CASE1 その①
初投稿になりますので、温かい目で見守ってください…
ポロロ、ポロロ、ポロロ、ポロロ…
ホットラインの音がなる。
救急隊から患者受入要請が来たという合図だ。
看護師の”あい先輩”がホットラインを取る。受話器を片手に患者受入用メモに様々な情報を書き込んでゆく。
「主訴はなんですか?いまどのくらい痛がっています?いつ頃からでしょうか?」
救急隊から患者の情報を聞き出していく。メモはどんどん埋まっていく。
私はメモをチラ見。
(多分、来るな…)
主訴・状況を確認すると、私はそう実感する。
看護師歴が長くなると、このへんはなんとなくわかるものである。
「わかりました、医師に確認するので少しお待ち下さい」
電話を保留にして、あい先輩は今日の救急担当の医師へ受け入れ可否を確認に行った。その背中を見送る。長身でスタイルがよいあい先輩、仕事もできるのでめちゃくちゃ尊敬している。
「なに?来そう??」
「多分来ると思いますよ。お腹の痛い人。」
後ろから看護師の”さしさん”が話しかけてくる。
「”らり君”の予想は?」
「アッペじゃ無いですかね。下腹部痛」
「お。当てる自信はある?」
「5割ってとこです」
「じゃあ外れたらレッドブル一気飲みね♡」
「…翼はやしてより働けと?」
「翼をあげるだけ優しいでしょ!」
さしさんとそんなやり取りをしていると、医師と相談が終わったあい先輩が戻ってくる。
「確認しました、当院で受け入れますので向かってください。到着は何分後になりますか?」
到着時間を救急隊に確認する。到着までは15分とのこと。
「らり君、救急車お願いできるかな?」
「そのつもりでメモ見ていたので大丈夫っす」
「ありがとう。じゃあ、よろしくね」
笑顔で仕事を振る あい先輩、惚れるわ。
「了解です。行ってきます!」
ナースステーションを出て、初療室(ER)へ向かう。
「さて、がんばりますか!」
あい先輩の読みやすい字で書かれた患者受入メモを見ながら一人、気合を入れる。
電話を片手に書くメモなので、電話対応した人によっては暗号に近い文字で書かれることがある。その点、あい先輩のメモは読みやすいのでとても助かる。
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25歳 男性 下腹部痛
仕事中発症 1時間ほど前 波がある
便秘なし 嘔吐なし 下痢なし 既往歴なし
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救急隊の測定した心拍数(HR)が正常値より高い。たぶん、強めの痛みがでているのだろうなと推測する。
「痛み止めと… あとは早めに画像かな〜」
これから行われる検査や処置を想像しながら歩くこと1分、初療室に到着する。
まずはベッドサイドモニターの電源を入れ、モニターコードを整理してすぐに装着できるようにする。
HR(心拍数)、SpO2(酸素飽和度)、BP(血圧)の3本。それに加えて、ポケットから体温計を取り出す。バイタルサイン測定の準備はこんなものである。
続いて処置の準備をする。
点滴ルートを取るためのサーフロー針(20G)、駆血帯、固定用のテープ、採血用のシリンジ、採血スピッツ、アルコール綿…
点滴はその時の指示によるので、ルートだけを準備してぶら下げておく。
「多分ラクテックだな。あとはアセリオも持ってきておこう」
乳酸リンゲル液のラクテック、それから消炎鎮痛のアセリオを準備する。
周囲の準備が終わったら、今度は自分の準備。
感染防御のためにスタンダードプリコーション(標準感染予防策)は必須。
今回は外傷を認めないのでエプロンと手袋で対応。
そんな感じで準備を進めていると先生到着。今日の救急担当は女医の”りんご先生”だ。
「そろそろ来る?」
「もうすぐで到着すると思いますよ。先生、輸液は?」
「あ〜、何歳だっけ」
「25歳男性です」
「じゃあラクテック準備で良いよ」
「御意」
先生からの指示を受けながら、薬剤投与がすぐできるように準備をする。
素早く動くためには事前準備が欠かせない。
そうこうしていると遠くの方から救急車のサイレンが聞こえてくる。
受診受付を行うため、受付担当者も初療室に合流した。
「さ、いっちょやりますか」
救急車搬入口のドアを空けると救急車がちょうど駐車スペースに滑り込んできた。
救急車受け入れ、開始である!
適切な文字数がわからないのでとりあえず3回に分けてみました。