

 あの力に振り回されなくなるように」

「簡単に言いますけど院長、アレの制御は一朝一夕にできるものではない。

 それは院長も分かっているのでしょう?その胸の傷をつけたのは暴走した時の俺の力なんですから」

「これは私の自業自得だよ。興味本位で君の力を心の奥底から覚醒させ、暴走させてしまったのだからね。この傷をわざわざ残しているのはその戒めさ」

 過去の話故にこれほど簡単に話しているが、事態はもっと深刻だった。たったの一撃、ただそれだけで院長の心臓を破壊し、胸に大きな傷をつけた。

 院長は自身の能力で一命を取り留めることは出来たが、俺自身はまだ暴走を抑えることができず、結局俺の暴走を止めたのは穂香と鉄雄の二人だった。彼らが命がけで俺を説得してくれたおかげで俺はなんとか暴走を抑え込むことが出来たのだ。

 そして俺と鉄雄と穂香は、院長のいる孤児院に引き取られることになったのだが、俺自身はその一件以来院長が苦手だったし、穂香と鉄雄も院長を嫌っていた。穂香も鉄雄も幼少のころに親に捨てられ、俺と出会ってからずっと一緒に過ごしてきた親友だから俺のことを暴走させた院長を好きになれなかったらしい。

 しばらくしてから起こった一件で、何とか関係は修復されたけどあの時は大変だった。まあそれはいいとする。話を戻そう。

「院長、まだしばらく俺は二つ・・・の力を使う気はありません。

 今のおれでは制御しきれませんから。だからもう少し強くなってからですね」

「そうか、その辺の判断は君に任せるよ」

「で、対策とかはないんですか?

 今回は運良く勝てましたけど、次回もそうとは限りませんよ」

「なら君の一つ目の能力、『創造神クリエイター』を使えばいいじゃないか」

「……まあそうなりますよね。

 あれは現実に影響を及ぼす禁忌ですよ。無から有を生み出すなんて神の所業を人の身でなそうとするからこそ起こる歪みをどうにもできないから使用をやめていたんですが」

「歪みに関しては仕方ないだろう。世界を壊されるよりはましだよ」

「まあ、そうですね。

 次回からは危険になる前に使いますよ。出来れば使わないように努力はしますが」

「そうしてくれ」

 失礼します、と告げて大地は部屋を後にした。

 大地のいなくなった部屋で院長はひとり呟いた。

「その身に創造と破壊を宿すもの、人はそれを神と呼ぶか。

 あなたはどう思う、ゼウス?」

「まったく、最近は気付かれてばかりじゃのう」

 何もなかった空間が歪み、一人の老人が姿を現した。大地たちを巻き込んだ張本人であり、ノアの上司であるゼウスだ。

「当然ですよ、これでも元神ですから。

 人間を神にする計画、でしたっけ?あれで生まれた私とアイツ。アイツは結局封印処理されましたけど。なんだかんだで私この世界で仕事させられてるんですよね」

 はあ、とため息をついた院長。苦労人である。

「まあそう言うでない。

 で、大地だが、彼は我々から見れば恐ろしき存在だな。人の身でありながら神の力を宿すもの。謎だらけだ。だが、だからこそあの計画を実行する価値がある人間だよ」

「また、やるんですね」

「ああ」

「また、犠牲者が出るんですね」

「そうさせないためのわしらじゃよ」

「あなたは本当に難しいことを言いますよね」

「そうでもない」

 どちらからともなく笑い、笑みをこぼした。ゼウスは向き合っていた身を翻すと別れを告げる。

「では、またの」

「ええ、機会があればまた」

 簡単に別れを済ますとゼウスは空間を歪め、消えていった。また一人になった院長はその顔に笑みを浮かべ、目を閉じた。

「世界を変革するもの、か。

 どういう変革になるのかは彼次第ね」



*****



「大地、お風呂出たよ」

「あ、大ちゃん」

 院長の部屋を出た大地は自分の部屋へと帰ってきたのだが、先客がいた。

 ノアはここで寝ているので分かるのだが、その後ろに穂香がいた。櫛でノアの髪を梳いている。ノアは風呂から上がったばかりなのだろう。頬がほんのり赤い。

 まあとりあえず汗を流したかったので、風呂へと向かった大地だった。


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