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モテ男じゃなきゃ許されないほどの奇妙な修羅場は残念ながら非モテの俺でした。

簡単日記

上市の悲鳴が聞こえてきたので近寄ると川に落ちていました。

ずぶ濡れだったのでボランティアを中断して帰ることにしました。

帰りに出会った佳奈姐の提案により上市を家に誘いシャワーを浴びせることにしました。


 私事で大変申し訳ないのですが、今俺の家で美少女がシャワーを浴びています。

 なぜこうなったかは以下略。

 現在の状況だけ説明すると上市を家まで連れてきてシャワーを浴びさせているんだが、なんというか一言で言うなら複雑な気持ちだ。今まで女子を家に招いてシャワーを浴びさせるなんて憧れこそあれ、一度として経験がなかったのにこんな短期間で二人の女子にシャワーを浴びさせていることだけみれば喜ばしいことなんだろうけど、その内訳が従妹と腐れ縁というなんとも俺らしい残念なわけで、それでも少しはどこか嬉しい気持ちになってしまっている。言ってみれば身内からバレンタインデーに貰ったチョコをカウントに入れているような感じに近い。

 ともあれそんなおそらくは誰も興味がないことを考えながらラファの時とはまた違う緊張をしながら居間で正座待機をしている。

 あと言っておくがラファのときのようなラッキースケベ的なことは一切していないし、するつもりもないし、フラグでもない。

 とにかく今の俺に出来ることは煩悩を打ち消しながら正座待機し続けることだけ……、しまった! 着替えのジャージを貸すのを忘れてた! 一応名誉のために言っておくが決してわざとではない。

 このままだと上市は着替えがないので、バスタオルを体に巻いた状態で脱衣所を出ることに……、正直少し見てみたい気もしなくはないがもし本当にそうなってその姿を見てしまったら、これから気まずくてまとも話せる気がしない。

 それだけは避けないといけないので急いで自分の部屋に行きタンスからジャージを一着とって脱衣所に走り、戸に手を掛ける。

「(おっと、あぶない、あぶない、このまま勢いで開けたら上市が風呂場から出ていたなんてパターンが佳奈姐にやらされたギャルゲーにもあったな、リアルでそんなことあるはずがないとは思うが慎重になるに越したことは無い)」

 同じようなミスをしてたまるかと思いながら俺は戸に耳を当てる。この光景だけ見られたら確実に変態だがこれは上市と鉢合わせ無いようにするため、言わば正義のためだから決してやましいことをしているわけではない。

 謎のフォローしつつも中の様子を確認するとちゃんとシャワー音が聞こえてくる。

「よしっ、まだ上がっていないようだ、今のうちに」

 上市に気づかれないように戸を静かに開けて脱衣所に入るといきなり目に入ったのは脱ぎ捨ててあった上市の制服と下着だった。

「(見てない、俺は何も見てない、かわいい花柄の下着なんて全然見ていない)」

 女子の下着に詳しいわけじゃないがおおよそ女子高生が身につけるような柄と言うよりは中学生と言うか……いや、俺はそんな物は見てないだから子供っぽいんじゃないか? とか、いや、上市の体型を考えると似合っているのでは? とか考える必要はないんだ。俺は自分の中でそう言い訳をしながら急いでジャージを置いて脱衣所を後にした。

「はぁ」

 居間で座る俺は精神的な疲れと多少の罪悪感から小さなため息を漏らしていると、階段をゆっくりと降りてくる音が聞こえてくる。

「宏直よ、わちはお腹が空いたぞ」

 居間の戸を気怠そうに開けた地味なスウェット姿のラファが目元を擦り、さながらわがままなお嬢様のように食事を所望してくる。

「……おはよう、ラファ」

「おはようなのじゃ、それより宏直ぁ、早く朝食を」

「朝食って、どっちかって言うと昼だけどな」

 すでに10時を過ぎている時計を見ながら呆れつつもラファの腹を満たすために台所へ行き食事を作ろうとすると自分の腹が鳴ったのでついでに上市含め自分達の分も作り始める。

「はい、おまたせ」

 20分掛からずに居間へ帰って来た俺はトレーに乗せてきた料理をテーブルに並べる。

「……宏直よ、わちは確かにお腹が空いたとは言ったが、こんなに出されても食べきれんぞ」

「俺も腹減ったから三人分作ってきたんだよ」

「三人? 師匠でも来るのか?」

 ラファが可愛く首を傾げながらチャーハンを頬張ると、廊下をドタドタと走る音が聞こえたかと思うと居間の戸が勢いよく開き、ブカブカなジャージの上着だけを着た上市が顔を赤くして恥ずかしそうに前かがみになり、下部が隠れるようにジャージを下に引っ張りながら居間に入ってきた。

「ちょっと! なんで着替えがジャージの上着だ、け……」

 怒った口調で最初こそ勢いは良かったが段々と声が小さくなっていき、しまいには何かに驚いたかのように目をパチパチとさせながら言葉を失ったようだ。

「(しまった、焦っていたからズボンのほうを取り損ねていたのか、全然気づかなかった、どうやって謝れば)」

 とりあえず謝らないと上市にジャージの上着だけ貸して生足を堪能しようと思っている変態野郎だと勘違いされてしまうどころか、殺される。

「悪い、焦っていてズボンを――」

「誰じゃ、この女は!」

「誰よ、その女は!」

 俺の謝罪&釈明が終わる前にラファと上市が互いに指を指し、俺を睨みながら同時にそう言った。

「(えっ、なにこの展開)」

 俺はこの状況に困惑するしかなかった。

 だってそうだろう美少女が二人いて怒り交じりの声で互いに『この女誰と』聞かれるなんて、二次元でならハーレム展開で嬉しいんだろうが三次元の場合、浮気現場を見つかったかのようなこの殺伐とした空気、やましいことをしたわけでもないのに、この空気のせいで嫌な汗が頬を伝う。

 俺にはなぜ二人がこんな雰囲気を出しているかわからなかった。

 俺がギャルゲーの主人公なら理由は簡単で二人が俺に惚れているからだろうが、残念ながら俺はギャルゲーの主人公じゃないし、そもそもそんなフラグを立てた覚えもない。

 そんなことを思っている間にも二人は互いを威嚇するように睨み合っていたのでとりあえず二人の間に入り互いの紹介をすることにした。

「えっと、この子は射水 ラファって言って俺の従妹なんだ」

「い、従妹! そんなのありえない、こんな日本人離れした、かわいい金髪の従妹が宏にいるなんて絶対に嘘!」

「確かに信じられないかもしれないけど正真正銘の従妹だ、ラファの容姿が日本人らしくないのはラファがハーフだからで」

 上市にラファのことを紹介したが全く信用されず以前疑惑の目で俺を見てくるがとりあえず俺はそれをスルーし今度はラファに上市を紹介してみる。

「この子は上市 英梨、俺のクラスメートだよ」

「……見たところ風呂上りのようじゃが、このカワイイ『ただの』クラスメートを風呂に入れて宏直はいったい何をしようと思っていたのかのぉ?」

 ラファは怒りを堪えながらなぜか『ただの』を強調して嫌味っぽい口調で俺にジト目を向ける。

「いや、委員会の仕事を手伝っている途中に上市が川に落ちて寒そうだったからシャワーを貸していただけで――」

「委員会の手伝い? そうか、そういうことなのじゃな、このわちのことをほおっておいて朝からその女に会いにいっておったのじゃな!」

「いや、上市には借りがあったから、って、別に俺が誰と会おうがラファには関係ないだろ? とにかく、さっき言ったとおり俺にやましい気持ちはない」

「やましい気持ちがないのにもかかわらず、宏直はただのクラスメートにあんなハレンチでマニアックな格好をさせる変態従兄と言うことじゃな?」

 堂々と潔白を証明した俺に対してジト目のまま問い詰めてくるラファは風呂上りに一回り大きめのジャージの上着だけを彼氏に借りて、言わば彼シャツのような姿になっている上市を指差す。

「ちがっ、あれは――」

「なんじゃ? あの者が自らあの格好になったのか? だとしたらその者は師匠が教えてくれた痴女という奴じゃな?」

「なっ、誰が痴女よ!」

「どこから見ても……、んっ?」

 上市の様子を見て何かに感づきサッとすばやくしゃがみ込んだラファは上市のことを下から見上げるような格好になる。

「なっ、なにしてんのよ!」

「おぬし、まさかとは思うが……パンツをはいておらぬのではないのか?」

 その瞬間、なんとも言えない空気が張り詰めるのだった。


ここまで読んで頂きありがとうございます。

ブクマ登録&アクセス数増加ありがとうございます。

すごく励みになっています。

今週ももう一本投稿する予定ですので引き続きよろしくお願いいたします。

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