淑女教育の始まり
朝食を食べ終えたあと、部屋でのんびりしていると突然ドアがバーンと開いた。
メイドはこんな開け方はしない…。ということは……
「アステリア、講師の方がいらっしゃったわ!お出迎えに行くわよ!」
母よ…いつも話すときはこんなに勢いはないじゃないか。それに今日から淑女教育が始まるのだから、講師がくるのは当たり前の話では?
なぜ母がこんなにも勢いがすごいのか、それはよくわからないが、とりあえず出迎えには行かないと。
母とメイドたちの後を追い、玄関に向かうと一人のご婦人と父が何やら話をしていた。
母が来たのに続いて私がいることにも気づくと父は私に手招きをした。ご婦人は私をじーっと見ている。
この瞬間から淑女教育は始まっているということか…。私はなるべく優雅に、少し微笑むことも忘れず父の隣に立った。
「ホーアドイム婦人、こちらがアステリアでございます。」
「はじめまして、アステリアと申します。」
ドレスを持ち、姿勢を意識しながら私はカーテシーをした。
「カーテシーは問題ないようですね、安心しました。
この度、王室より淑女教育の講師として派遣いただきました、マーシャ・ホーアドイムと申します。」
ホーアドイムって、どこかで聞いたような…。
あ、、!王子たちの乳母だ!!
え、なんでそんな人が淑女教育を?淑女教育を依頼できそうな人がそんなにもいなかったってことなの!?
私が少し混乱しているなか、母と父は私を連れてホーアドイム婦人を応接室へ案内した。
ソファーに向かい合って座ると、メイドが紅茶を入れてくれた。いつもなら何も気にせず飲むのだが、今日はそうもいかない。
会話が少し進んでから紅茶を飲むこと、その際は音を建てないようにすること、ぐいーっと飲まないこと…
気をつけなければならないことはたくさんある。
「本日から淑女教育とのことですが、どのようなスケジュールで行われるのでしょうか?」
「淑女教育は週に3日、1日3時間を予定しております。最初はマナーを中心、その後はダンスや刺繍をと考えております。」
「承知しました。よろしくお願いいたします。」
そうか、刺繍も淑女として身につけておかなければならないのか。刺繍はアステリアになる前に趣味の一つとして嗜んでいたから、そんなに困ることはないだろう。
あ、せっかくだから商会でジャージ以外の販売もしようかな?レース編みができれば女性向けの可愛いハンカチを作ったり、ドレスにちょっとしたアレンジを加えられそう!
淑女教育そっちのけで商売のことを考えていた私をホーアドイム婦人がじっと見つめていたことをこのときは知らなかった…。




