69.下降
今回も前話に引き続き三人称視点での進行です。
前回までの簡単なあらすじ
地上からの帰還を果たした一は一三と合流する事が出来た。
しかし、一三と一緒に居た母親が足場が崩れたことによって出来た穴の中へ落ちた事を知り・・・。
地表からの深さ140m、広さは東西に約200kmと南北に100㎞、高さは約25mの巨大空間。
そこは生き残った人類が作り上げた長期用避難シェルターにして人類最後の居住地の一つである。
本来ならば大人数の人達が暮らす為に居住施設が建ち並び、限られた生活圏での暮らしの中とは言え人々の喧騒や生活音が聞こえていた・・・だが、今その場所にはとても人が居住できるとは思えない程にボロボロになった廃墟が乱立し無数の瓦礫が所狭しと撒き散らされ、そこに住んでいた人々は倒壊した建物に磨り潰され血と肉が混ざり合い、とてもつい最近まで人の形をして生きていたと思わせぬほどの状態となって瓦礫の隙間から滴り落ちているのである。
そんな地獄の様な場所に二人の兄妹は居た・・・。
兄である彼は妹が指し示した瓦礫に空いた穴をただ凝視していた。
妹から自分達の母親がどうしたのかを聴いて、自分がここに来る前に見た父親の死に姿が彼の脳裏を掠めたのだった。
彼は母親の身に起きてしまった事への驚きと、母親の安否に対する不安。
そして、父親と同じ様な凄惨な死に目を見る事への恐怖を感じ、彼は暫しの間その身体を動かせずにいた。
不意に彼の服の袖が弱々しい力で引っ張られた。
それにつられ彼が視線を落とすと、そこには妹が俯いた状態のまま彼の着ている服の袖を掴んでいた。
袖をつかんでいるその小さな手は傷付き、着ている服には砂埃や汚れが付着し端々に擦り切れや破れが見えている。
妹の姿は父親と一緒に仕事に行ったあの日、見送ってくれたあの時に比べて酷く痛々しい。
そんな妹の姿を改めて認識した彼の心には・・・怒りが込み上げていた。
それは彼の兄としての理性か家族としての本能か、或いはその両方なのか彼の心の奥、その芯の底から自分自身の声が衝き上げる様に溢れ出した。
『何時まで呆けてる気だっ!』
最初は一つだったその声は
『突っ立っている暇があるなら動け!』
段々と数を増し
『お前の家族を守る為に!』
段々と大きくなり
『お前の家族を救う為に!』
うねりを起こし
『そして何よりも・・・』
その勢いのまま
『大事な妹を何時までも泣かせるんじゃないっ!?』
噴き上げた。
彼の心の内から出た怒りの声は彼自身に向けられたものであり、叩き付けられた怒りは彼の意志を打ち震わせ、彼を突き動かす原動力へと変化していた。
・・・しかし『怒り』と云う感情は大抵の場合、自身の心情が顕となり大胆な行動が出来る様になる反面、一部冷静な判断力の欠如が起きやすい感情の起伏であり、彼もまたその例に漏れず感情のままに動き出した。
今彼の目の前に開いている穴は母親が落ちた事からも分かる様に足場が脆くなっており、その中を進むには妹と一緒では危険である事は火を見るより明らかである、しかし今の彼には母親の安否の確認と妹の悲しむ顔を一刻も早く晴らしたいと云う思考が頭を占めているのであった。
冷静な判断が出来ないという事は周囲への観察も疎かになってしまい、危機回避能力の著しい低下を招いてしまう。
そして彼は妹の身体を自身の胸部にロープで固定、背面には自分の持っている荷物をそのまま背負っている。
下降には瓦礫から突き出している鉄筋にロープを引っ掛け、ロープの片側は身体に括り付けてもう片側は穴へ垂らす、垂らした方を両手で保持しながら下降する方法を彼は選択したのだった。
適切な道具も無く、経験も無い素人考えの方法。
それでも彼は妹と共に穴の中へと降りて行ったのだった・・・。
此処まで読んで頂きありがとうございます・・・うそっ!?
前回から二か月もたってるっ!?
・・・本当に遅れてしまい申し訳ありませんでした!!
でも遅れてでも完結させたいので、どうかこれからもお付き合い下さい!
あとこれだけ待たせたにもかかわらず話が進まずに申し訳ありません!!
今日の所はこれでこれでご勘弁下しぁ・・・ではっ!!




