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■第32話 早朝の出来事


 

 

ドルン・・・

 

 

早朝4時。


また眠れない夜を過ごした、リコ。

頭はぼうっとしてなんだかクラクラする。体も怠くてベッドから上半身を

起こすのもツラいくらいだ。

窓の外に微かに聞こえたエンジン音に、気怠そうにゆっくり立ちあがり

そっとレースのカーテンを開けた。

 

 

すると、

 

 

 

 『ぉ。起きたかー?』

 

  

 

窓のすぐ下にリュータの姿があった。ヘルメットを胸の前で抱える様に

持ち背中を丸めてバイクに跨って、にこやかにピースサインを向けて。

 

 

 

 『・・・ど、どうしたんですかっ??』

 

 

 

思い切り声が裏返った。ここ最近出した記憶がない自分の大きめな声に

リコ自身驚いて、思わず咳払いして喉の調子を今一度確かめる。

  

 

いつもリュータの突然の行動には驚かされてばかりいる。


前回も急に家に訪ねて来て、家族と一緒にご飯を食べたり花火をしたり、

正直なにを考えているのか全く分からない人だった。

 

 

リコがあからさまに困惑した表情を向けているというのに、そんな気配など

お構いなしにリュータは笑う。

  

 

 

 『あったかい格好して下りて来ーぉいっ!』

 

 

 

飄々としたその口調に、リコは困惑して口ごもる。

今日は平日で、あと数時間後には学校へ向かうバスに乗らなければなら

ないのだ。

 

  

 

 『リ、リュータさん・・・?


  ・・・今日って・・・ 休みの日じゃないですよ?』

 

 

 

曜日を勘違いでもしているのかと、どこか様子を伺うように気を遣い

ながら返したリコの言葉に、『知ってる。』と、さも当たり前のように

リュータは即答する。

 

  

『いいから早く来いってっ!!』 リュータが頬をクシャっと緩め口角を

最大限上げて悪戯っぽくニカっと笑った。

  

 

  

リュータに言われた通りジーンズにパーカーを羽織った姿で、静かに玄関

から出て来たリコ。しかし、今尚リュータの言動の意味が全く分からず

訝しげに眉根をひそめ、その足取りは不安の色が表れ中々前に進まない。


『ほいっ。』 リュータがバイクのハンドルに引っ掛けていたヘルメット

をリコに放るように渡す。

  

  

 

 『ぁ、あの・・・・・・。』

 

  

 

なにか言い掛けたリコの言葉を遮って、『ああ!かぶんの初めてか?』

リュータは可笑しそうにケラケラ笑いながら、ヘルメットの顎紐バックル

をカチリとはずし、喉元に指一本入る程度の適切な締め具合をレクチャー

しようとした。

 

 

リコは首を横に振り、リュータを手で遮る。

  

 

 

 『そ、そうじゃなくて・・・ ドコ行くんですか?


  ・・・私、学校があるんですけ・・・』  

 

 

 

グググ・・・

  

  

 

喋っている途中のリコを完全に無視して、無理矢理ヘルメットをかぶせ

ちょっと顔を斜めに寄せて覗き込むように、リコの顎下ベルトを留める。


そして、そのヘルメットのリコの頭をポンポンと軽く2回叩くと

 

 

 

 『ほいっ! 乗った乗ったーー!!』 

 

 

 

タンデムステップを引き出し、跨るリュータの後部座席へと顎で促した。

 

  

 

 『リュータさん・・・ 私、バイク乗るの初めてなの・・・


  ・・・どう、掴まったら・・・。』

 

  

 

後部座席に不安気にちょこんと座りそう呟くリコの両手首を、リュータ

はぐっと引っ張り自分の腰へ巻き付かせた。

 

 

 

 『はい。 出発進行~~~~っ!!!』

  

  

 

まだ朝靄が残る静かな街に、バイクの音が響き渡った。

 

 



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