災厄
災厄はいつも忘れた頃にやってくる。
平和なこの異世界に突如
一体の竜が現れた。
竜は火を噴き、家屋を薙ぎ倒し、
道をズタズタに引き裂いた。
竜は数日で去ったが
いつまた現れるか分からない。
この寒い冬の中、
人々は避難を続けている。
らしい。
500キロ以上離れた
この村にもそんな噂が聞こえてくる。
この村は竜の直接の被害はなかったが、
それでも地震のような揺れを感じた。
竜が現れたのは
実に100年ぶりらしい。
当時はまだ、勇者やら、ハンターやら、
ドラゴンスレイヤーやら、
腕利きがたくさんいたので、
竜を討伐できたが、
今のこの平和な時代に
勇者やらハンターやら
ドラゴンスレイヤーやら、は、もういない。
竜の討伐など不可能だ。
この村にも、
いつ竜が襲ってくるか分からない。
村の人々はあたふたしていた。
「竜に襲われた町へ絶対に行ってはいけない」
「いつものように過ごすことが大切なんだ」
と、村の人々は言っていた。
みんな竜のことなど忘れたいのだ。
完全に他人事だ。
「ちょっと竜に襲われた町へ
行ってみようと思うんだ」
親友のコスケ以外は。
「はあ?どうして?
絶対やめたほうがいいって!」
俺はついそう言った。
「だって、襲われた人が心配じゃない。
マッサージくらいなら出来ると思う」
コスケは幼馴染の羊飼いだ。
頭にはいつも寝癖がついていて
身体はヒョロヒョロだ。
そしてマッサージが上手だ。
「コスケが行くなら、俺も行く」
俺はどうしても竜の被害を
この目で見てみたくなった。
竜に対する恐怖心はなく、
あるのは純粋な好奇心だった。
こうしてコスケと俺は
竜に襲われた町へ行くことになったんだ。




