家族とはほどほどに仲良くでいいのです
噴水から家、というより屋敷に向かって歩くこと10分。大きくて重そうな玄関の前にようやくたどり着いた。
中に入ると広いホールがあり、その中央に階段がある。左手の扉は食堂、右手の扉は厨房だ。ひとまず自分の部屋でのんびりしたい。今日は講義はお休みだし。
アステリアの部屋は2階の一番奥にある。思うようにいかないことがあると、大声をだしてうるさいからこの部屋になったらしい。
部屋は階段から一番近いのが姉、その隣が兄、その隣が弟である。本当だったら私と弟の部屋は逆だったんだろうな。
スタスタ歩いて自分の部屋にたどり着き、椅子に座る。誰か一人くらい会うかもと思っていたけど、誰にも会わなかった。誰もいないのかな、この屋敷。
ふう、と息を吐きながら机を見ると、教材が置いてあった。表紙を見るに、明日は算数と歴史みたいだ。
パラパラっとめくると初歩的な数字の計算とアステリアが暮らす国の歴史が書かれていた。
アステリアが暮らす国はベルモント王国。今の王様で106代目、王妃との間に王子が2人いる。戦争もなく、平和な国といえる。
詳細な歴史は授業で教えてもらえばいい。
計算に関しては教えてもらわなくてもできる。高校の数学の教員免許を持っていたので困ることはないだろう。明日の授業はぱぱっと済ませてのんびりできそうだ。
教材を眺めていると不意に眠気が襲ってきた。アステリアに文字を眺める習慣があまりなかったためか目が疲れたようだ。このあと予定はないし、寝よう。
そう決めてベッドに入ると、すぐ眠りに落ちた。
コンコンコンコンとドアをノックする音で目が覚めた。窓の外には夕日が見える。ベットに入ったのはたぶん14時半くらい、、だから3時間くらいは寝てたのか。
グーッと伸びをしてベッドから降りて扉に向かう。開けると、背の高いメイドが立っていた。夕食の時間です、と告げられたのでメイドと一緒に食堂へ向かう。
食堂に入ると、もうみんな座っていた。父が真ん中、右側に母と姉、左側に兄と弟。私の席は父の向かい側だった。いや、一人だけめちゃくちゃ離れてますやん。
ツッコミを入れつつ、父の向かい側に着席する。私が着席したタイミングで、みんな無言で食べ始めた。
私はいつもの癖で手を合わせていただきます、と言ってから食べ始める。
すると、みんな手を止め、ポカーンとした様子で見ていた。
豪華な料理に自然と笑顔になる、食べるたびに「美味しい〜〜」と言っていると、ついに弟から声をかけられた。
「お前、大丈夫か?」
ほほう、お前、ね。それなら私だって対抗しようじゃないの。
「美味しい料理を作ってくれた料理人の方や、命を頂いていることへ感謝の気持ちを忘れてはなりません。それに、美味しい料理には美味しいと言う、なにもおかしくありません。」
私の丁寧な返答に弟は驚いた顔をしていた。そんな弟にニッコリ笑って私は続ける。
「それにしてもあなたは言葉遣いがなっていません。私はあなたの姉です。お前、と言われる筋合いはございません。」
私を見ながら口をパクパクしている弟ほ横目に私は料理を食べ進める。デザートまでしっかり食べ、父に声をかけた。
「お父様、私の婚約者の件ですが」
「アステリアに婚約の話は来ていないぞ」
「ええ、存じております。婚約者の件ですが、もう探していただかなくて結構です。まだ10歳の私に婚約者は不要だと気づきました。」
ニッコリ笑った私を見て家族全員絶句している。食事が冷めますよ?と言い、私は立ち上がった。食べ終わったら退出していいのが我が家のルールである。
わたしは食堂を出てまっすぐ自分の部屋に戻った。




