4 お買い物(前編)
歩き出して5分程、近くのバス停に到着した。
「あーーー疲れた……あれ、バス乗るの?」
と僕は質問する。
「だって駅までなるの体力が持ちそうに無いし」
「流石にそこまで体力無いわけ…いや無いですね……」
なんか自分で言ってて悲しくなって来た。
(5分歩くだけでこれって高校の通学すらできるか怪しいぞ…)と心の中で言う。
「次のバスは10分後だけど、なるどうする?」
ひかりは時刻表に指を添わせながら振り向く。
「休憩でお願いします……」
僕は後ろにあるベンチによろよろと腰掛ける。やっぱりいつもより目線が低くて違和感しかないし、やけにひかりが高身長に見える。男の時は僕の方が身長高かったのに、と勝手に敗北感を感じていた。
すると、ひかりが隣に座って来た。そして、僕の方に顔を向けとんでもないことを言い出す。
「明日は体力付けるためにランニング10kmね!」
満面の笑み。頭がイかれているとしか思えない発言に、困惑しながらも僕は言葉を返す。
「えっと…え?10km?なぜ?」
「そりゃなるの体力が無さすぎるからに決まってるじゃん。」
「ちなみに拒否って出来たり?」
「もちろん強制ですが?なにか文句でも?」
正直言って走った後に3日は筋肉痛で苦しむ事が確定しているので絶対にやりたくないが、明らかに体力が足りない事は自覚しているので
「やりますよ…このままだと通学も出来なさそうだし…」
「よし、じゃあ朝5時起きだから!しっかり起きろよ!」
「早過ぎるって……」
と、僕の言葉と同時にバスがこちらに走ってくる音が聞こえた。
「あ、バス来たよ」
「えと…バスってどう乗るんだっけ…」
「そこから!?」
◇
何とかバスに乗り込むことが出来た。車内はそれほど混んでおらず、乗客は数名ポツポツといるくらいだった。
そんなこんなで、次の停留所は目的であった駅の東口、ひょいっとひかりが手を伸ばし、次止まりますのボタンを押す。
「これ押すの久しぶりだなー、バスなんて滅多に乗らないし。」
確かに、僕も小さい頃はこのボタン押すのが楽しみだったし、先に誰かに押されたら泣いてた記憶がある。
「帰りは僕が押す」
と言った所で、バスが駅に到着する。
僕達は席を立ち、手前側にある出口の方へと移動する。
ひかりは先にICカードをタッチして降りたが、僕はそんなの持っていないので現金である。
「はい、440円ね」
「アッ、はい、えっと…これでお願いします」
「丁度ね、どうも。」
何とか支払いを終えて降り、財布をポケットにしまう。ひかり達以外の人と話したのは数年ぶりなのでめちゃくちゃコミュ障を発揮していたが、気にしだしたら夜中一人反省会が始まるので頭の奥に押し込む。
「なんか…昔と変わった?こんな大きい建物無かったような」
「そうだね、これは2年前位には出来たかな。行ってみる?」
「いや、今日はいいよ…」
実の所、僕は早く服だけ買ってさっさと帰りたいのだ。勉強しないとだし、これからどうするかも考えないといけないってのにこいつは…
「あ!これとか食べたい!」
と言ってひかりが見せてきたスマホの画面には、オシャレで美味しそうなパスタのお店、ついでに高そうである。どうやら昼飯まで食べる事を想定しているらしいので、ワンちゃん夕方頃まで帰れない説が濃厚。
「美味しそうだけど…いくらするのこれ…」
「うーんと、ランチタイム1300円だって」
「高いのか安いのか…今の基準が分からないから何とも言えないけど、僕的にパスタ1300円は高いと思うんですが…」
もちろん外食なんて数年食べていないので、標準の値段が分からないのだ。いや、たまにひかりのお母さんが買ってくるテイクアウトがあるので、食べてはいるか。
「スープとドリンクも付いてるから標準的な値段じゃないかな?駅前のショッピングモールの中って事も考えると尚更ね。」
「そうなんだ…」
僕はてっきり800円位が相場だと思っていたが、最近の物価の上昇は怖いものである。
「じゃあお昼はここって事で!さあ行くぞー!」
「勝手に決められてるし…」
◇
「ねぇひかり…なんか、めっちゃ見られてる気がするんだけど…」
「うん、私も薄々感じてた。やっぱなる美少女なんだよ!美、少、女!それに!そんな服装だから余計注目集めちゃってるんだよきっと!」
「えぇ……」
まあ確かに、若干オーバーサイズのジャージを着て歩いてる美少女がいたら僕もつい見てしまうかもしれない。けどさあ!見すぎだろ!見すぎだろお前ら!しかもどこ見てんだよ!首の若干下見てるよなあ!全部分かるぞ!そして別にデカくもねーし小さくもないだろ!とか脳内で突っ込んでいると
「君達何歳?、LI〇E交換しない?」
と若いチャラそうな男の人が話しかけてくる。
(え…これナンパってやつ?僕中身引きこもり陰キャの男やぞ…?)
「あーすいません、そう言うのやってないんで、じゃ。」
ひかりがそう言いながらさっさと僕の手を引っ張って行く。
「ちょ!?痛い痛い!」
こうして僕は流れるがままに付いていくのだった。




