介入:ベアトリス
※誤字脱字があれば申し訳ないです。
レオナルドに懐かれた。
ここ最近の出来事を一言で表すならこれだった。
辟易してため息をつくが現状は変わらない。
「ベアトリス様!」
「ベアトリス様!」
「ベアトリス様……!」
この繰り返し。
私が毎日のように神殿や医院に向かっているのを知ってか、そのあとを三人の子分を連れて先回りしているのだ。
「カイル」
「はい。いかがなさいました?」
彼も遠い目をしている。
顔は蒼白だ。
「どうする?」
「もう諦めては?」
「本当に手は尽くしたのか?」
それはもう。と、カイルは両手を広げてため息をついた。
「情報が漏れないよう精一杯の努力と祈りを」
「ベアトリス様!」
ああ、うるさい犬の声が……
頭痛がして額に手を当てた。
プラチナブロンドの髪を靡かせて彼はこちらへと歩いてくる。
「いかがでしたか?」
「なにが?」
思わず前世のイントネーションで問い返してしまった。
しかし、レオナルドは気にせず言いたいことを言う。
つか、ちょっとは気にして幻滅しろよ!
——と、思わなくないがこれだけのことで幻滅するならとっくにしているはずだ。
なぜなら……
「ベアトリス様!私をぜひ配下に!」
「だから、嫌だって……」
「いいえ、私は負けません!」
舌打ちをして思わずレオナルドの頬を殴り飛ばした。
騎士団長なのだから避けられるはずなのに、わざと避けていないのだ。
腹立つ!
内心、憤怒しつつ倒れたレオナルドをその場から治療した。
間もなくして、直立したレオナルドに私は髪の毛をかき上げて質問する。
「どうしてそこまで配下になりたいの?」
レオナルドの尻に物凄い勢いで揺れている尻尾が見えるようだ。
「はい!実は、この私決闘で負かされたことはなかったのですが貴方に初めて負けましたので!ぜひ配下にと!」
馬鹿だ……
なんて、脳筋……
いや……。そうだ、前世にもこんな奴いた。
あれは、私が隣の地域の奴と喧嘩してそこに勝ったとき、そいつが配下を連れて仲間になる!と言い張っていた。
それと同じということなのだろうか?
あいつにはどうしたんだったけか……
顎に手を置き思い出す。
その間もレオナルドは懲りずに私にアピールしている。
「あ!そうだった」
思い出す。
そいつは私と一緒に喧嘩を売ってくる奴らを返り討ちにしていた。
というよりあいつは……
「じゃあ、あんたは私の肉壁として配下に加えてやる」
あいつは、私の肉壁として働いていたのだ。
その場に沈黙が流れる。
隣から盛大なため息と胃を抑えた気配がした。
レオナルドもなにを言われたか理解できていないようなので、私はカイルに人払いを命令してから木製の椅子に腰かけた。
「私はね、ある人を探しているの」
足を組み、手のひらに顎を置き彼を見下ろす。
「その人は私の最愛の彼氏。恋人なの」
レオナルドが呼吸を止めて驚きを露わにさせた。
「私はその人がどこに行ってしまったかを探している。異世界人としてこの世界にいるのか、私と同じく生まれ変わったのか」
さらに彼は身を強張らせた。
「私は彼しか愛さない。彼以外と愛しあうくらいなら悪女にだってなる」
ヒール先で彼の顎を持ち上げる。
彼は恍惚とした表情で、私を見上げた。
熱を帯びたアイスブルーの瞳に映る私は氷よりも冷たく冷徹な表情。
「だから、よこしまな感情を私に向けるならさっさと死んで。それでも私の配下になりたいと言うのなら、肉壁として馬車馬のごとく働くことね」
それでも熱が引かない瞳がうざくて、そのまま顎を蹴り上げた。
「なにか言えば?これごときで喋れなくなるわけ?」
レオナルドは顎をさすりつつ膝をついたま私を見上げた。
「……そのお方のことがとても大事なのですね」
「ええ」
間髪入れずこたえた。
「彼は私が死にかけたところを幾度も助けた。心も身も癒してくれた。あれができる男は彼以外いないのよ」
メガネをかけた鬱陶しい委員長。
貴方のことが未だに恋しい。
貴方はもう私のことを愛してないかも……
他に好きな人ができているかも……
それでも、死ぬまでに貴方を見つけて、もう一度会話したいのよ。
貴方に……また懐かしい愛のある説教をされたいの。
だから、こんな騎士を使ってでも貴方を……
「配下になるの?」
レオナルドは少し視線を下に向けたあと、それでも熱を帯びている瞳を私に向けた。
切り傷のある大きく武骨な手で私のヒールを包むと、その先に一つ、足の甲に一つキスをした。
「貴方にこの魂を」
そう腫れている顎を動かして彼は言った。
使えるものは、使う。
「分かった。なら、来週の私の誕生日に向けてやること手伝え」
「やること?」
私はニヤリと悪女らしい蠱惑的笑みを浮かべてレオナルドを見下ろした。
「表向きは聖女による救援団体の設立の宣言。それはもちろんする。しかし、裏で私の彼氏——ヒロキの捜索をするんだよ。団体はそれの蓑」
椅子から彼の顎を治してやる。
「そしてね、団体にあんたも手を貸すと、当日宣言しなさい」
「なぜです?」
レオナルドは姿勢よく純粋に尋ねて来た。
「私の父。つまるところ宰相がね、私をあまりにも溺愛しててそういう行動さえ成人しても制限してこようとするの。それをどうにかするために、貴方の立場を利用する」
「騎士団長という……?」
私は首肯した。
「そうよ。これからは貴方をこき使いまくるから覚悟しておくことね」
彼は片手を胸に当てて私に頭をさげてきた。
「どうぞ。私は貴方の言う通りになんでもいたしましょう」
それを軽々しく言う神経が正直信じられないが、前世でも似たようなやつは幾度も見て来たので勝手に己を納得させる。
カイルの胃痛を癒してやると、立ち上がり準備を開始した。
臨むは私の生誕祭。
父が領地を巻き込んで行うその祭りで、大々的に私の自由とこれからを叫んで見せる。
読んでいただきありがとうございます(o^^o)




