グレン殿下の側近視点。
名前間違っていました。誤字報告ありがとうございます。書き直しました。
私はグレン殿下の側近の1人です。長い間殿下の妃が見付からず、殿下自身も興味を示す事もなく時だけが過ぎて行った。心配した陛下がおばば様に尋ねひとつの予言を殿下に授けて旅に私達は出た。
「本当に見つかるんでしょうか?」
あの方の予言は、ほとんど外れた事はない。
「おばば様の言う事に間違いはない。必ず見つかる」
陛下から殿下の側近として新しく付けられた私達は、中々見付からない花嫁探しの旅が続いています。1度目の旅に出た人達は気の毒な為に殿下の側から外されました。見付ける事が出来ないのかと諦めかけて、何度も全員が挫けそうになった時に現れたのがジーナ様でした。私達の救世主です。婚約者が居ますが長く待たせてしまう所を助けてもらったのです。
「ジーナ様が見付かって良かったです。早く王都に戻りましょう」
「殿下の執着凄かったな。だが、これで国も安泰だ。陛下もお喜びになるだろう」
私達はこれで殿下も幸せになれると喜んでいたが、思わぬ所で障害が発生した。昔殿下の所為で不幸になった魔女に復讐されたのだ。ジーナ様を連れ去られた。
あれは、殿下が悪かったのだがそれとこれとは別の話だ。待ちに待った人に逃げられた殿下の気持ちを思うと、声を掛けるのも難しいくらい落ち込んでいる。
「……殿下」
「手がかりは見つかったのか?」
「いや、あたりは付けているがそこに居るかは分からない」
探すしかない!殿下の為に。
ジーナ様のいらした部屋に佇む殿下の強い眼差しを 見て思った。ジーナ様を取り戻しに行かれるのだろう。
「行くぞ!ジーナを探しに行く!」
「はい!殿下。お伴します」
「では、私は旅の準備をしてきます」
ジーナ様探しの旅にでました。割と早くジーナ様のいる場所が分かったのですが、すでに魔女の策略によりジーナ様が獣族に嫁がれてました。しかし、殿下も私達も簡単に諦める事などできません。王家の血筋を絶やすなど我々には許されません。
「ジーナは私のだ!返せ!」
ドドッーン!バァン!!殿下が魔法を放ちますが、魔法を障壁ではね返されました。くぅ!殿下と互角か上ですか!信じられない!
「俺の妻になった。返すもんか!」
それから、負けた殿下は暇を作ってここに来ては、ドカドカ魔法のやり合いをしています。周りの地形が変わりました。すざましい魔法の攻撃で小石と土埃が周りに舞って落ちてきます。洗濯物が汚れるとジーナ様に言われて2人とも落ち込んでました。
「ジーナ様を返せ!王子妃になられる方だ!」
殿下のお付きである私達も頑張ってはみるのですが殿下の役に立てず悔し涙に濡れる日々が続きました。
「ジーナは渡さん!俺と永遠に一緒だ!」
後ろ足で蹴り飛ばされて落ちた衝撃で土の中に埋もれました。
「アンジェロ君!好き」
ジーナ様の声が聞こえてきます。横で地面にめり込んだ状態に成って殿下がブツブツ言ってます。お気の毒です。
「……ジーナ、絶対諦めないぞ」
殿下の気持ちを思うと胸が潰れそうです。
「殿下、お手伝いします」
「鬱陶しい!早く帰れ!」
数年後ジーナ様が獣人似の男の子数人お生みになられました。ふさふさの耳付き子犬です。その次の年ジーナ様に似た女の赤ちゃんが生まれて10年立ちました。よちよち歩きができる様になって私達が戦っている姿を眺めているのを見かけました。
ある日ぼろぼろにされた殿下の側に少女がやって来ます。
「大丈夫?お母さんが好きなの?お父さんのだから戦って勝っても無理だよ」
どうやら諦める様に言いに来た様です。
「ん?似てる……彼女の子供か?」
「そうだよ。私がお嫁さんになってあげる。だからプレゼントちょうだい」
殿下が笑ってます。久し振りに殿下の笑顔を見ました。首を傾げながら何故笑われたのか疑問の様でした。
「何が良い?私に何を望む?」
何故か殿下の晴れ晴れな顔に安心しています。苦しい顔の殿下をこれ以上私達は見たくないのです。
「美味しい果物がいいわ。お菓子でもいいわよ」
子供らしいお願いに、殿下の笑みが増す増す深く楽しそうに変化していきました。
「くくく、そうだな。今度は君に会いに来よう」
にっこり笑って少女が殿下に話し掛けてます。
「私の名前はエリーゼよ。貴方は?」
「グレンだ。そう呼んでくれエリーゼ」
「うん!グレンよろしくね!」
少女の笑顔に今度こそ殿下が幸せになれる予感がします。新たなバトルを始めました。前と違うのは少女の応援があると言う事。王となった陛下の、苦しい顔を見ないで済む事です。
「ジーナの子を渡せ!今度こそ嫁にする!」
「可愛い娘をお前になどやれるか!」
しかし、少女の母親のジーナ様が勘違いしている様です。しばらくして森から少女とその家族の姿が消えました。連れて逃げられたと思います。
「エリーゼ絶対探し出す。待ってろ!」
森に陛下の声が響いてます。分かってます陛下!絶対見つけましょう。捜索を始めて数ヶ月後に見つける事が出来ました。驚いた事にあの獣がグラアーシエンの王子だった事が判明しました。こうなったら国に婚姻を申し込むしかないです。
我が国に憧れの王妃様を!!スローガンに城全体が一丸となりグラアーシエンからのいい返事をもらう為の交渉に力が入ってます。ありとあらゆる手段を講じ、なんとかエリーゼ様を獲得出来ました。
「エリーゼ!迎えに来たぞ!」
「グレン〜!遅いよ!」
盛大な結婚式の後、城の中で仲睦まじい2人の姿に皆癒されます。王妃様になったエリーゼ様に、メロメロで幸せそうな王の姿に春を感じます。私達の旅も皆の努力も無駄じゃなかった。
「グレン〜!ありがとう!このドレス素敵だわ」
王妃様になったエリーゼ様に、山の様なプレゼントをする陛下に皆で呆れつつ日々が続いてます。重苦しかった王城に、笑い声が響き渡る幸せを全員が感じています。
次の年生まれた世嗣ぎの王子に、笑みを浮かべ幸せに満ち足りた王国はきっともっと栄えるでしょう。ただ、5歳になった王子殿下は、どうも陛下にそっくりで王妃様の様な、お妃様を見つけるのだと今から張り切ってます。行く末が不安になるのは気のせいでしょうか?
「お父様!僕、お母様の様なお妃様を絶対もらうから、お父様みたいに旅に行きたい!」
王子殿下の無邪気なお願いに陛下は嬉しそうです。陛下!許可しないでください!お付きの者の婚期が遅れてしまいます!
「ひゃひゃ、親子2代の嫁探しだの〜」
お止めくださいおばば様!本当になってしまいます!私達の息子達も同じ目に合いそうです。