37.ネイバー家最後の狂人
お今晩は。
・・・どうしYO!(本気でネタが出ない)
本編をお楽しみください!
ラーゼント王国城内にある医療棟。
普段は怪我をした騎士や兵士達、他にも王国の役職に就いている人物達が利用し、職員がその応対をしている。
しかし現在ここには“元”兵士であるミリス・ネイバーが一名の司祭を人質に取って立て籠もっているのだ。
「状況は?」
医療棟の出入り口を封鎖して騎士団が周囲を囲んでいる中、パース・カンゼル騎士団長が現場に到着し、部下達に声を掛けた。
「パース騎士団長!すみません、わざわざ来て頂いて」
「城内で起こった事だ、私が来た方が早いだろう。それで状況は?」
「はっ!現在ミリス・ネイバーが司祭様の御一人を人質に医療棟西側の医療資材用の資材庫に立て籠もっています!」
「資材庫か・・・、武器の所持は?」
「立て籠もり前は武器を持っていませんでした。ですが、資材庫の中には切開用のナイフ等使い様によっては凶器にもなり得る物があります」
パースは苦虫を噛み潰した様な顔をした。
資材庫には薬品等も取り扱っているため、日光が入らない様に空調用の小窓しかなく、出入り口は搬入も兼用している出入り口が一つしか無い。
そのために踏み込もうとすれば直ぐに人質を盾にされ、最悪錯乱したミリスに殺されてしまうだろう。
考えられる策として二つ挙げられる。
一つ目に明け方前の突入だ。
日中の間に交渉事や周囲に展開している騎士達による圧で、その場に釘付けにして体力と精神を摩耗させる。
そうやって長時間の疲労によって判断能力を鈍らせ、最も暗闇が強くなる明け方前に突入する作戦だ。
そしてもう一つは長期間の封鎖による、一種の兵糧攻めである。
こちらの策も可能な限り相手の体力や気力を削ぎ、それらを回復させる要素を与えないようにし判断を鈍らせたところで交渉を行うというものである。
判断を鈍らせれば、相手の要求する物の中にこちらの都合のいい様に罠を仕掛けたとしてもそれに掛かる確率も上がるだろう。
だが、これらの策にも看過できない欠点がある。
まず一つ目の策であるが、内部にある資材自体が進行を阻む恐れがるのだ。
資材にも大小様々なものが存在する。
それらを地面にばら撒くだけでも相手へ人質に危害を加える暇を与えかねない。
包帯一つとっても棚と棚の間に張っておくだけでも暗闇の中なら十分なトラップにもなり得るのだ。
そして二つ目、これは人質に取られている司祭も衰弱してしまう恐れがある。
人質に取られている司祭は非戦闘員であり、ミリスは戦場で長期間の飢えにも堪えられるような訓練も受けている。
それはすなわちミリスよりも先に司祭が衰弱死してしまうという事である。
更に現在、この王都には≪魔獣≫群れが近付いて来ているのだ。
長期間この場に騎士を置いていくのは無理な話である。
パースは以上の事から更に苦々しそうに眉間にしわを寄せる。
それでも、ミリスの体力等を少しでも削る事は必要であるとして、交渉等は現在続けているのだ。
尤も、ミリスはその交渉に乗り気ではない様で時たま騎士団の話に返答が帰ってこない事もあった。
そうして暫くの睨み合いが続き、日が沈み始める直前にパースが待ち望んでいたミリス・ネイバーと云う人物についての情報がもたらされたのである。
「・・・成程、彼女はあの拉致事件の功労者でもあり被害者でもあり関係者でもあったのか・・・」
日が沈み始めてそろそろ完全に沈む頃、パースは報告書を読み終えた。
「しかし、ますます解らんなどうしてこんな兵士がこの様な事件を起こしているのか・・・?」
「その事ですが恐らく先のカーバイエット盆地戦線にて上官のバークライド・ファーリンの死に関係があるのでは?・・・と、同僚からの証言が有りました」
「?・・・どういう事だ?」
「ミリスの同僚から聴きましたところどうやらバークライド分隊長殿に恋心を持っていたようで・・・」
「・・・それは二人が付き合っていたという事か・・・?」
「いえ・・・、片思いだった様で・・・」
部下からの補足によって何とも言えない空気が辺りに広がった。
「・・・まぁ、それは良い。それで何故ミリスはこの様な事件を・・・?」
パースは言葉を止めた。
ミリスは≪魔獣≫に深い怒りの念を持っている。
その≪魔獣≫を一匹残らず滅ぼすには何が必要か・・・聖女である。
だが、聖女は意識不明の状態でベッドの上だ。
ではどうするか・・・?
・・・一部の大臣は聖女の再召喚の必要性を吹聴していた。
私の部下にもその事は耳に入っている程、前線の戦力には広まっている。
そして、今ミリスが拉致している人間は召喚の儀に精通している司祭だ・・・。
だとしたら・・・!
断片的な情報からではあるが、最悪のイメージがパースの頭を過った。
その時。
「パース騎士団長っ!」
切迫した様子で走って来た一人の騎士がパースの名前を叫んだ。
「!どうしたっ!?」
「ミリス・ネイバーが資材庫から人質毎脱出しましたっ!!」
「なっ!見張りはどうしたっ!!」
「それがっ!見張りの四名全員が昏倒していますっ!!」
「昏倒だとっ!?たった一人の兵士を相手に・・・!?」
予想外の報告に思わず怒号を飛ばしてしまったパースは突如言葉を止めた。
「・・・!全員鼻と口元を覆えっ!」
「!?・・・あ・・・れ・・・」
パースは急いでその場にいる全員に指示を出した。
しかし、医療棟の中から伝令に来た兵士は昏倒してしまったのだ。
「パース騎士団長っ!これは!?」
ミリスの報告書を届けに来た騎士が戸惑いながらパースに尋ねた。
「・・・間違いない、薄くだが医療棟から流れて来るニオイ・・・これは報告書にあった拉致事件に使われていた麻酔香の匂いだ・・・、そしてこの麻酔香は彼女の元実家であるネイバー商会で取り扱っていたものだ」
「で・・・では、あの女が資材庫に入ったのは・・・」
「麻酔香を作る為だろう・・・そしてあの女が医療棟から出て来ていないという事は・・・!地下だっ!地下から召喚の間に行くつもりだっ!!」
パースの言葉にその場にいる者達の間に戦慄がはしる。
今回もここまで読んで頂きありがとうございます。
例のお香型の麻酔薬ですが、長いので麻酔香という名前にさせて頂きます。
本当に申し訳ございません。
次回!今度こそベンジェフ騎士団長回!(だったらいいなぁ・・・)
ではっ!!




