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ヒノモトの少女はセーラー服…

暑い、台風、雨

この季節は頭がおかしくなるデスね

10月なのに、いつまでこんな気候が続くのか…

深海に沈みながらもドンドン流されていく王顕、あれだけの事があったのに起きる事無く数時間が経った。

深海4200メートル、日の光のが届かない暗闇が支配する場所。

巨大魚がさ迷う深さ、王顕を餌として丸飲みにし、その魚をさらに巨大な深海魚が飲み込んだ。

深海魚の消化液は強力で、魚は一瞬で溶けて骨となり、中から王顕が出てきて目覚める。


「ん、あぁ、はぇ」


目を擦りながら、周りの確認。


「くっら、船の部屋じゃないよな、何か体も濡れてるし」


欲界の倉庫(たけじざいてん)から、特殊なランプを取り出す。

光明(こうみょう)ランプ”、洞窟、深海ダンジョンでの暗がりの特殊環境でダンジョン全てを照らせるランプ。

照らされた空間は広大で、壁は薄い赤で脈打っている。

そして周りには数え切れない程の骨が消化液に浮かんでいる。


「え、もしかして俺、何かの腹ん中か、はっ、他の奴等はどこだ!!」


周りを見渡しても、骨か胸の残骸があるのみ。

索敵を使うが、彼女らの反応はない。

こんどは他者の把握を使うと、王顕を飲み込んだ魚が分かった。

【ギガントシャーク】、レベル61のモンスターで【ワールド・インフィニティ】では、レベル200前後で無駄に耐久力とHPが高くて嫌われているモンスターだ。

王顕は嫌な予感で、冷や汗が止まらない。


「いや、あいつらのレベルならきっと溶けちゃいないはずだ、ならどこに…」


王顕は、ギガントシャークの中で拳を構える。

両腕を引いて、脇腹に拳を添える。


「雷撃…」


パリッパリパリパリ

王顕の体がピカピカ光り出し、拳から放電が始まる。


「山突き」


カァッガガガガガガ

強い光りと共に、雷の音が後からとてつもない音量で聞こえる。

”雷撃山突き”は、レベル145で覚えた武法。

突きだした両拳から蒼白い雷が放たれる。

ギガントシャークは腹の中から感電し、蒼白い雷は背中を突き破った。

さらに近くを泳いでいた魚やモンスターも、巻き添えをくらい真っ黒な炭になった。


「ブクブクブク」


とてつもない水圧だが、肉体に変化はない。

水面上に出るまで、一時間も掛からなかった。


「ダハァラァッシャァ!!」


目の前、数キロ先に陸地が見える。

とりあえず王顕は、テレポートを使いその場所に上陸した。

険しい岩場の岩壁の海岸に囲まれた島、海岸から少し歩けば草木が生えている。

王顕は1番大きな岩の上に座る。


「どうすっかな、あいつらを探すにしてもこの世界は広い…、索敵を使ってもこの島には居ないし、てか状況が分からなさ過ぎる、俺らは船ごとあの鮫に食われたの?、いやだったらあいつらも居ないとおかしいし、食われる前に脱出したにしても俺を置いて行くとわ思えないし………、あ~~~~分からんっ!!」

頭を両手でガリガリと()いて、その場に倒れこむ。

船の中だと油断しすぎたのか、また1人になってしまった。

空には海鳥が群れをなし、Vの字で飛んでいる。


「…」

(目的地をヒノモトのクシ島だ、あいつらが無事ならそこを目指すはずだ)


今は地図によるとアックウーノ大陸側の無人島の様だ。


「思ってたより移動してるな」


ザギィン!


「ツッ!」

「は?、ぬぉああぁ」


座り直していた王顕の首に、日本刀で斬りつけられた。

だが、その日本刀は(さや)に収まったままだ。

斬った方は、首を落とすどころか薄皮1枚傷をつけられない事に驚き、瞬時に3歩下がった。

王顕も索敵に反応なく背後を取られ、攻撃された事に驚き振り向きながら下がる。

だが、王顕の下がった方は、絶壁からの海だったのでそのまま海へと真っ逆さまに落ちていった。

落ちていく一瞬、見えたのは黒いセーラー服を着た少女だった。


「うがああああああ、ガッ、ぬおおおおおおおおおおおおおおおおお」


ザブウゥン

叫びながら頭から落ちていき、途中で尖った岩肌に頭をぶつけ、海に落水。

普通の人間なら、まず生きてはいないだろう。


「………」


セーラー服の少女は、海を(のぞ)き込んだ後、(きびす)を返し森の中へと消えていく。

王顕は数10分後に海から上がり、陸地に戻る。


「何だったんだ今の…、セーラー服って、確か【ワールド・インフィニティ】にもネタ装備であったけど…」


仲間達の事もあるが、今さっきの少女も十分気になっていた。

王顕は装備を変える。

不死身の英雄(ジークフーリト)”、イベント”悪竜の返り血”のボス【悪竜ファーブニル】の素材で作った防具。

黒と緑の服で両手両脚だけに鎧の一部が装備され、胸にはドラゴンを()した模様があしらわれ、背中にはドラゴンの牙と爪で菩提樹(ぼだいじゅ)の葉の形に()い付けられている。

効果は自動回復(オートヒーリング)の効果倍増、HP0になったとき1度だけHPを500回復して復活する。

怒れる竜殺し(グラムンク)”、ファーブニルで作られた武器。

140センチある細い大剣は、十字架のようにも見え、銀色の刃は振るう瞬間のみ蒼く光る。

効果は種族ドラゴン、龍に倍のダメージを与える。

そして相手がどこに居るか分からないのなら、王顕自身も気付かれないようにする為に暗殺者の面を着ける。


「さて、索敵によるとモンスターは島の反対側に集まってるな、まぁ彼女の反応は無いままだけど」


王顕は森を直進して、モンスターを探す事にした。

森の植物は熱帯雨林に生えていそうな物ばかり、たまに果実のなった木を見つけては、もぎ取り毒見して食べれそうなものは欲界の倉庫(たけじざいてん)に入れた。

森の中央には1時間も歩かないうちに到着したが、そこは小さな丘になっていて、その上には草で作られたテントが1つあった。

未だに索敵には反応が無いが、テントの上の方から煙が出ている。


「行ってみるか」


テントは近付いて気付いたが、中々大きめに造られていた。

中には人は居らず、森で取れる木々で作られたであろう家具などが並べられ、住み心地は良さそうだった。

中央に石を積んで作られた暖炉(だんろ)に鍋が置かれ、()き火で温められている。

(ふた)を開けると、数種の野菜が入れられたお粥が()かれていた。


「………美味そうだな」


蓋を閉めなおし、外に出て彼女を待つことにした。

粥を炊いたまま出かけているなら、すぐに帰ってくるだろう。

テントの外に出たら、丘の半分くらいの所にあの少女を見付ける。

赤いリボンをした黒のセーラー服は短く、(くび)れた腰とヘソが見えて、スカートもミニスカート、黒のソックスに革靴をいている。

黒髪は肩より少し上の方で切り揃えられ、整った顔立ちにジト目、背丈は165で貧乳。


「…」


彼女は片手に鳥を1匹締め上げていた。

王顕は暗殺者の面を外し、欲界の倉庫(たけじざいてん)に投げ込んだ。

少女は王顕に気付くと足を止める。


「君は誰で?、何で急に斬りかかったの?」

「…」

「あれ、言葉って通じてる」

「シッ」

「おうぅ」


セーラー服の彼女は、手に持った鳥を投げつけ目眩ましに使うと、鞘に収まったままの刀を掴み斬りかかる。

鳥は真っ二つになるが、王顕に当たると止まる。


「なぜ、斬れないの…」

「それだけ力の差があるだけさ」

神速十三刃しんそくじゅうさんじん


彼女の技量は、鞘を着けたままでも鉄を両断できる腕を持っている。

そして動きの速さも常人なら目で追うことさえできない速さだろう。

そう、常人なら…。


「ほい」

「な…、ありえない」


十三回連続攻撃、王顕はその一撃目を見切り掴んだのだ。

少女は自分の技が、ここまであっさり防がれる事にショックを隠せなかった。

武器である日本刀を手放し距離を取る。


「ふうぅ」


少女は静かに息を吐き、落ち着きを取り戻す。

王顕は日本刀に目をやり驚いていた。


「これは…」

(マジかこの刀、”奇奇怪怪(ききかいかい)”じゃねーか)

「今っ…」

「ん…」


刀に意識を()らしていた一瞬を見逃さず、(ふところ)に入る少女。

王顕は懐に入ってきた少女を捕らえるため手を伸ばす。

だがその手を掴まれ、逆に背負い投げされた。

ズダアァン


「はっ」

「おう」


倒された王顕に、すかさず絞め技に入る。

片腕を取られ、脚を使い首を絞められる。

失神させると言うより、首の骨を折る勢いで絞められる。


(知らない女の子の生脚…、はっ俺は変態かっ!!)

「あっ、何か良い匂いするな」

「ツツッ~~~///」ギリギリギリ

「むぐぅ」


つい口走ったせいで、彼女は脚の力を強める。

だが彼女が王顕を絞め落とす事は、一生かけても無理だろう。

王顕は体をバネのように跳ねさ、彼女を持ち上げるように立ち上がった。


「え…きゃん」


形勢逆転、王顕は少女の首を掴み地面に倒した。

そこでやっとステータスの確認をする。


木曽(きそ) 朝日(あさひ)

種族 人

役職 武士、忍者

レベル 52

HP 990/990

MP 1400/1400

攻撃力 95

防御力 63

特攻力 92

特防力 50


この世界の人間にしてはレベルが高いし、名前も日本人のようだ。


「お前、ヒノモトの人間か?」

「殺せ、恥辱(ちじょく)は受けない」

「いやいや、何もしないから」


王顕は手を放し、持っていた刀を返す。

朝日は刀を素早く取り返すと、警戒したままジッと王顕の顔を見詰める。

数秒の沈黙の後、口を開く。


「私は朝日、木曽 朝日、生まれはヒノモトのヤマト、お前を斬ろうとした理由は危険だと思ったから…」

「お、おお」

「お前の最初の質問だ」

「あ、あーそうだったな」

「武士として敗けは認める、だから答えた」

「敗けを認めてる顔には見えないね…」

「お前は私が必ず仕留める」

「は、はは」


朝日は、言いたいことを伝えると、地面に落ちた鳥を持ち上げるとテントに入って行った。

王顕も、彼女を追うようにテントに入ろうとすると、包丁を投げつけられた。


「危ねえ」

「やっぱり当たらないか」

「包丁は刀じゃないぞ」

「分かってる、返して」


包丁を使い鳥をさばいて、焚き火で炙る。

味付けは、茶色い粉を振り掛ける。

お粥は、丁度良く炊き上がっている。


「なぁ、俺にもちょっと貰えない?」

「そこら辺の(わん)を使って」


断られること前提に尋ねたら、意外にもお椀の置いてある場所を教えてくれた。


「え、良いのか?」

「良いわよ、敗者は勝者に従うものでしょ」

「貰いにくいわ!」


そう言いながらも分けてもらった。

味付けは少し薄めだが、素材の持つ旨味をだしている。

日本食が恋しくなる味だった。

テントの裏手に水を溜めておくタンクがあり、そこから水を出し食器を洗う。


「なぁ、その刀さ、奇奇怪怪だよな」

「お前…なぜこの刀を知っている、代々木曽家に伝わる秘宝だぞ」

「なぜって、ほら」

「それは…」


王顕の質問に洗い物の手を止め、疑心の眼差しを送る朝日。

彼の更なる行動で絶句する。

欲界の倉庫(たけじざいてん)を開き、中から出したのは奇奇怪怪だ。

直刀の日本刀で、鞘から抜いた刀身は錆びだらけ、いかにも切れ味が無さそうな刀だ。

効果はモンスターを倒した時、そのモンスターの攻撃力を吸収しる(ゲームでは3体までストック可能)。


「それにお前これ抜けないだろ、これの装備基準はレベル200以上だからな」

「にひゃ…そんな」

「後、その気配遮断は忍者のスキルか、忘れてたよ」

「な…私は武士で」

「いや隠さなくてもいいから」

「…お前はやはり消さねば」

「物騒だな、あ、それと俺今からヒノモトに向ってこの島出るから」

「は?」

「これ飯の礼な」

「あ、ちょっと」

「…」


朝日が呼び止めるも、王顕は自分の気になった事を解決させると、金貨数枚を置いて森へと入っていった。

彼女は洗い物が終わるなり、身支度を始める。

風呂敷に必要最低限の物を詰め込んで、彼が消えて行った方に走っていく。

ヒノモトに行ってもいないのに出身の女の子に会うパターン。

彼女にも何か理由が有るのか無いのか

次回は…分かれた奴らの話ですかね(仮)

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