24:ZC-33S
「こいつはひでぇ………みんな死んでしまっているな………」
「彼らも感染者だったのでしょうか………いえ、感染していないだけで保護されるべき人々だったのでしょう………」
物陰から、エクスたちは兵士によって掃討される住民を見た。
これがカワサワが選んだ選択肢であり、軍はそれに従っているのだと。
正義なんてものはありはしない。
生きるか死ぬか………生きるために兵士たちは行動を起こした。
それだけの話なのだ。
「いくよ………時間を無駄にしてはいけないわ、エクス、あなた大人なんだからしっかりしてよ」
「あっ、ああ………そうだよな、ごめん」
ミホに叱られながらエクスは非常口のロックを解除した。
研究者か軍人でないとこの非常口は開かないように設定されていたようだが、エクスの拾った研究者のIDカードが役に立ったようだ。
カードを認証するとドアが開錠されて出口の通路は一直線に伸びている。
エクス、アヤ、ミホは走り始める。
アヤがダウンロードしたPDFファイルによれば、この先に非常口と駐車場があるはずだ。
走る、走る、走る。
三人は武器を構えた状態で走っていく。
その後ろから叫び声と共に、大勢の感染者達が雪崩の如く押し寄せてきている。
「くそっ、奴ら湧き出やがったか!!!」
「湧き出たというよりも、私たちを追ってきているように見えますが………」
「二人とも無駄口はいいから走って!!!」
300メートルほど全力疾走で駆けた先に待っていたのは駐車場。
避難民が先山に設置された専用の駐車場に車を保管していたようだ。
これらの車は全て何時でも稼働できるように、全ての車にキーが付けられていた。
もし、キーが付いていなかったらエクスたちは駐車場で感染者の群れに呑まれていただろう。
エクスは咄嗟にシルバーのコンパクトカーに飛び乗って、それに続くようにアヤとミホが車の中に入る。
「よし、こいつはオートマだな。これなら俺でも運転できるはずだ。エンジンの始動はこのボタンか………」
「ちょっと、こんな小さい車で大丈夫なの?あいつらに襲われたらひとたまりもないわよ」
「大丈夫だ、俺に考えがあるから………あと、この駐車場の出口は狭いはずだ。大きい軍用車両だとつっかえるかもしれん、それじゃあ、いくぞ」
円状の始動ボタンを押すと、エンジンが唸りをあげる。
直列四気筒ターボエンジンを搭載しているだけあって、その音はまさに狼の咆哮のような音だ。
低速回転と小回りを重視した足回りなだけあって、その俊敏さは他のスポーツカーを寄せ付けないだろう。
この車は性能の割に格安で販売され、ヨーロッパの小型スポーツカーと対抗できるだけのポテンシャルを秘めている。
ZC-33Sの名称で世に送り出されたコンパクトスポーツカーなのだ。
遅いわけがない。
感染者との距離が狭まる中で、エクス達を乗せた車は一気に加速して駐車場を駆けまわる。
タイヤが空回りして白煙を出しながら駐車場を疾走していく。
駐車している車にぶつけたり、フロントガラスを割ったりとお構いなしに追いかけてくる感染者達、それをよそにエクスは車のアクセスを踏み込んでハンドルから手を放さない。
駐車場の自動開閉口が開くと同時に、ZC-33Sは外の世界へと飛び出していく。
こうしてエクスたちは保護施設から抜け出すことに成功したのだ。
勿論、その様子はカワサワによって見られていたのだが…。




