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それから、これから


船の上は、やけに静かだった。激戦を終えた疲労のせいもあるが、それ以上に、全員が沈黙し、それぞれの心の中でエヴァとの思い出を静かに反芻していたからだ。


サラは、未だ目に涙の跡が残り、静かに遠い水平線を見つめていた。エヴァが抱きしめてくれた時の温かさを思い出していた。それは、彼女の子供とどこか重なる温もりだった。

アレックスは、力なく笑い、何度も「……エヴァ。」と呟きを漏らした。その度にエヴァの笑顔が脳裏をよぎり、泣きそうになっていた。

リーは、静かに腕を組み、エヴァの決断を尊重しつつも、その胸にぽっかりと空いた穴のような寂しさを感じている様子に見えた。

ジュールは、何かを【生成】しようとするが、魔素枯渇でうまくいかず、ため息をついたり、エヴァがキラキラした目で眺めていた自分の作品をそっと撫でたりしていた。

真人は、魔導書を眺めながら、神となったエミヴァルの存在、そして悪神との戦いで得た世界の真実、そして残された自分たちの役割について深く考えていた。

「寂しい」という感情が支配的だが、同時に「彼女は世界を救った」という確かな誇りも混じり、それは複雑な感情だったのだ。


数日後、船が王都の港に到着する頃には、疲労は残るものの、身体はいくらか回復していた。港の活気は以前と変わらず、人々の笑顔や賑やかな声が響いている。しかし同時に以前感じていた不快な魔素の圧迫感は消え去り、空気が澄み渡っていることを肌で実感した。世界の平穏が戻りつつあることに安堵したが、同時に誰も使徒たちのことを知る物はいなかった。

「本物のヒーローは誰も知らないってか。」アレックスだけは、少し拗ねたような表情だった。

使徒たちは静かにジュール邸へと帰還した。

久しぶりのふかふかベッド、そしてジュール邸のシェフが魔素回復のために調理した、栄養満点で温かい食事。心身ともに深い休息をとることができた。その日はただひたすらに深い眠りへ身を委ねた。数日間は、ほとんど外出もせず、回復に専念した。


休息を終え、心身ともに落ち着きを取り戻した頃、彼らは王都聖教会を訪れた。エヴァが忽然と姿を消したことを伝えるためだ。

教会では、エヴァが旅立った日以来、彼女の不在を案じ、心配の声が上がっていた。使徒たちは神官たちに、エヴァが世界を救うため「神となった」という、にわかには信じがたい真実をそのまま伝えることにした。神官たちは驚愕の表情を浮かべ、悲しみに暮れながらも、エヴァのために祈りを捧げることを約束した。使徒たちも神官たちと共にエヴァのために祈りを捧げた。全員が目を閉じ、静かに彼女の無事を願った。


その時、使徒たちの心に、突然、はっきりとエヴァの声が響いた。それは、かつて耳にした彼女の優しい声そのままで、しかし、どこか遠く、そして強く響き渡った。


「……みんな……お祈りありがとう!あのね……孤児院作って欲しいの!……みんなが安心して過ごせる、温かい場所……お願い……。またね!」


その声は優しく、しかし確かな神託として響いた。使徒たちは、彼女が神となっても、自分たちを忘れず、具体的な願いを伝えてきたことに、驚きと感動に包まれた。


エヴァからの神託を受け、使徒たちは孤児院の設立に向けて動き出した。

ジュールの【生成】スキルは、建築の現場で絶大な威力を発揮した。必要な資材を瞬時に生成し、真人の知識で土地選びや設計図の作成を進めた。リーとアレックスは、その怪力と機動力を活かして、資材の運搬や基礎工事に貢献した。サラは持ち前の交渉力で、土地の調達や必要な手続きを円滑に進めた。ただの施設ではなく、「みんなが安心して過ごせる、温かい場所」にするため、内装や庭の設計にも工夫を凝らした。それは、エヴァへの想いを形にする、彼らの新たな使命だった。

『名称:エヴァの庭(孤児院)/状態:新設、院長:サラ』

完成した孤児院には、すぐに多くの身寄りのない子供たちが集った。そこは人間種だけでなく、様々な種族の子供たちが共に遊び回る、まさに「良心と情愛」で溢れる場所となった。


孤児院の建設と並行して、真人は世界の変化に注目していた。世界各地で発見され始めた「魔宝石」。それは、アヴァシオンで見た紫色の結晶と同じものだ。王都の軍部や魔法部はその価値の判定機関や、魔物たちの管理の必要性を提唱した。真人は騎士団長や魔研会に提言し、ダンジョンの探検組合、いわゆる冒険者ギルドの設立を提案した。

その提案は軍部に受け入れられ、ダンジョン探検組合は正式に設立される運びとなった。

真人はすぐに組織の骨子を練り上げた。探検組合の大まかな仕事は、魔宝石の安全な採掘、魔物討伐、新人育成、そして世界各地の魔素変動の監視というものだ。

『名称:ダンジョン探検組合(ダン探)/状態:新設、組合長:真人』

ジュール、リー、サラも、戦闘教官を担うことになり、何でも屋や筋トレ、孤児院経営の傍らで彼らの新しい居場所となった。一方、アレックスは新大陸の暁団に戻り、新しい修行を始めていた。



使徒たちの天命は終わりを告げ、世界は知らぬ間に平穏を手に入れていた。しかし、それは新たなる時代のプロローグでもあったのだ。


孤児院の裏庭では、ひとりの少年が木の棒を剣のように振っていた。

「オレ、いつか騎士になるんだ!エミヴァル様見てろよな!」

その姿を、木陰から誰かがそっと見つめていた。懐かしい、けれどどこか神々しさを纏ったその背中が、微かな光の粒となって風に溶けていった。


――どこかで誰かが祈るかぎり、彼女はきっとそこにいる。





【本日の残業報告】

・王都帰還→世界の修復完了を確認

・神託:「孤児院つくって!」直脳で受信

・孤児院『エヴァの庭』→院長サラ就任

・ダンジョン探検組合発足→組合長真人就任

・各使徒:第三の人生スタート

・残業終了


#本日の残業報告 #修復系主人公 #修復完了

#エヴァの庭は今日もにぎやかです#あの笑顔のためなら残業も無限可#最終話なのに業務多すぎでは? #またね!



──これにて完結です──

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。

もし物語を楽しんでいただけたなら、ぜひ感想やレビューを残していただけると嬉しいです!

また、読みたいスピンオフなどのご要望も教えていただけると幸いです。


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