20:淡路島
感染者達が通り過ぎて行き、エクスとミホは安堵してホッと息を吐いた。
もし銃声が小さい音であれば、エクスたちの場所目掛けて襲いかかってきたかもしれないからだ。
そう考えるとエクスの行った行為はリスクの高いものであった。
しかし、目的地にたどり着いて人を助けることができたので、リターンは確実についたかもしれない。
「さて、とりあえず部屋の周りは大丈夫そうだ…アヤとミホさんも一緒に設計図の捜索を頼む、ここから脱出するのに必要だからな」
「分かりました、では私は戸棚のファイルを調べてみます」
「…設計図といっても何処にあるのかわからないじゃない…仕方ないわね、私もやればいいんでしょ」
エクスはアヤとミホにお願いをした。
アヤは早速戸棚の中にあるプリント類やファイルの中を探し始めた。
ミホも渋々アヤの手伝いを始めた。
ミホは部屋に置かれているパソコンを起動してパソコンの中にデータがないか調べる。
その間にエクスも本棚や引き出しの中を探しだし、その中に女性の際どい水着姿のいかがわしい写真集があったのを見て、そっと本棚の中に戻したりと、それぞれ役割を果たして設計図の捜索を行った。
感染者達の気配に気を付けながら大きな音を出さないように慎重に作業を始めてから30分が経過した頃、アヤとエクスは部屋戸棚にあるプリント類とファイルの中、本棚や机の引き出しなどすべて調べたが、それらはすべて空振りに終わったようであった。
「…A区画内にあるゴミ処理場と地下の最下層のメタン発酵施設までの図面はありましたが…地上へ脱出する経路に役立つ設計図はありませんでした。申し訳ございません………」
「いや、こっちも駄目だったよ………やはりかなり機密情報にもなるから設計図は無いのかな………せめて地上への経路が分かる地図が欲しかったんだがなぁ………ミホさんはどうだった?何か見つかったか?」
パソコンと睨めっこをしているミホを後ろからのぞき込むエクスとアヤ。
ミホが眺めていたのはPDFファイルの中身であった。
その中身をエクスが黙読してみると、かなり興味深いことが書かれていることに気が付いたのだ。
エクス同様に気が付いたアヤはミホに代わってパソコンを操作する。
パソコンのUSBカードリッジに腕から取り出した接続式のUSBを使ってパソコンに差し込むとファイルの文章を取得し、解析し始める。
すると、アヤは思わず驚きの声を上げた。
「………これはっ………こんな事まで想定していたのですか………この場所は………」
「アヤ、このPDFには一体何が書かれていたんだ?」
「………この施設が作られた目的と施設の詳細を記した図面などが入っていました………それと同時に、この施設の場所なども判明致しました。それが良いニュースなのか悪いニュースなのかはわかりませんが………この保護施設は、最初から生物災害を想定して作られていたという事なのですよ、それも作られたのは半世紀以上前の1980年代からです」
アヤがPDFファイルを取得してから判明した事実はアヤだけでなく、エクスとミホにも衝撃をもたらした。
1980年代………日本がバブル経済真っ只中で、景気が良かった時代のころから建設されていたらしい。
さらにアヤは解析の結果をエクスとアヤに報告する。
「当時の日本政府の厚生省高官であったカワサワ・ヨウイチロウ氏が建設に携わったそうです、ちょうど今この施設の最高責任者であるカワサワ・タカヒコ氏の父親にあたる方です。その方がアメリカの技術者を引き抜いて核攻撃にも耐え、その後の環境汚染から身を守るための地下施設「アメノイワト」を作ったそうです………冷戦時代であったので共産主義陣営の大国であるソビエト連邦の攻撃で生物兵器が使われる可能性も考慮したのでしょう………そして、アメノイワトが作られた場所なのですが………ここはどうやら兵庫県淡路島の洲本市内の先山と呼ばれる山の付近にあるとのことです………」




