Ep.1 独りの世界
青空が嫌いだった。
綺麗で透き通っていてそれを押し付けてくるように感じるから
太陽が嫌いだった。
燦々と輝く光は人の心にずかずかと入り込んでぐちゃぐちゃに溶かしていくから
でもそんな綺麗で輝いている青空と太陽の下、何もかもを嘘で塗り固めて自己愛にまみれツラツラと綺麗事ばかりを並べる大人が嫌いだった。
人が嫌いだった
10月21日(水)曜日
入室時間 11:15
日向 遥
慣れた手つきでバインダーに挟まれたプリントに書き記していく。
(そろそろかな)
ぴぴぴっぴぴぴび
体温計のアラームが鳴る。
登校前に測ってきた体温と0.1しか変わらない数値
を書き、すぐ下の症状欄の『その他』に丸をする
「日向くんおはよ、今日はどうする?」
「先生おはようございます、今日も帰ります。これ書いておいたので、では。」
「あ、これプリントね、気をつけてね」
「さようなら」
苗字しか知らない保健室の先生と最低限の会話だけして登校日数だけ稼いで帰る。
チャイムの音も生徒とも出くわさない計算された時間でいつものように帰路に着く。
いわゆる保健室登校だ
ただいま
そう心の中で唱えて着替える。
そのあとは絵を描いて小説を書いて、色々。
これが僕の昼のルーティンだ
家族は母1人、そんな母も仕事の関係で一緒に暮らしてないので一人暮らしである。
家賃とか生活費とか諸々は母と母方の祖父母から援助をもらっている。
母は僕の今の状況に特に何も干渉しようとしてこない。
生きててくれればいいそうだ。
僕としてはありがたい
夕食はささっと作ったカレー、
スマホを見ながら洗い物まで済ませる
時間は午後12時
ガチャっと玄関の扉を閉める。
ジャージにポロシャツで外へ出る
ヘッドホンで好きなアーティストの曲を聴きながら夜の静かな街を歩き始める。
暗く闇を街灯が照らす。
そんな中をびかびかと照らすそれはコンビニだ
24時間営業で店員はいるが一人、しかもセルフレジが置いてあるので人と関わらないでいいのだ
「あれ?あぁ最悪」
ヘッドホンの充電が切れた。
静かな世界の中で自分だけの音を堪能するのが好きだったのに
そう思いながらいつものアイス(パ◯コみたいな二つがくっついているやつ)をレジに持っていく
「は?最悪」
財布も忘れた。
今日の楽しみが一つ減った
はぁぁと大きなため息をついてアイスを返しにいく。
ばんっ
「ウワッ!」
何かにぶつかった
壁?いや、こんなとこに壁なんて、、
「ごめんなさい!」
?人、?
「あ、ごめんなさい気づかなくて」
人とぶつかったらしい。このコンビニでこの時間店員以外を見たことがなかったからすごく驚いた
というかすっごい背が高い、それに、、イケメンだ
「あれ?ふはっあはは」
なんだ急にこの人は
「あぁごめんごめん、手に持ってるのそれ俺も好きなんだよね、ほら」
手に持ってる物を見せてくる。
買おうとしてたものと一緒だった
「あ、そうなんですね」
「てかどうしたの?買わないの?それ」
「え?あぁ財布忘れちゃって」
「なるほどね、じゃあこれ半分あげよっか?」
「は?」
「いや俺元々2本とも1人で食べようと思ってたし、君もそうじゃない?」
なんて失礼な。
だが、それはそれとして、貰えるものは貰っておこう
「まぁそうですけど、いいんですか?」
「全然いいよ、ぶつかっちゃったし」
それは別に不慮の事故じゃ、と思ったが、黙っておこう
店を出て壁にもたれながら待つ
「はい、お待たせ」
いつもは1人で2本食べるそれの半分を渡される。
「ありがとうございます」
「おれ、望月景、君は?」
ごく自然にそう聴きながらアイスを開ける
「え?」
「いやせっかくなら自己紹介でもと思って」
「はぁ、遥です。」
「ん?苗字は?」
苗字は嫌いだ。
僕とは正反対で、僕の欠けてる部分を突きつけてくるから。
「あぁまぁ別に言わなくていいよ」
「え?」
「苗字知らなくても関係ないでしょ、はるか君って呼んでいい?」
「どうぞ」
変な人だ
「これありがとうございました。では」
「あぁちょっと待ってよ遥君」
なに?代金でも請求されんの?
「この時間ってよくここくるの?」
「え?まぁそうですね」
「俺もよく来るんだよね〜昼にだけど、いやここいいよね綺麗だし、客少ないけど店員もほぼいないし」
「あの、さっきからなんですか?」
「ん?いや〜?なんでもない。じゃあまたね」
そういってアイスを咥えながら歩いて行った。
なんだあの人もう会うこともないでしょ普通に考えて
がつがつ話しかけてきて、僕はああいう人、、、
嫌い?いや、別に嫌悪感はなかったな。
でも変な人だった、それは間違いない
まあいっか
いつもは2本あるアイスの片方だけを咥えながら静かで暗い独りの帰り道を歩いて行った。
最後まで読んでいただきありがとうございました
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ではまた次回!




