↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたの本心は隠しても無駄です  作者: 弓原もい
5.スパイを捕らえろ!
54/85

パリス地方にて スパイを捕らえよ4

 リークル神国から戻ってきたブルーム達とカンネで合流することになった。私達は宿でもう1泊し、カンネに向けて馬を走らせているところだ。


 キースとはあれからまともに口をきいていない。キースは何か言いたげな表情をしていたが、私が何も喋らないオーラを出したおかげで何も言ってくることはなかった。


 もし、キースに何か言われても説明できない。私は愛されるべき人間ではないから、もう愛さないでほしい、だなんて、告白もしていない相手から言われたら、キースも困ってしまうだろう。


 ブルーム達はリークル神国でちゃんと成果を上げていた。教会内で夜、神官達が薬物を使用する現場を押さえたということだ。


 神官達を問いただしたところ、薬物がユーロラン帝国から持ち込まれたものだということがわかり、その証拠となる帳簿をフレイ達に渡すことができた。ここからキャッセル家を追い詰められるかどうかは、フレイ達に任せることになる。


 カンネの街に着いた。ブルーム達とは宿で落ち合うことになっている。私はフードを深く深く被って足早に街を歩いて宿に向かった。


「リコル!」


 宿の部屋に入ると、リークル神国に行っていた5人が既に私達を待っていた。私を見ると、レイリーズが嬉しそうに声をあげた。私は嬉しい気持ちを抑えて、


「この街で私の名前を呼ばないで」


 と、低い声で告げた。レイリーズは私から漂う雰囲気に普段と違うものを感じたのだろう、神妙な面持ちで頷いた。


 簡単な挨拶を交わし、こちらで仕入れた情報を共有する。ダイス帝国からの巡礼者がソーケトルから不法に入国している可能性があること、それに守護兵団の兵士と馬車の御者が関わっていること。


「巡礼途中で不法入国、か。守護兵団が関わっているとなれば、それが一番簡単で確実な方法だろうな。しかし、そんなに堂々と入ってきているとは考えつかなかった」


 ブルームは腕を組んで唸った。


「不法入国してきたダイス帝国人を捕らえられれば、いよいよ黒幕も明らかになるな。一体誰が手引しているのやら……」


「核心に迫ることができますね」


「明日から早速ソーケトルで張り込みだ」


「人数は絞ったほうがいいかな?」


「そうしたいところだが、戦闘になる可能性が高い。既に入国しているダイス帝国人が加勢してくるかもしれないし、戦力は多いほうがいいな」


「じゃあイオルちゃんとリコルちゃん以外の……」


「私は行くよ」


 私はブルームの声を遮ってそう宣言する。私の身内の問題もある。待っているだけ、なんていうことはできない。


「わかった」


 キースは頷いてそれを承諾してくれた。


「ただ、後方で待機だ。リコルとイオルの側にはブルームを置く。2人はブルームから離れるな」


 ブルームは「任せて」と、笑顔で答えた。


「さて、今日は休もうか。久しぶりにキースとリコルちゃんに会えたんだ。ゆっくり話も聞かせてもらいたいね」


 先ほどまでと空気を変えてブルームが明るく提案する。


「私は別のところに泊まるから」


「え?」


 キース以外の全員が目を丸くして私を見る。


「言ってなかったけど、ここは私が生まれ育った街。いろいろと都合が悪いから姿を消させてもらう。朝には戻ってくるから」


 そう告げて私は立ち上がる。今日はアスモの診療所に身を寄せるつもりだ。


「待て、リコル。1人じゃ危ない」


「平気よ、1人じゃないから。あいつがいる」


 今はとにかくみんなから離れたい。


「だとしても、戦えるわけじゃないんだろ?」


「あそこに不用意に近づく人間はいないわ」


「道中だってどこで狙われてるかわからねえだろ」


「私はここで育ったのよ? そんなヘマはしないわ」


 なかなか引き下がらないキースに苛立ちを感じる。


「ダメだ。リコルは置かれてる状況をわかってるのか? 俺も行く」


「は?」


 キースとまたあの部屋で2人きりなんて堪えられない。それに……


 胸がじんわりと痛む。何でそんなに優しくしてくれるの? もうやめて。私はそんなことしてもらう人間じゃないのに。ここで死んだって私は……


「やめて。迷惑だから」


「リコルが攫われて迷惑するのはこっちなんだぞ」


「放っておけばいい」


「リコル……っ! お前何を……!」


「まぁまぁ2人共」


 見かねたブルームが私達の間に割って入る。私はキースを見ていられなくて目を逸した。苦しい。


 私だって馬鹿なことを言っているのはわかってる。だけど、どうしたらいいの? このままキースと一緒にいて守られ続けていたら、私は自分を許せなくなりそうだ。そんな甘えた場所にいていい人間じゃない。私は人殺しなんだから。


「それじゃあ私が一緒に行きます」


 声をあげたのはレイリーズだった。


「私は誰かに襲われてもリコを守れます。女ですから寝る部屋も同じにできますし、一緒にいても問題ないでしょう?」


「ダメだよ。あんな環境に女性を連れていけない」


「リコも女性じゃないですか」


 レイリーズが不敵に微笑む。ムッとした顔をしてもレイリーズは一切動じない。


「わかりました、いいですよ、1人で行っても。私は私で勝手にリコの後をつけさせてもらいますから。家に入れてもらえないのなら、外で1夜を過ごしますからね」


「ちょっと、レイ……」


「イオルも乗ったわ」


 横からイオルも口を挟んできた。


「どの道あたしはレイリーズと離れたら危なくて眠れないもの」


「そうですね、では2人でリコに着いていきましょう」


「勝手に……」


 私は半ば呆れて2人を見る。2人共どこか楽しそうに私を見ている。何で私の周りの人間はこうも……


「わかったわよ。その代わり、酷いベッドしかないからね?」


「外で過ごすよりは幾分もましですよ」


 勝ち誇った顔のレイリーズが朗らかに笑った。

●登場人物の見た目紹介


ゼノ・ウルスラ(46)

性別:男

身長175cm、茶色い瞳

第一守護兵団キューレ班隊長。

現在はスキンヘッド(ハゲ)だが、昔は鮮やかな赤い髪の毛の持ち主だった。

年齢を感じさせないがっちりとした体格は日々の訓練の賜物だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。