15:時計
日付が過ぎ、何か起こった際に直ぐに対処できるように靴を履いたままベッドで横になってエクスは仮眠をとっていた。
起きていた時間はわからないが、少なくとも10時間以上は起きていたのではないだろうか?
保護施設は地下にあるらしく、部屋を灯している照明器具はLED製のライトだ。
アヤはエクスの体調を考慮して、休めるうちに休んだほうがいいですよと助言を行った。
「エクスさん、お休みできるうちにゆっくりと休んだほうがいいですよ。私が待機しておりますのでご心配には及びません。何かあれば直ぐに起こしますから…」
「いいのか?」
「ええ、私はロボットですので睡眠を取る必要はありません。エクスさんが寝ているときは私がこの部屋を守りますから、お身体の体調を崩してしまえば元も子もないですよ…」
「そっか…うん、分かった。じゃあ、お言葉に甘えてそうさせてもらうよ」
エクスはアヤの言葉に甘えて、目を閉じる。
部屋の灯りもアヤが調整して必要最低限の明るさ調整をしてくれたのだ。
コーヒーを飲んだとはいえ、眠りが来るのにそう長い時間は必要無かった。
目をつぶっているうちに、意識が遠のいて夢の中に浸かっていく。
エクスの見た夢、夢の中でエクスは一本道の真ん中に立っていた。
……◇……
周囲は濃い霧に覆われていて、視界から5メートル先を見るのがやっとであり、非常に見通しの悪い道路であった。
片側2車線の道路、法的速度50キロを示すマークがそれぞれ記されているだけの道だ。
誰も道路を走っていない。
だが、道路にはゴミが散乱しており、中には変形した消火器まである。
道路の横にあるのは建物だが、全部窓やドアがシャッターで閉まっており、建物の間にある隙間も障害物によって塞がれている。
自分の後ろにはコンクリート製の大きな壁が設置されていた。
壁には身内や知り合いを探す張り紙が所狭しと張り付けられており、ただならぬ様相を呈している。
これより先に行くことはできないようだ。
エクスは試しに正面の方に歩くことにした。
歩いてすぐに、車が横転している現場にたどり着いた。
横転している車は白色のワンボックスカーであり、そのワンボックスカーの下敷きになって死んだと思われる老人の腕が車からはみ出て、その下には黒く凝固した血が見受けられる状態である。
ワンボックスカーの車内は荒らされており、窓ガラスは内側から壊されて車内には首が180度回転して絶命しているセーラー服を着た女子高生の変わり果てた姿もあった。
そして、その女子高生には両腕が強引な力で切断されたような跡があり、明らかに刃物による殺傷ではないとエクスは感じ取った。
(この死体………えげつない殺された方をしているな………あの化け物達が殺したのか?)
さらに道を進んでいくと、電柱に縄を首に掛けられて吊るされた死体があちこちで見受けられた。
吊るされている死体の多くが顔面から血を流して絶命しており、中には手足が切り落とされたものまである。
エクスが見ている光景は外の世界のものなのだろうか?
その先の道路には軍の検問所が置かれていたのだが、この検問所は既に全滅し、残されているのは空の薬莢と捨てられたT89式アサルトライフル、仮説テントとコンクリートブロックに乗り捨てられた16式装甲車だ。
エクスがその中でも興味を示したのは仮説テントであった。
仮説テントに入ると、テーブルに壊された無線機、そして軍の通達文が散乱している状態であった。
そのうちテーブルに置かれていた一枚をエクスは見てみる。
『総理大臣及び国防大臣による承諾を経て、国民保護法に基づく国家緊急権及び緊急事態条項を発動する。
・人権保護規定の停止
・生物災害に基づいて流言飛語を行っている者や軍の活動を妨害する者、極めて危険な殺人病感染者への武力行使の許可を全部隊に通達
・部隊内で感染者が出た場合には直ちに処理を行うこと
・全国各所の主要都市及び政令指定都市に対し、戒厳令を発令する
・全部隊が混乱せずに秩序維持に努めて治安を守ることに全力で務べし』
軍があのウイルスを完全に封じ込めをしようとはしたが、どうやら出来なかったようだ。
これは夢であるからエクスの見ている光景が現実で見た光景かもしれないし、あくまでエクスの脳が想像している外の世界の光景を疑似的に再現しているのかもしれない。
いずれにしても、エクスがテントを出た直後にエクスは夢から醒めたのであった。




