第10話 じゃんけん
拙作は皆様の暇つぶしの一助になっていますでしょうか?
お目汚しになっていたり、ストレスを溜めるようなことになっていなければいいのですが。
もし少しでも気に入って頂けたのであれば、評価等をお願いいたします。
まだ使いこなせていない機能も多い為、ご迷惑をお掛けすることもあるかと思いますが、
よろしくお願い致します。
自室に戻ると、なぜか5人の女性に囲まれることになった。
宰相との話を終え、自室に戻ると世奈、穂乃華、芹那、フィア、グレースの5人が俺の部屋に居たのだ。そういえば昼飯の後、今晩から俺の部屋で暮らすとか言ってた気がするが、本気だったのか。
グレースが人数分のお茶を入れ、応接セットに5人と座る。俺は3人掛けの真ん中、世奈と穂乃華に挟まれている。その正面に芹那、フィア、グレースの順で腰掛けていた。
俺は、宰相と話した内容を5人に伝える。派閥の話になり俺達の扱いに及ぶと、召喚組は明らかに嫌そうな顔をしだす。当然だろう、望んでもいない召喚で強引に連れてこられた上に駒として利用されるなんて、普通の神経なら拒否して当然だ。
その後、王女の話になるとフィアは嬉しそうな顔で俺をじっと見つめる。
「つまり、私がジン様のお手付きになることは王国の役に立つということなのですね」
「フィア、お手付きって……」
「でもそれだと仁の正妻がフィアってことになるの?」
「私は別にそんな順番は気にしないけどね、ずっと大事にしてくれるならだけど」
「こちらでは一夫多妻は別におかしなことではないどころか、力のある男性が複数の妻を持つのは当たり前とされています。ですので、メイドの私も囲っていただくことに抵抗はございませんわ」
「誰が正妻とかは仁君次第だし、そんな序列より大事にしてもらえるかの方が重要ですね」
女性陣はすでにハーレムを受け入れているようで、王女の婚姻の話にも抵抗はないようだ。もめるよりはいいが、もうちょっと政治的な問題とかを考えてほしかったのだが。
その後宰相は王太子の廃嫡を匂わせたことを伝えると、さすがにフィアの顔色が変わる。
「あの子は確かに出来は良くないわ、でも罠に嵌めるのはさすがにいい気はしないわね」
「廃嫡だけで、命までというようではないだろうし、もしそうならこちらでも対応する手はあるだろう」
「うわぁ、やっぱり王家ってドラマみたいにドロドロした世界なんだねぇ」
「フィアを奥さんにしたら仁も王族に連なるのよ、そして場合によっては譲位されて国王になんてこともありうるわね」
「国王とかマジめんどくさそうだな、でも先のことを心配しても仕方がないし、まずは今後のことだな」
俺はそう言うと、明日から訓練を依頼したことをみんなに伝える。スキルは非常に良いものなのだろうが、グレースの話からはスキルを使いこなさなければ宝の持ち腐れになりそうだ。
そこで気になっていたスキルの説明について、みんなに確認する。
穂乃華の"魔導師"は、
"魔導師":全ての基本属性魔法の資質を持ち、魔力を効率よく使用できる者
芹那の"召喚士"は、
"召喚士":魔物を服従させ召喚可能とする者。高位の召喚士は複数召喚を可能とする。
世奈の"聖女"は、
"聖女":聖属性の魔法を行使できる者。女性に限る。
となっていて、"言語理解"は当然みんな持っていた。
ちなみにフィアは"威厳"と"賢王"のスキルを持っていた。王族には非常に適したものらしく過去はこのスキル持ちを優先的に王位継承させていたほどらしい。
ここまでの情報を開示してもらい確信した。俺のスキルは恐らく加護のおかげで非常に強力なものになっている様だ。スキル説明に"高い"とか"非常に"といった修飾語句は含まれないらしいし、これまでそのような例はなかったようだ。
魔法の属性やら、芹那の召喚、聖属性など気になることは多いが、明日以降の訓練で専門家に聞く方がよいだろう。
もう一つ気になっていたことを、確認したいが穂乃華の反応が怖い。ためらう俺を世奈が心配そうに見つめる、
「仁君、ひょっとして黒い靄のことで悩んでるんじゃない?」
ピタリと俺の考えを当てられて焦ってしまうが、いい機会だと腹を決めて話すことにする。
「そうだ、あの件はみんなで共有しておいた方がいいと思う。穂乃華にはちょっと心苦しい内容だが聞いてくれるか」
「なに?浮気ぐらいなら別いいよ、ハーレムな時点で一人だけなんて諦めてるもん」
穂乃華なりに気を使ってくれたのだろう、場の空気が少し軽くなったがあえて元の空気に戻してスキル確認の時の事を皆に伝える。世奈と芹那はすでに知っている話だったが、穂乃華は自分の身にどう考えても良くないことが起こっていたことを聞き顔色が悪い。フィアも、自身が主導した儀式でそのようなことがあったことを知り、此方も顔色がすぐれない。
「フィア、あそこで自分の名前を言うのが一般的なやり方なのか?」
「いえ、普段は宝玉に手を触れるだけですわ。あの時は……そうマシュー、あのフードを深くかぶった魔法省の男ですが、勇者のスキルを確認するときは名前を言う必要があると直前に伝えてきたんでしたわ」
「やはりな、芹那が名前をあえて間違ったことであの黒い靄が出なかったときに、そいつの挙動が怪しかったからな。この件の黒幕はそのマシューとかいう男に間違いないな、問題はそいつが主犯か単なる手先かということだが……」
「恐らく主犯と考えてよいと思いますわ、マシューは魔法省でも高位に位置します、それに勇者召喚を最初に言い始めたのが彼、マシューですから」
「それは真っ黒と考えていいだろうな、念のため明日からの訓練にそいつは参加させないようにできるか? それとマシューと対立するような関係のものがいればそいつを講師にできるとなおいいんだが」
「参加させないようにするのは大丈夫です、ただ私が魔法省の人間関係まで把握できていないので、そちらは別の信用できるものに対応させるようにしますわ」
「後は穂乃華のそれをどうやって解除するかだな。マシューってやつを捕らえるにしても今の俺達じゃ返り討ちにされるだけだろう。穂乃華にはしばらく我慢してもらうことになるが、急いで力を得られるように頑張る。マシューってやつを捕まえる力が得られるまで待っていてもらえるか?」
「そこまで仁が責任を感じる事じゃないでしょ、私も不注意だったし、そもそもそのマシューってのが一番悪いんじゃない。でも、私のために仁が頑張ってくれるのはすごくうれしいわ。だからあまり無理はしないでね」
「あー穂乃華ばっかりずるいぃ」
「ちょっと芹那ちゃん、さすがに今回は仕方がないでしょ」
「ふふふ、そうよ芹那。今回は理由が理由だし、私の為"だけ"に仁が頑張るのは仕方がないよね?」
「むぅ、穂乃華の意地悪!」
「ふふ、ごめんごめん。でも自分のために好きな人が頑張ってくれるのって女の夢よねぇ、ちょっと濡れてきたかも」
「穂乃華ちゃん! いい加減にしなさい!」
「はーい、世奈ちゃんにまで怒られるとは、反省しまーす」
「穂乃華、ありがとうな」
こんな状況なのに軽い雰囲気に変えてしまえる穂乃華を改めて見直した。
「じゃあ、最初は私ってことでいいよね。今夜はよろしくね、旦那様」
「ずるい穂乃華ぁ、順番はじゃんけんって決めてたじゃない」
「それはそれ、これはこれですよ穂乃華ちゃん!」
「私も出来れば最初がうれしいのですが……」
「フィアまでぇ、だめ!ちゃんとじゃんけんで決めるんだからね!」
「私はメイドですので、皆様の直後でよろしいですわ」
「え?グレースは毎回2人目でってこと?」
「はい、皆様の後片付けや身支度等もお手伝いいたしますので、その後お情けをいただければと」
「いやいや、グレースそれはないわ。後片付けに来るとか考えたら安心できないし、そんなの翌朝でいいからね。事後は仁の腕枕で朝までぐっすりってのがいいんじゃないの」
「はぁ、そういうものなのですね。こちらでは貴族の方はメイドが途中でお世話に入っても特に気にされませんので。勇者様達の常識はもっと学ぶ必要がございますね」
「うん、そうして。それから後片付けは翌日起きてからね」
「はい、かしこまりました。それでは私はいつお情けをいただけるのでしょう?」
「だからじゃんけんにグレースも参加しなさいよ」
明らかにさっきまでのまじめな話から論点がずれてきている。なんとか逃げたいが世奈と穂乃華がしっかりと俺の腕を抱きしめているので、身動きが取れない。
「なあ、晩飯ってどうするんだ?」
逃げるのが無理ならと、思いっきり話を変えてみた。
すると料理担当の穂乃華が、にやりと俺を見てすでに仕込みは完了しているから大丈夫と得意げに告げてきた。ならば早速と食堂に向かいたいが穂乃華が腕を放してくれない。
「どうした? 飯に行こうぜ」
「昨日の世奈ちゃんみたいに腕を組んでいきたいな? お料理頑張ったからご褒美にいいでしょ?」
「それぐらいなら、いつでもいいぞ」
「やったぁ!」
そう言うと穂乃華は俺の腕を体中で抱きしめるようにしっかりと抱きしめてくる。世奈よりも大きいものにしっかりと挟まれる感触が……思わずにやけそうになる顔を必死で抑えて、慌てて食堂に向かおうとするが、
「仁、照れてるんだ。可愛い」
穂乃華には全てばれていたようだった。
「あー穂乃華ずるい!反対の腕は私のっ!」
芹那が走って俺の腕に飛びかかってくる。
「あっ、ジン様の手がぁ」
フィアの悲しそうな声が聞こえた気がするが、きっと気のせいだ。結局、穂乃華と芹那に両腕を抱きかかえれて食堂まで俺は連行されるかのようだった。
晩飯は、ローストビーフ的な肉と、しっかり出汁の聞いた野菜のスープだった。穂乃華はパンがまだ酵母が準備できていないため作れないのを申し訳なさそうにしていたが、これだけでも十分なご馳走だ。そもそも普通の高校生がロースビーフを口にする機会なんてめったにない。スープにはショートパスタが入っていて、これだけでも腹にたまる一品だ。ローストビーフ的なものは、牛ではなく牛系の魔物の肉とのことだった。この世界では魔物の肉も一部ではあるが食べられているらしい。
それを聞いた芹那はダンジョンでの魔物狩りに妙に意欲を燃やしていた。こいつって、食いしん坊キャラだったんだな。そういえばよくお腹すいたぁって言ってた気がする。
フィアは穂乃華の料理に夢中だった。そりゃ初日のアレが豪華な食事と言われる世界だ、穂乃華の料理とは比べるのも失礼な差があるからな。そう言ってホノカを褒めると、顔を真っ赤にしてぽかぽか俺を叩いてきた。やばい、照れてる穂乃華が可愛すぎる。
世奈はグレースと何やら話し込んでいた。グレースが"料理"スキル持ちなので、この料理を説明してもらっているようだ。いずれ自分で作って見せるというグレースの顔は輝いて見えた。
そして夕食が終わり、俺の部屋に向かう途中のみんなの様子が何かそわそわして落ち着かないようだった。なぜか部屋についても俺は入れてもらえず、廊下で立たされている。
部屋に入る前からじゃんけんの説明をフィアとグレースにして、何回勝負にするか真剣に話し合っていたようだが、勝負は俺には見せてもらえないようだ。勝負の結果で俺が喜んでも悲しんでも絶対に揉めるからとからしいが、廊下で一人はちょっと悲しい。
「そこに居るのは勇者様ではありませんかな?」
廊下に一人放置された俺に誰かが声をかけてくる。声のした方を見ると、体中が筋肉で覆われたような大男が現れた。仕立てのよさそうな制服らしいものを着ているのだが、その筋肉のせいでぴちぴちに身体に張り付いていて正直キモイ。
「失礼、私はグレアム・ゴドルフィンと申します。王国の軍部を預からせて頂いておる者です」
「これはご丁寧に、俺は桂、桂 仁だ。勇者という存在らしい」
グレアムと名乗った男は俺を値踏みするように見た後、
「勇者カツラ様、失礼ながら戦闘のご経験はあるのでしょうか?」
こっちはこの間まで普通の高校生だったんだ、戦闘経験などあるわけがない。
「いや、召喚されるまでは平和に暮らしてきたんで、戦闘などしたこともないよ」
こんなところで戦闘させられるのはお前たちのせいだと、それとなく含ませて返答するが、
「なるほど、それでは是非一緒に鍛練を致しませんかな?筋肉は裏切りませんからなぁ、はっはっはっ」
うーん、こいつはどう対応すればいいんだ? 単なるトレーニング馬鹿なのか? 何か裏があるのか?
「訓練計画は宰相に一任してるんだ。折角誘ってくれたのにすまんな」
「そうですか、それは残念です。しかし機会があれば是非」
「ああ、機会があればな」
「それでは、これで失礼させていただきます。まだ夜の鍛錬が残っておりますので」
「あ、ああ」
グレアムは笑顔で立ち去って行ったが、夜の鍛錬って何だ? "夜の"ってつくと、いかがわしい感じになるよな。
「仁君、お待たせ」
グレアムを見送って呆けていた俺に、世奈が扉を開けて声をかけてきた。
「部屋に戻っても大丈夫か?」
「ごめんね、一人で待たせちゃって」
「これって廊下じゃなくて奥の部屋とかでもよかったんじゃねぇの?」
「……そういう考え方もあることは否定しづらいことを認めるのはやぶさかでは……」
「悪いことをしたら、素直に謝る方が俺は好きだなぁ」
「ご、ごめんなさい! テンパってて全く気が付いてませんでしたぁっ!」
「ははは、次からは奥の部屋にしてくれな」
「はーい!」
「世奈ちゃんいつまでいちゃついてるのよ、早く入ってもらいなさいよ」
「ごめんごめん、仁君どうぞ」
世奈に腕を引っ張られて部屋に戻ると、5人がそれぞれの表情で出迎えてくれた。多分じゃんけんの結果が顔に出てるんだろうな。
「で、どうなったんだ?」
「えへへ、結果発表するね!じゃあ一番から。私、泉 世奈ちゃんでーす!」
「もう世奈ちゃんはしゃぎすぎ、よっぽど嬉しかったのねぇ」
「だって、最初に告白したのは私だもん。なのに後になると悔しいからね。それで、続いて、穂乃華ちゃん、フィア、グレース、芹那ちゃんの順番に決まりましたー」
「そっか、よろしくってのも変だな? まあ、とりあえずよろしくってことで」
「うふふ、何それ。こっちこそよろしくお願いしますね」
「なあ、世奈のテンションがちょっとおかしいけど大丈夫なのか?」
「まあ、奇跡の大逆転だったからねぇ。3回勝ち抜け勝負だったんだけど、3人リーチで世奈ちゃんゼロからの大逆転! あの時の世奈ちゃんの顏、どん底から頂点までってすっごい変わりようだったのよぉ」
「ふうん、まあ大丈夫ならいいか」
「それじゃあ、私たちは奥の部屋に行ってるから、後は若いお二人で……うふふ」
「穂乃華、お前も同い年だろうが」
「まあまあ、こういうのはノリと雰囲気よ。じゃあ邪魔しないからしっぽりとお愉しみしてね~」
そういって世奈を残して奥の部屋に入っていく4人、ってフィアは自室に戻るんじゃなかったか?
「フィアもここに居るのか?」
「ええ、お父様にも話は通してありますわ。カツラ様に気に入ってもらえるよう頑張れって」
「そんな簡単でいいのか、お前王女なんだろ?」
「王女が勇者様の妻になるということは、その国が勇者様の保護下にあるということになるのよ。つまり、ジン様以上の相手は少なくともこの国にはいませんのよ」
「そういうものなんだな……」
そして世奈と二人になると、世奈は真っ赤な顔で俺を見つめてきた。
「あ、あのね、その、私初めてだから、その、お手柔らかにお願いします」
「ぷっ、そこは"優しくして"とかじゃないんだ、お手柔らかってちょっと面白いな」
「もおっ、これでも緊張してるんだからね、なんで仁君はそんな余裕なの? ひょっとして遊び人だったとか?」
「いやいや、俺も初めてだよ。なんか現実味がないというか、召喚されて異世界に来て、こんな美少女たちからハーレムに誘われるって。こないだまで夢にも思わなかった状況だからな。」
「び、美少女って……照れるわね……」
「えっ、そこ?突っ込むとこおかしくない?」
「だって、私から告白したし、ハーレムだって女の子からでしょ? 仁君がどう思ってるか教えてもらってないからちょっと心配だよ」
「そういえばそうか、みんな良い子だと思うし、俺にはもったいないぐらいの美女や美少女だよ。この状況、正直まだあまり現実感がないけど、喜んでるのは間違いないよ」
「そっかぁ、喜んでくれてるんだぁ……よかった」
無理やりハーレムに巻き込んだのではと思っていたようで、さっきまでの変なテンションも落ち着き肩の力が抜けたようだ。
「あ、あのね、仁君先にお風呂に入ってくれる? さすがに最初から一緒にはハードルが高いというか、その、ね?」
「ね?って言われてもな。まあわかったよ、じゃあ先に風呂をいただくよ」
「いってらっしゃい」
そして一人風呂に入り考える。なんか流されるままここまで来たけど、彼女たちの気持ちは俺のスキルで増幅したもので本当の気持ちじゃない。多少の好意があるのは間違いないだろうが、本当にこのままでいいのだろうか? とはいえ、ここで断れば世奈を傷つけることになってしまうだろう。
見合い結婚みたいな感じで結婚してからお互いを知っていくと考えれば、少しは気が楽かもな。
そしてその晩、俺は世奈と結ばれた――




