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あなたの本心は隠しても無駄です  作者: 弓原もい
7.最後の任務を成功させろ!
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特務部隊 最後の任務4

 作戦決行当日。作戦行動は夜だが、私達は誰ともなしに第一会議室に集まった。


「いよいよだ」


 キースの言葉に全員頷く。


「アイレーン王子の企みを阻止し、キューレ王子が皇帝になる助けをするぞ」


「はい!」


 全員で声を揃える。緊張はしているが、不安はない。私達なら必ず成し遂げられると信じている。


 私とキース、ブルーム、イオル、ルシェは午後から王宮警備に入れてもらっている。訓練場で待機するレイリーズとベルロイは王都の見回りをする予定だ。


「リコル」


 王宮に赴く時間になった時、レイリーズに声をかけられた。


「頼みましたよ」


 その顔には信頼が滲んでいる。


「そっちもね」


「焼け焦げないように気をつけます」


「俺もなるべくレイリーズは燃やさないように気をつけるよ」


 ベルロイがそう言って苦笑いをする。


「本当に気をつけてね、レイ」


「はい、ブルームさんも」


 ブルームは名残惜しそうな視線をレイリーズに向けてから、


「行こう」


 と、言って5人で王宮に向かった。王宮ではルシェとイオルがゼノ隊長と共にキューレ王子の近くの警備を、私とキースとブルームは入り口付近の警備だ。イオルの通信の石は私がしっかり預かって、別れる。


 私ははじめて王宮に入ったが、流石に豪華だ。赤い絨毯と、きらびやかなシャンデリアに目がチカチカとしてくる。


 モクロ皇帝は定刻通りに王宮に入られた。私は頭を垂れながらもチラリと見ると、恰幅の良い豪華な格好をしたおじさんだった。キックス皇帝とキューレ王子、アイレーン王子が揃って出迎える。


「わざわざご足労いただきありがとうございます」


 などという挨拶を交わし、皇帝達は王宮の奥へ入っていく。これから歓談をした後、豪華な晩餐会の予定だ。その間、私達はすることもなく、ただここで不審者が現れないか警備を続ける。晩餐会の直前くらいに交代の時間となり、隙を見て裏庭に待機する予定だ。


「ずっと立って黙ってるの疲れちゃった」


 ただでさえ、今日は王宮へ来るというので正装をしている。休憩になり解放された安堵で、私は腕を回す。


「まだ時間はあるし、王宮内の兵士用食堂で簡単に食事を済ませようか」


 私達3人は並んで歩く。すると、前方から立派な鎧に身を包んだ人物が歩いてきた。


「キース」


 ビブリオだ。私達は身体を固くしてお辞儀をする。


「父上……」


「お前」


 鋭い目をキースに向けてくる。私達がここにいるということはビブリオは知らなかったはずだ。そして、そこから推測されるのは、私達がキューレ王子側についた可能性があるということ。


 チラリとキースを見るとビブリオの鋭い視線に怯まず、しっかりと見つめ返していた。


「急ぎますので、失礼致します」


 固い声でそう言って、ビブリオの横を通る。私とブルームもそれに続く。


「どうなるのか、わかっているのか」


 私達はビブリオの少し後ろで足を止める。


「俺は自分のすべき選択をしただけです」


 キースはそう言い返して、再び歩き出す。後ろを振り返ると、ビブリオも振り返らぬまま歩いていってしまった。


「キースがお父上に反抗するなんて、初めてのことじゃないの?」


「そうかもな」


 私は不安になってキースを見上げる。特に動揺しているような気配はないけれど……


「大丈夫だよ」


 キースは私の視線に気がついていつもと同じようにそう言うと、私の頭を撫でた。お父さんのこと、吹っ切れたのだろうか。恩人である父親を裏切ること、心が痛まないはずがない。それでもキースが強く笑うので、安心した。


***


 時間が来て、私達は裏庭の目立たないところに待機する。晩餐会は終わって、モクロ皇帝も部屋で休んでいる頃合いだ。


 私はキースとブルームと一緒にベルロイが起こすはずの爆発を待っている。


「ねぇ、どうやって皇帝の部屋に侵入するの? いい加減に教えてくれてもいいと思うんだけど」


 何度聞いても教えてくれない侵入方法。キースとブルームは顔を見合わせてニヤリと笑う。


「まぁ、見てのお楽しみってことで」


「何それ」


 私はむっと口を尖らせる。


「俺とキースで養成所時代に考えた必殺技なんだ」


「必殺技?」


 2人はニヤリと楽しそうに笑う。まぁ、ちゃんと侵入できるならいいけど。男の子って必殺技とか好きよね。


「何だか、2人とこうして夜に外にいると、出会った時のことを思い出すね」


「ミョルンで野盗をやった時のことか」


「そうそう」


 あの時、初めて2人の連携を見て、圧倒的な強さに感心したんだったっけ。


「随分、昔のことに感じるね」


 ブルームが目を細めて笑う。


「リコルちゃんは能力もあんななのに、奥せず敵に挑んで、何故か野盗のアジトまで突き止めて、不思議な子だと思ったよ」


「あの時、私の能力のこと疑ってたでしょ?」


「能力を疑ってたわけじゃないよ。どちらかと言うと、リコルちゃんはすべて知ってて、俺達を利用してるのかな、とか」


「野盗のアジトを調べ上げてたってこと? ないない」


「しょうがないじゃないか。まさかこんな能力だなんて思ってもみなかったし」


 くっくっと声を潜めて笑う。


「ブルームには疑われてるかもって思ってた。だから、ブルームが怖かったの」


「再会した時も、随分と嫌われていたもんだと思ったもんね」


「それがなくても印象は悪かったわよ? いきなりナンパしてくるんだもん」


「ブルームはいつもあんな感じだったからな」


 キースが苦笑する。


「キースだって私のことダメ五ってバカにしてきたから、印象は悪かったわよ」


「それは悪かったって」


「ははは」


 ブルームが笑って、私とキースも遅れて笑う。


「まさか、こんなことになるとは思わなかった」


「俺もだよ」


 キースが熱のこもった目で私を見る。一緒に戦う仲間になって、キースのことは男性として好きになった。そんなこと、まったく想像していなかったな。


「この任務が成功したら、みんなで揃ってキューレ班かもな」


「私は出世に興味ないんだけど」


「嫌でも拒否できないだろ」


 ブルームがしっかりと前を見る。


「何にしても、ここは始まりにすぎないな」


 そうだ。キューレ王子を皇帝にしたら私達は忙しくなるだろう。ここからが大変だ。私達だって、この任務を最後に縁が切れるとも思えない。


「軽く成功させないとな」


「当たり前だ」


 キースとブルームが笑い合う。そういえば、初めて会った時に2人の信頼関係を見て、羨ましく思ったんだったっけ。


「リコルも」


 2人が私を見る。その顔には、ちゃんと信頼の感情が浮かんでいる。


「うん」


 私もそれにちゃんと答える。


「必ず成功させよう」


 静かな夜を切り裂くボンっという大きな音がした。本当にすごい音だ。私達は頷き合って、ブルームが立ち上がる。


「おい! 爆発があったみたいだぞ!」


 大声を張り上げると、裏庭の兵士達がこちらへやってくる。


「あっちだ! ここは任せて、見に行ってきてくれ!」


「わかった!」


 兵士はいとも簡単に頷いて、緊迫した様子で駆けていく。


「行こう」


 私達はなるべく音を立てないように走る。部屋の下まで行くと、部屋からは灯りが漏れ出していた。


「よし、行くぞ」


 キースがそう言って私を抱える。


「わ、ちょ、ちょっと……」


「しっかり掴まってろ!」


 勢いに押されて、私はキースの腕にしがみつく。ブルームはいつの間にか詠唱を始めている。詠唱が終わり、ブルームがキースと目を合わせる。頷いて、キースは手を下にかざした。


「行くぞ!」


 瞬間、ボンッという小さな爆発音がして、私達は上に飛び上がった。


「!!?」


 飛んでる!? 飛んでる、というか飛び上がってる!? 私達はちょうど皇帝の部屋の少し上の高さまで飛び上がった。でも、これ、どうやって部屋に入るの!?


「ひっ」


 身体が落ちる感覚がして、思わずキースにしがみつく。お、落ちるよ!


 すると、ひんやりとした風が吹いてきた。見ると、皇帝の部屋のベランダから私達に向けて氷の道ができる。キースはそこに着地し、そのまま滑ってベランダへ着地した。


「どうだ?」


 キースが得意げな顔を浮かべる。


「俺の能力だけだと狙った場所に着地できないから、ブルームの氷で滑り台のようなものを作るんだ」


「こ、怖かったよ!」


 そっと下ろされたけれど、足がガクガクしている。


「なんだ!?」


 音に気がついてか、ブルームの周りに何人か兵士が集まってくるのが見えた。


「ブルーム!」


 しかし、ブルームの近くに兵士が辿り着く前に、ぱたぱたと倒れていく。上を見ると、塀の上の見張り台に人影が見えた。


「ルシェ、やるね」


「うかうかしてると俺達より強くなっちまいそうだ」


 キースも心なしか嬉しそうにそう言った。


「よし、行くぞ」

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