説得
翌日王宮へ行ってみると宣言した私に、レオもアーサーも反対してきた。
「向こうはあからさまにお前を狙うと言って来たんだぞ、それなのに自分から飛び込む奴がどこにいる!?」
「そうだよ、ディア。危険だよ。向こうが何を考えてディアに婚約を申し入れて来たのか理由が判明してからでも動くのは遅くないよ。無策で突っ走ると、待ち構えていた相手に頭からパックリ頂かれてしまうよ。そうしたら来年の今頃、君はカーラ帝国の皇太子妃だ。そんな危険を冒す位なら、今すぐ帰国した方が良い。それとも何かい?本心ではそれを望んでいるから行くと決めた訳じゃあないだろうね」
最後は鋭い目で問われ、ブンブンと手も顔も横に振る。
滅相もない。
「いくら相手が美形でも出会ってすぐに結婚を申し込まれてOKする女性なんてこの世にいないわよ。何か裏があるに違いないって怪しむのが普通よ」
前世だったら結婚詐欺を疑う所ね。
「それに皇太子殿下の口調も私に惚れてるようには感じられなかったわ。あのルックスで女性に不自由してるわけがないでしょうし、誰彼構わず口説いてるような軽い人にも見えなかった。だから余計意味が分からなくて気になるし、それに何より皇太子殿下があの時予言がどうちゃらって言っていたのがどうにも引っかかるのよ」
本当はレオに任せるのが1番安全なのは分かってる。
レオの事だから、どんな方法を使ってでも情報を手に入れようとするだろう。
でも、昨夜ガブリエーレ夫人はなぜ皇太子に婚約者がいないのか分からないと言っていた。この国で上位の地位に当たる侯爵夫人でさえ分からないと。他国の者である私に本当のことを言わなかったという可能性もあるけれど、あの素直で思ったことをなんでも口に出してしまいそうなガブリエーレ夫人があの時嘘を吐いていたとは思えない。
つまり、それだけ皇家と神殿は秘密を保持しているという事だ。多分大本に乗り込まない限り、こちらの欲しい情報は手に入らないだろう。
「危なくなりそうだったら、皇太子をぶん殴ってでもこっちに戻って来るわ。とにかく今は少しでも相手の情報を手に入れないと。大丈夫よ、向こうだって嫌がっている私をいきなり拉致監禁するような非道な真似はしないでしょう。ここは1つ私に任せて頂戴」
ドン!と胸を叩いて豪語する。
「ダメだ、ディア。皇族が一旦手に入れようと思ったら何をするか分からない。取り返しのつかない目に合う前に帰国すべきだ」
さすがレオ。国のトップに君臨する一族の思考が良くお分かりで。
綺麗ごとで済まないのが王や皇帝の仕事ですものね。
きっとレオも私の知らないところで、本人の精神に良くない事を今まで色々やって来たんでしょうね。
私にはそんな姿絶対見せないけれど。
アーサーにはきっと色々と甘えているんだろうな。
「ねえ、レオ。もし予言で何らかの理由があって私がこの国に必要だと出ていた場合、私がインディア国に帰国したくらいでこの国の皇帝が諦めると思う?」
「それは・・・」
「下手したらインディア国から誘拐されて再びここへ連れて来られるかも知れないわよ」
「そんなことはさせないよ。ディアに護衛を付けるし、なんならカーラ帝国と縁を切っても良い」
「現実的じゃないわよ、レオ。自分でも分かっているでしょう?理由が分からずにただ怯えて逃げ帰るよりも、立ち向かって真実を掴んだ方が案外『え、そんな理由だったの?』みたいな感じになるかも知れないじゃない。求めよ、さらば与えられんってね」
「誰の言葉?」
レオがそんな言葉知らないと言ってくる。
そうね、地球の神様の言葉だったわ。
「決めたのか?」
アーサーが私に尋ねてくる。
私も力強く頷く。
「そうか、じゃあ突っ走れ」
「アーサー!」
レオがアーサーをとがめる。
「こんな顔をしたディアを止められた事が今まで1度でもあったか?レオ。止めたってどうせこいつは一人で突っ走る。だったら俺たちの目の届く範囲内で走ってくれた方が良い。クラウディア、好きに突っ走れ。お前がどう結果を出そうが、俺たちが必ず後ろで受け止めてやるから」
アーサー!ありがとう!
二人がバックにいてくれるならこんなに心強いことはないわ。
レオも私達の様子を見て諦めたように息を吐いた。
「様子見!今日はただの様子見だからね。私達ももちろん付いて行くし、一人で勝手な行動を絶対に取らないように。もし破ったら強制的に国に連れ帰るからね」
OK、レオ!私だって異国で無茶はしないわよ。
三人で心を合わせたところで、皇宮から迎えの使者がやってきた。
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