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夢で見た噺  作者: 玲央
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コトリバコに『なる』夢を見た


コトリバコとは

 コトリバコ(子取り箱)は、2005年6月6日

に匿名掲示板《2ちゃんねる》のオカルト板のスレッドに投稿された怪談、及びその怪談に登場する呪具の名称である。苛烈な差別に耐えかねた被差別部落が、間引いた子どもの遺体の一部を用いて製作した呪具であると説明される。



 提出期限ギリギリにレポートを出し、晴れて明日から夏休みを迎える運びとなった。バスに乗り込み、今から向かうとそう連絡を入れる。前もって送られていた目的地のリンクを開き道順を、確認。空調により急速に冷やされていく身体に俺はふぅ、と小さく息を吐きながらその時のやり取りを思い出した。


「新しいジャンルに挑戦しよう!」


 挑戦していこうぜ、とそんな言葉が響いたのは撮影用の装飾が施されたワンルーム。俺たちは所謂インフルエンサーと呼ばれるもので、大学生の男女4人で集まって日常的に配信活動を行なっている。この日も動画の撮影のために、俺たちは配信用に借りている部屋へと集まっていた。メンバーの1人であるシャチョウ(ハンドルネーム)がジュースを片手に言った、最近マンネリ化が進んでいると思う、と。マンネリ化が進んでいると思わないか?とそう言ってぐるり部屋を見渡すシャチョウ。顔を見合わせる俺たちに夏休みだ!と声高らかにそう言うと

「折角の長期休暇だぜ、新しいジャンルに挑戦する良い機会だ」

 脱マンネリ、ついでに目指せ新境地!と口にして楽しそうな笑顔を浮かべるシャチョウ。その表情に言葉に、良いと思うよと賛同の声が続いた。


 その日を境に、俺たちは来たる夏休みに向けて企画会議を行うこととなった。何か思い付いたら、いつものグループチャットに送ってくれ!と言われて数日。ちらほらと各々がこんなのはどうだと企画の打診を行なっている最中、そのメッセージは送られてきた。


《『コトリバコ』を作ってみませんか?》


 メッセージの送り主は、配信用に何人か雇っているスタッフからのものだった。あまり知識があると新鮮なリアクションが撮れなくなるので、『コトリバコ』の詳細は調べない方針でお願いします!と続くメッセージ。すぐさまにシャチョウが、面白そうだなと食い付いた。コトリバコ、コトリバコと思考を巡らせる。決して明るくはないが、その単語はオカルトのジャンルで用いられているもののはずだ。オカルトの系統は今まで俺たちが行なってきた配信では扱ってこなかった。確かに、新ジャンルの開拓に繋がる提案だ。シャチョウの言葉に続いて、他のメンバーからも感触の良いリアクションが返ってくる。コトリバコ、コトリバコねぇと俺はもう一度その単語を反芻させた後に、そっといいねのスタンプに指を添えた。

《作りやすい環境の準備も整いました!》

 その言葉と共に送られてきたリンク先へと、俺は今向かっている。見慣れない土地でバスを降り、炎天下の中、地図を頼りに歩みを進める。とあるマンションの前に立ち、ゆっくりと顔を上げた。

「ここ、かぁ?」

 指定されたのはこのマンションの、1室。一見、何の変哲もないマンションに見えるのだがここが『コトリバコ』を作るには適した環境なのだという。俺以外のメンバーは既に先行して部屋へと向かっている。マンション前へと着いた旨を送信するが、既読の文字は付かない。

「…コトリバコ」

 コトリバコねぇ、と小さな引っ掛かりを覚えながら俺はエントランスを潜った。


 指定された部屋の前に立つ。チャイムを鳴らしたが反応はなく、玄関の扉の鍵は開いているようだった。ゆっくりとドアノブに手を掛ける。扉の向こうに、広がっているのは黒。電気が通っていないのか、それともメンバーが俺を驚かせるために作り出した暗闇なのか。スマホのライトで家の中を照らしながら、俺は一歩足を進めた。おーいと発したその声に返ってくる声はない。土間には靴が並んでいなかった。もう一度、おーいと声に出しながら靴を履いたまま部屋の中へと進む。マンションの外装は比較的新しいものに見えたが、この部屋の作りは木造のようだ。一歩、また一歩と進める度にぎしぎしと廊下が軋む。足元から響く音だけが暗闇の中に、響く。あまりの静寂に、もしかしてまだ俺以外この部屋には来ていないのか?と疑問が湧くが、玄関の鍵は開いていた。暑さとは違う汗がじんわりと湧く。もう一度、おーいと姿の見えない先駆者に向けて声をかけようとした瞬間、突如光が差し込んだ。おわっ、と思わず洩らした声におっ?と聞き覚えのある声がする。

「やっと、着いたのか」

 と俺に笑いかけてくるのはシャチョウ。暗くて気が付かなかったがどうやら歩いていた廊下の右側に部屋があり、その部屋から出てきたシャチョウと偶々鉢合わせる形になったようだ。社長の持っているライトによって眩く照らされている俺に、お疲れ様〜!と声がかかった。

「レポート無事に出せた?」

 と先ほどの部屋から顔を覗かせたのは配信メンバーの1人である、アイリだ。そしてその声に続くようにお疲れ様ですと声がする。小さく頭を下げるその人は

「………いや、誰?」

 俺の言葉にわはは!と楽しそうな声が上がった。ふふ、と洩すアイリの手にはよく見るとカメラが握られている。ハハ、と続く笑い声にいやだから誰?と俺が呟くとシャチョウは紹介するよと言って小さく笑った。

「彼の名前はヨシダさん。この部屋の先住民だ」


「えっと、つまり、どういうこと?」

 シャチョウ達が居たのは、小さな空間だった。今は何も置かれていないが、本来は物置部屋として機能する空間なのだろう。決して広くはないその場所に、4人でぎゅうぎゅう詰めになりながら話を聞く。シャチョウ達の話を纏めると、こうだ。俺を除いた配信メンバーでこのマンションに訪れた。その時既に玄関の鍵は開いており、撮影スタッフが先に到着しているのだろうとメンバーは考えた。部屋の中は真っ暗だったため、今の俺と同じように携帯のライトを用いながら壁伝いに歩みを進め、やっとの思いで広い空間に辿り着いた。リビングだと思われるその空間で一息つこうと思ったところ、そこにこのヨシダという男が座っていたのだという。

「…どっきり?」

 そう零した俺にシャチョウは小さく眉を下げながら首を傾げる。

「ヨシダさん曰く、お付き合いしている彼女さんにこの部屋に呼び出されたらしいよ」

 彼女、とその言葉を繰り返した俺に補足のようにシャチョウが呟く。

「そう、キャバ嬢の彼女」

 シャチョウの言葉に照れたようにヨシダさんは頬を掻く。

「話があるからこの部屋に来て欲しいと言われまして…」

 なので後ほど彼女もここに来るはずです、とヨシダさんは言う。

「ちなみに、ヨシダさんはいつこの部屋に?」

「4時間くらい、前でしょうか」

 緊張のあまり予定よりも早く着いてしまって、と笑うヨシダさん。彼が到着した時既に鍵は開いていたらしい。

「…ちなみに約束の時間は、何時?」

「2時間くらい前、ですね」

 彼女は遅刻癖があるので、と続く言葉。やっぱりどっきり?と尋ねた俺に先ほどよりも大きくシャチョウが首を傾げた。

「そう言えば、キヨカは?」

 この場にいないメンバーの名前を紡いだ俺に、シャチョウがその指を暗闇の先へと向ける。

「あいつはあっちで撮影の準備中」

「その間に私達は、このマンションの部屋の素材撮影をしてたの」

 得体の知れない男を残しておくわけにもいかないからヨシダさんも一緒にな、とシャチョウは笑う。シャチョウがライトで空間を照らし、アイリがカメラを回していたようだ。撮影、とその言葉を聞いて俺は慌てて携帯電話へと目を向けた。

「あ、マナーモードにしてなかったんでしょ」

「してなかったです」

 以前も撮影中に通知音を鳴らし、NGを出したことがある。同じ轍を踏む前で良かった、そう胸を撫で下ろしながらマナーモードへと切り替えたその瞬間、俺はあることに気が付いた。電波状況が、圏外になっている。こんな街中なのに?と浮かぶ疑問。なぁ、これと顔を上げようとした途端、ふっと辺りが再び真っ暗になった。そして響く、ゴトンという鈍い音。わっ、と短く上がった声はアイリのものだ。えっ、と響いた驚嘆はヨシダさんものだろう。シャチョウの声は、続かなかった。ライトを向けると、そこにシャチョウの姿はない。先ほどまでシャチョウが立っていたその場所に携帯電話だけを残し、忽然と彼は姿を消した。

「…シャチョウ?」

 そう零した瞬間、どこからか小さく叫び声が上がった。聞き覚えのあるこの声は

「キヨカのものだわ」

 駆け出したアイリの背をライトで照らしながら追いかける。リビングだと思われる開けた大きな空間のその先に、キヨカの姿はあった。


「キヨカ!」

 どうしたの?大丈夫!?と駆け寄るアイリに、キヨカがゆっくりと振り返る。

「アイリ…うん、大丈夫」

 ごめんね、わたし、びっくりしちゃってと呟くキヨカに何があったの?と問いが飛ぶ。小さく俯くキヨカ。向けられた彼女の視線のその先には1匹の猫がいた。ライトで照らされているその毛皮の色は白、黒、茶。三毛猫のようだ。なんだぁ、猫と安堵したように声を洩らしたアイリにキヨカが言った。

「死んでるの、この子」

 でもわたし、さっきこの子と目が合って、と徐々に弱くなっていくその語尾。

「カメラのね、設置準備をしていて。そのレンズ越しにこの猫と目が合った、気がして。びっくりして、声を上げちゃったの。振り返ったらここで、この子が丸くなっていて。手を伸ばしてみたら、冷たくて」

 でも確かにわたし、と混乱したように言葉を紡ぐキヨカ。大丈夫か?と声をかけた俺にキヨカはその顔を上げるとあれ、もう、着いてたんだと口に出しゆっくりと辺りを見渡す。そして、小さく首を傾げてシャチョウは?とそう呟いた。


「シャチョウが、消えた?」

 どういうこと?と響いたその問いかけに続く声はない。

「やっぱりさ、これ、どっきりなんだよ」

 シャチョウも仕掛け人だったんだ、きっと、そう言う俺に2人は小さく目を細めた。

「だって、そうじゃないと色々説明がつかないだろ」

「それはそう、だけど」

 キヨカがそう答えた直後、くしゅんと小さな破裂音がした。ご、ごめん、とアイリが謝罪の言葉を口にする。

「ちょっと、この部屋寒くって…っしゅん!」

 ごめん!とくしゃみ混じりにそう言うアイリにヨシダさんは、もし良かったら僕の上着を着てくださいと言って自身のアウターを脱いだ。えっ、とアイリは一瞬困惑の色を覗かせたがもう一度くしゅんと響かせたその後に、それじゃあと小さく頭を下げて彼の手からアウターを受け取った。上着を身に纏ったアイリに目を向けると

「最近の子はオシャレさんだから、寒い日でも薄着な人が多いですよね」

 僕の彼女もそうなんです、と言ってヨシダさんは微笑む。その言葉にあはは、と渇いた声が湧いた。

「寒いって言っても今、夏だし。このくらいは普通だよ」

「アイリにしては今日、着込んでる方だよな」

 肩とか背中とか出てないし、そんな俺の言葉にキヨカは笑ってヨシダさんは大きく目を見開いた。えぇ?と驚いたように声を洩らし、ヨシダさんは言う。皆さん、何を言っているんですか、と。

「今が夏、だなんて。外は大雪だったでしょう?」


 その言葉に今度はこちらが驚く番だった。ヨシダさんが、嘘や冗談を言っているようには感じられない。だけれど、外が、大雪?俺は確かに炎天下の中、ここまで歩いてきたはずだ。それに俺たちは、明日から夏休みを控えている。キヨカとアイリ、2人と無言で顔を見合わせた。どういうこと、とぽつり零した声はどちらのものだったのだろうか。訪れた沈黙を打ち破ったのは、()()()だった。


「ンギャッ、ウンギャアーーッッ!!」


 突如響いたその劈かんばかりの慟哭に、びくりと皆が身体を揺らす。すぐ近くから聞こえてくるその声に反射的に辺りを見渡すと、目を疑うような光景が飛び込んできた。理解のできないその奇妙な風景に、ははっと口元が引き攣るのが分かる。

「…あー、えっと、ここで新メンバーの登場です」

 そう洩らした俺に、その場の視線が一斉に集まる。震えながら向けた指先はキヨカのすぐ近く。つい先ほどまで三毛猫の遺体が丸まっていたその場所に、今は確かに、小さな赤子が寝転がっていた。


「ねぇっ、どういうこと!?」

 何が起こっているのよこれ!とアイリが叫び声を上げる。意味が分からないんだけど!!と響く絶叫、その隣でヨシダさんも顔を青ざめている。

「…スタッフ!どこかに隠れているんだろ!!」

 シャチョウも、出てこいよ!と暗闇に向かって怒声を放ってみるも、自身の声が反響するばかりで求めていた声や顔が覗くことはない。おいっ!と声を荒げる俺の横で、キヨカはそっとその赤子に向けて手を伸ばした。響く慟哭に小さく眉を顰めながら大丈夫、大丈夫だよとキヨカは囁き、その赤子を抱きしめる。

「弟が、小さかった時を思い出すなぁ」

 大丈夫、大丈夫だからねと赤子を宥めるキヨカ。優しくその小さな身体を揺らしながらキヨカはあの、とヨシダさんに声をかけた。

「ヨシダさん、は『コトリバコ』って知っていますか?」

「『コトリバコ』?」

 何ですかそれ?と不思議そうな表情を浮かべたヨシダさんに、そうですよねとキヨカは呟く。

「そう、ですよね」

 と噛み締めるように言葉を紡ぐキヨカに、アイリが不思議そうに彼女の名前を呼んだ。

「どうか、したの?何か、知ってるの!?」

 その問いかけにキヨカはねぇ、と小さく目を伏せて言った。2人は『コトリバコ』が何か知ってる?と。


 『コトリバコ』、と改めてその言葉を反芻させる。『コトリバコ』とは

「何か、オカルト的な、ものだってことは」

 俺の回答にそうなの?とアイリが眉を顰める。

「私は、何も知らないわ。言葉の響き的に、小鳥が何か、関係しているんだろうなと思っていたんだけど」

 違うの?と尋ねるアイリにキヨカは小さく微笑んで、首を横に振るう。気が付くと、その号泣は止んでいた。わたしもね、特別詳しいわけじゃあないんだけれどとキヨカがゆっくり口を開く。

「小鳥の箱、ではなく子供を取る箱でコトリバコ。『コトリバコ』はね、呪具なのよ」

 呪具、とアイリがその単語を繰り返す。そう、呪具とキヨカは頷いて静かに言葉を続けていく。

「木箱にね、子供の身体の一部とメスの動物の一部を入れるの。そして、蓋をする。その木箱が『コトリバコ』。『コトリバコ』は呪具で、それを持たされた人の周りの人間が死んでいくの。その効力は女の人と子供にしか発揮されない…そんな感じだったはず」

 そう、わたしも詳しいわけじゃあないのとキヨカはその言葉を繰り返し、悲しそうに言った。

「もう、死んでるわこの子」

 さっきまであんなに泣き叫んでたのが嘘みたい、と口にして小さく細められる双眸。その赤子をそっと床へと降ろして、おかしいと思ったのよとキヨカは言う。

「怪異って、時代と共に変化するらしいの。だから、今回の『コトリバコ』もきっとわたしが想定しているものとは違うんだって。そう考えていたの、そう、信じていたのよ」

 まぁ『コトリバコ』は怪異とは少し違うかもしれないけど、と自嘲気味な笑みが浮かべられる。だって、そうじゃないとおかしいじゃない、と続く言葉。

「『コトリバコ』を作るって、何よ。『コトリバコ』は呪具、呪具なのよ?呪具を作るって、そんなの」

 そんなの!と吐き出すように放たれたその声は震えていた。

「誰よ、誰?そうよ、そもそも誰なのよ!こんなことを言い出したのは、『コトリバコ』を作ろうなんてふざけたことを言い出したのは!こんなっ、こんな!ふざけた、あぁ本当に、こんなにふざけた馬鹿なことを提案したのは誰なのよ!」

 響き渡るその絶叫に待って?と小さく絞り出されたような声がした。声の主は、アイリだ。

「、ってる」

「え?」

 上手く聞き取ることのできなかったその言葉に耳を傾けると、アイリは手の中の携帯電話を俺たちへと向けた。そして、言う。

「なく、なってる」

「…何が、だ?」

 俺の問いかけに、アイリは答えた。全部よ、と。

「私も、思い出せなくて。誰がこんなことを言い出したのか。何故か、上手く、思い出せなくて!確かめようと思って開いたの、確かめようと思って、開いたのに!全部、全部ない!全部、なくなっている!この住所へのリンク先も、『コトリバコ』を作りましょうなんて提案も、それに関するやり取りも、全部!」

 全部、なくなってるの!とアイリが叫んだその直後、暗闇の向こうからガタリとそう音がした。咄嗟に、4人で顔を見合わせる。言葉はなくともきっと皆、理解していた。近くに何かがいる。そしてきっと、それは人間ではない、と。木造の部屋、猫と赤子の遺体、『コトリバコ』。『コトリバコ』を作りやすい環境の準備が整った、そんなメッセージを思い出し直感的に俺は思う。あぁ、俺たちは『コトリバコ』を作るために、この場所に呼ばれたのだ、と。


「…っていう、夢を見たんだ」

 撮影用の装飾が施されたワンルーム。そこに集うメンバーに俺はつい先日、見た悪夢についてを語った。今は7月の頭、窓の外からは眩しい太陽が覗いている。この場にまだシャチョウの姿はない。今日の配信のための買い出しに行っているのだという。

「怪異は時代によって変化するって言葉を聞いて、思ったんだよな俺。あのマンションの1室が、『コトリバコ』としての役割を果たしていたんじゃあないのかなって」

 アイスを食べながら話を聞いていた、アイリとキヨカは無言で俺を見つめている。

「今、成人は18歳になっているけれど昔は20歳だっただろ?そして俺たちは皆19歳。まじない換算にすると俺たちは今、子供なのかな」

 もし子供として扱われるのなら『コトリバコ』の効力は俺達にもあるのだろうか。そしてもし、子供として扱われるのなら俺達は『コトリバコ』の材料としての資質があるのではないだろうか。

「夢の中で俺達は『コトリバコ』になるために、あの部屋に呼ばれたんじゃあないのかなって」

 思うんだ、とそこまで言ってはっとした。2人の顔色が良くないことに、今更ながらに俺は気が付く。まずい、怖がらせすぎたようだ。えっと、と俺は呟いてそ、それでさぁと話題を変える。

「俺の見た夢、結構怖かったと思うんだ!だからさ、AIに《怖い夢の話》をいくつか作らせてさ、どれが人間が実際に見た夢でどれがAIが作った夢かを当てる企画とかどうかなぁって俺、思うんだけど」

 2人はどう思う?と一息で告げたその直後、ねぇとそう小さく名前を呼ばれた。俺を呼ぶ声は、2つ分。え?と小さくアイリとキヨカがそれぞれ洩す。もしかして、とどちらとも言わずそう呟いてあのね、とゆっくり唇を開いた。

「私もね、見たのその夢」

「実は、わたしも」

 え?と零した驚嘆に目の前の表情が、曇っていく。それって、と無意識のうちにそう言葉を紡いだ瞬間

「お、もう皆揃ってるな!」

 お疲れー!と元気の良い、場違いとも言えるその声が響いた。ジュース片手に現れたシャチョウは、部屋をぐるりと見渡すと俺達の名前をそれぞれ呼んで

「今日は、皆に提案があるんだ!」

 と声高らかに宣言をする。そして


「新しいジャンルに挑戦しよう!」


 挑戦していこうぜ、とそうどこかで見た覚えのある楽しそうな笑顔で言った。




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