表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末の飛来  作者:
第一章:胎動編
9/26

和解

 翌朝俺は目を覚ました。

 一日経って冷静になった俺は、昨日の事を思い出していた。


  昨日、フィーネに酷い事を言ってしまった。

 あれだけの事を言ったんだ。もう会うこともないだろう。

 しばらく経てば、昨日の経験も夢の中のように感じるのだろうか。

 

  ただ、もしまた会う機会があれば、その時は謝りたいと思った。

 そして今度は冷静になってきちんと話を聞きたいとも思った。


 後の祭りなのは理解している。

 それでもそう思わずにはいられなかった。


 とその時、カラカラッと部屋の扉が開いた。

 一瞬、フィーネかと思ったが、


「竜〜。おはよう!」


  部屋に入ってきたのは、母さんだった。


「さっき先生にあったけど、あんた今日退院出来るみたいよ!」


 母さんはそんな事を言ってきた。

 昨日のフィーネとの会話が思い出される。


『あなたは、作られた存在』


 母さんは、もちろんこの事を知るよしもない。

 もし知ったらどう思われるのだろうか。

 人間じゃないと分かっても、家族とみなしてくれるだろうか。


  多分今までと何も変わらない態度で接してくれるだろう。母さん達の人間性はよく知っているつもりだ。今まで通り息子として、家族として迎え入れてくれるのだろう。


「そういえば昨日、あんた明日香に何か言わなかった?あの子、昨日なんだか落ち込んだ感じで帰ってきたけど...」


 母さんがそんな事を聞いてきた。

 ...明日香?そういえばそんな名前を昨日聞いた気が...

 そうだ!フィーネが昨日そう名乗ったではないか!


「明日香は家にいるのか⁉︎」

 

「そりゃあ、いるでしょうよ。家なんですもの。」


  母さんは「何を言っているのかしら?」というような顔でこちらを見ながら答えた。

  どういうわけかフィーネは家にいる。

  まだどこかに行ったわけじゃない。

  なら、まだ謝るチャンスは残されているという事だ。


「母さん!早く帰ろう!」

 

  俺は母さんを急かすように帰宅の準備をした。


「今すぐに、という訳にはいかないでしょう。母さんは今から先生と話してくるわね。

 後からもう一度荷物を取りに来るから。」


 母さんはそんな事を言って部屋から出て行った。


 それから4時間ほどが経過して、再びカラカラッと部屋のドアが開いた。


「母さん、遅いよ!」


 今か今かと待ちわびていた俺はドアの方を向いて固まった。

  ドアのところには明日香、いや、フィーネが立っていた。


 謝ろうと思っていたが、実際に会うとまだ心の準備が出来ていなかったのか、何も言葉に出来ない。


 フィーネも困ったような顔をしている。


 しばらくの気まずい沈黙の後、


『昨日は悪かった!』

『昨日はすみませんでした!』


 同時に謝罪の言葉を口にしていた。

 そして再び気まずい沈黙が流れる。


「ぷっ、あははは!」


  なぜか俺は笑ってしまった。

 昨日あれだけの言い争いをしたのに(俺が一方的に言ったようなものだが)、翌日に二人して同時に謝るっていうのが、なんだか可笑しかった。


「なんで笑うんですか!昨日、あれから真面目に考えて、真面目に謝ったのに!」


 フィーネはプクッとした表情で抗議してきた。


「いや、ごめん!なんだか面白くって!」


「ちっとも面白くないですよ!」


 今度は少し笑った表情をしている。

 昨日の件は少しは水に流してもらえたのだろうか。


「昨日考えたんですよ。貴方からすると昨日の出来事は何から何まで急過ぎたと。なのに、私はきちんとした説明もせずにどんどん話を進めました。」


 フィーネが話し始めた。


「ですから今度はきちんと説明しながら話をします!貴方もわからないことは、どんどん聞いてください!」


  フィーネは先程までの笑顔から決意に満ちたような表現になっていた。


「俺の方こそ悪かった。違う違うと否定してばっかりで聞く耳を持っていなかった。今度はちゃんと話を聞くし、受け入れるよう努力するよ。」


 フィーネが歩み寄ってくれたんだ、俺もその努力をしなければならない。


「まずはお互いの事をもっと良く知らないといけないな!」


「そうですね!とは言っても私は貴方の事は生まれる前から見てきたので、主に私の自己紹介をしないといけませんね!」


 ....生まれる前?


「生まれる前から見てたって?」


 聞き逃せない発言に対して早速質問した。


「はい、そうです。もうかれこれ5000年近くになるんじゃないですかね。」


「5000年⁉︎」


「貴方は現在103代目の転生者なんですよ。」


  フィーネのビックリ発言はまだまだ続きそうだ...。

 俺はしみじみとそう感じた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ