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あなたの本心は隠しても無駄です  作者: 弓原もい
4.ユーロラン帝国の闇
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フィデロ地方最大の街リルルート1

 翌日、すっきりと晴れ渡った空の下、私達はリルルートに向けて出発した。私の気持ちも晴れやかなのだが、一日経ってキースと顔を合わせると少し恥ずかしい。自分のすべてを知られてしまったこともあったし、キースに抱き締められた感触もまだ残っているような気がする。キースも同じなのか、私を見ても気まずそうに目を逸らすだけだった。


 キースは私の過去について誰にも言っていないようで、他のメンバーからの態度が変わることはなかった。女性陣も、昨夜目を腫らした私が部屋に戻ってきても見ないふりをしてくれて、普段通りに接してくれていた。


 ナンルムルから大きな通りに出ると、リルルートまでは整備された快適な道が続く。シーズンでないというのに巡礼に向かうのだろう、人がたくさん乗った馬車を何台も追い越した。


 休憩を挟んで夕方前にはリルルートに着いた。リルルートに入る入口は一つしかなく、馬車が検問を受けるための列を作っていて大々的な警備体制が轢かれているのがわかる。ここの検問も第四守護兵団が担当しているらしい。


 守護兵団の私達は列を抜かして検問を抜けると、リルルートは王都ほどではないものの広くて活気のある街だった。たくさんある宿の中から二部屋借りることができた。


 初日の今日はひとまずリークル神国へ入るためのお祓いの様子を見学しにいくことにした。お祓いは国境の前で行われているらしい。何しろ誰もリークル神国へ行ったことがないので自分の目で確認したかった。


 国境付近へ向かいながら、私はキャッセル家について考える。こんなに大きな街なら酒場に行けば情報が得られるかもしれない。


 国境に着くと遠くからでもわかる立派な門が立っていた。白いアーチ状の門で、立派な彫刻がその柱に装飾されている。


 門に辿り着く前に天幕が張られていてその前に兵士が立っている。そこに向かって馬車の行列ができていた。兵士だけではなく、見慣れない白いローブを羽織った人達も歩いている。あれがリークル神国の神官達のようだ。私達はその様子を少し離れたところから観察する。


「あそこで荷の簡単な確認と、お祓いが行われているんだ」


 ブルームが小声でそう教えてくれた。天幕が張られていて中が見えないが、荷の確認はユーロラン帝国の兵士が、お祓いはリークル神国の神官が行っているそうだ。


「街へ入るにも検問、国境前のここでも確認が行われているのなら、薬物がリークル神国に入る可能性は低いのでは?」


 レイリーズが小声でそう指摘した。


「いや、献上農家への信頼は絶大だ。検問が簡単になっていても不思議じゃない。むしろ彼らが注意して見ているのは人々が武具を持ち込まないかどうかだから」


「武器は持って入れないの?」


「もちろんだ。リークル神国内では武器はもちろん、能力・魔法の使用も禁止だよ」


「へぇ……」


 今は時間のせいもあるだろうが、並んでいる馬車は人を乗せた馬車ばかりだ。明日、献上品が通る時間にもう一度来て、その時間の差を確認する必要があるかもしれない。


 これ以上収穫がないと判断した私達はその場を離れた。


「さーて、今日は移動もあって疲れてるだろうし、もうこれで休もうか」


 ブルームがそう言うとイオルがはいはーい!と、手を挙げた。


「それじゃあ今日は全員で夕食食べませんか!?」


「どうする? キース」


「そうだな……まぁたまにはいいか」


 意外にもキースはその誘いを受け入れ、イオルが飛び上がって喜んだ。


「俺は酒が飲めるならどこでもいいです」


「酒、ね。俺達もたまには飲もうか」


 ルシェ以外の男達は酒を飲むようだ。


「リコはお酒は飲まないんですか?」


「もちろん飲んだことはあるけど、日常的には飲まないね。高いし。レイは?」


「私も興味がなくてほとんど飲みませんね。でも、たまには飲んでみてもいいかもしれません」


「いいなぁ」


 イオルがぷくっと頬を膨らませた。


「私はまだ飲めないから」


「成人年齢を引き下げてくれればいいのに」


 ルシェも不満そうだ。


「あんたは成人年齢下がったってまだまだでしょ?」


「イオルさんと3歳しか違いませんから!」


「10代の3歳差は結構大きいの!」


「違いありません! それを言ったらイオルさんとキースさんだって3歳差ですよ?」


「年上はありなのよっ!」


「都合良すぎます」


 イオルとルシェが小声でやり合っている。私からしたらどちらも大差ないと思う。


「じゃあここにしよう」


 ブルームの先導で私達は一軒のお酒が飲める食堂に入った。私はあんまりお酒を飲むつもりはなかったのだが、雰囲気的に飲むことになりそうだ。


 店に入り、料理とともにお酒も頼んだ。私とレイリーズはカクテル、キースとブルームはビール、ベルロイは聞いたこともない水のようなお酒を頼んでいた。アルコール濃度が高いらしい。好きと言うだけあって、どうやらベルロイはお酒に強いようだ。未成年のイオルとルシェはノンアルコールのカクテル。


「かんぱーい!」


 グラスが揃うと全員で乾杯する。カクテルを飲むと喉がかっと熱くなる。久しぶりの感覚だ。


「ぷはーっ!」


 ベルロイは本当に嬉しそうにお酒を飲んでいる。強いお酒だというのにグラスの半分を一気に飲んでしまっている。そんな風に飲むことができるベルロイを見ていると、お酒も悪くない気がしてくる。私もカクテルを飲み進めた。


「キースとブルームはお酒強いの?」


「うーん、まぁ普通だよね?」


「そうだな」


「昔は2人で飲むこともあったんだよ。最近は忙しくて飲めてなかったけどね」


 ブルームは嬉しそうにそう言いながらお酒を煽った。


「ブルームってキースのこと好きだよね」


「うん、そうだね」


「おい、何だそれは」


 キースが苦い顔をしている。


「じゃなきゃこんな人相の悪い男に近づかないよね」


「あはははは」


「おい、リコル」


 私はキースに睨まれてしまった。


「ブルームは何でキースに声かけようと思ったの?」


「無視すんな」


「うーん、何だろうね。面白そうって思ったのは覚えている」


 ブルームはそう言うと目を細めた。


「養成所での俺達の同期は大人しい人が多かったんだよね。真面目というか。そこに尖った男が現れてさ。どういう人なんだろうって気になるじゃん」


「怖くはなかったの?」


「全然? だってすごい能力持ってるすごい家の人だとしても年下だよ? 養成所じゃそんなの関係ないでしょ。むしろ、ここでしか仲良くなれないから、チャンスだって思ったよ」


 キースは何とも居心地の悪そうな顔をしているが、ブルームは嬉しそうだ。キースがブルームにだけ心を開いたのも、何となくわかる気がする。


 そんなことを話していると、突然逆側からの衝撃を感じた。振り返ると、


「ちょっとリコ~! リコばかりブルームさんと話して、ずるいです!」


 と、とろんとした目つきで言いながらレイリーズが私の腕に絡みついてきた。


「うわ、レイリーズさん、もう酔っ払ったんですか」


 ルシェが軽蔑したような顔を向けている。


「酔ってませんよ! まだ一杯しか飲んでないんですよ? ほら、リコも飲んで飲んで!」


 レイリーズが私のグラスを持ってぐいぐいと押し付けてくる。


「はいはい」


 やれやれ、と思いながらも、女の子の柔らかい身体がくっついてくるのは嫌な気分ではないかも。そういえば昨日のキースはごつごつしたしっかりとした身体で、それはそれで安心感があったな。


 私はそんなことを考えながら、勧められるままにカクテルを口に含んだ。


「ほら、一気! 一気!」


「めんどくさっ」


 前に座ったイオルがうんざりした表情でそう呟いた。


「レイがそんなにお酒弱いなんて知らなかったな」


「レイとはお酒飲みに行ったこと、ないの?」


「ないない」


 ブルームは苦笑していた。そういえば、ブルームは何でレイリーズとそんなに距離を取るんだろうな。


「おい、リコル。お前は酒、大丈夫だろうな?」


 キースが苦い顔で私を見た。


「え、うん。大丈夫でしょ」


 私がカクテルを空けると、レイリーズが自分の分と一緒に2杯目を頼んでいる。


「顔が赤くなって来てるぞ」


「え? そう?」


 自分の頬に手を当ててみるが、手袋をしているので体温がわからなかった。


「こんな風にはならないって」


「こんなってなんですか! ほら、リコ。2杯目が来ましたよ! 一緒に一気に飲みましょう~!」


 レイリーズがグラスを掲げたので、私もそれに合わせる。何だか楽しくなってきたぞ?

●能力紹介


ルシェの硬直能力

父親仕込みの硬直能力。

能力を弓に込めて放つと矢が刺さった位置から半径50cmの動く生物は拘束できる。

父親の方が能力の威力が強く硬直範囲は広いのだが、ルシェの方が矢の正確さがある。

ルシェの能力の威力が上がれば父親をも凌ぐ日が来るかもしれない。

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