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■第17話 動き出してしまった想い


 

 

  ♪~・・♪♪♫~・・・♫

 

 

静まり返った夜の住宅街。突如、リコのケータイが着信のメロディを奏で

慌ててカバンから騒がしいそれを取り出す。


それはよく耳にするラインではなく、メールが来た合図だった。

 

 

 

 ◆From:コーチャン先生


 ◆Title:お疲れちゃ~ん

 

 

 

 (ぇっ・・・ うそっ!!!


  こんなすぐに、メール・・・?!)

 

 

 

ケータイを両手で大切に包むように見つめる舞い上がったリコの隣で、

小さく小さくマナーモードの振動音がくぐもる。


リュータがお尻のポケットで震えるそれを手に取り、メールの送信相手を

チェックしてリコの浮かれる様子をチラッと横目で見た。

 

 

 

 『イマドキ、メール送ってくるヤツなんて一人しかいねぇし。

 

 

  ・・・コースケだろ?

 

 

  ったく、頑なにガラケー変えねぇんだよなぁ~・・・


  まぁ、アイツらしいよ・・・。』

 

 

 

コースケは、今夜5人全員にメールを一斉送信していた。

 

 

 

 ◆今日はほんとに楽しかった!!


  またこのメンバーで集まろうよ


  じゃ、おやすみ~

 

 

 

みんなで連絡先を交換し合ったその直後に送信したメッセージは自分一人

へだけ送られたのではないのはちょっと寂しいけれど、でもこんな些細な

気遣いでさえさり気なく出来てしまうコースケを、リコはやはり改めて素

敵だなと強く想ってしまう。

 

 

 

 (コーチャン先生・・・。)

 

 

 

ケータイを掴んだ手を胸に押し当てると、心臓の鼓動がコトリコトリと

薄く硬いアルミ合金に伝わり、たった数行の文章ですらじんわりと熱を

持って染み渡った。

 

 

 

 

 

リュータと二人、笑いながら喋っていたお陰であっという間に自宅へ到着

した。リュータに送ってもらったお礼を言って、リコは静かに家へ入る。


玄関内の小窓から外をのぞくと、更に坂道を上がってゆくリュータの背中

がどんどん小さくなっていった。

 

 

怒って居間からズンズンと小走りで駆けてきた母ハルコに小言を言われ、

リコは軽く謝りそれをいなしながら足早に2階の自室へ上がる。

 

 

窓を小さく開けっ放しにしていた部屋はちょっと肌寒かったが、レースの

カーテンを開けて満天の星空を見上げた。

今夜は星が降ってきそうなくらい、たくさん。

 

 

今日一日の出来事を、最初から最後まで思い返す。


ひと欠片も取りこぼすことの無いよう、大切に大切に胸にしまい込む。

ケータイを開き、コースケからの短いメールを読み返した。たった数行の

それが嬉しくて愛おしくてなんだか鼻の奥がツンと痛い。ほんのり熱を

おびた頬に、すっかり更けた夜のそよ風が心地よい。

 

 

 

 (コーチャン先生・・・ 次はいつ逢えるのかな・・・。)

 

 

 

リコは俯きながら、ケータイを握るその両手で胸をギュっと押さえた。


胸がキュンとなる痛がゆいような感覚を、生まれて初めて感じていた。

 

 

 


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