夢想加悦-夢か現か幻か、絶対深層真相心理世界領域
俺は夢の中で、人生初めて心の底から真の恋心を知ったのかもしれない。
この燃える様な、ただ一つの存在に対する情熱は今まで感じたことが無い、瑞々しい新鮮さすら覚える、俺にとっての圧倒的に思える新領域だったのだ。
自分という境界を越えるには、現実に確実に存在する他者が必要だと思う。
更に、その他者を自分よりも大事な、それこそ自分の事など掛け値なしに”どうでもよい”とある種吹っ切れさすような心地にさせるようなレベルの、だ、である事も必須だと感じる。
自らでも、自覚的に感じれる心の枷を取り払い、より自由に心を羽ばたかせるには、自分よりも確実に価値を見出し決死に必死なほどに愛せる存在が必要で、俺は欲しいと思う。
それは後戻りが不可能な、巷で言われる所の精神病と揶揄もされる”恋の病”の発病志願で歪とも自分で思う。
だが、どうしても求めてしまうのは、やはりより広大な自由を欲するがゆえだろう、それ以外の”何か”も、多分に含まれると思うが。
先程”自分の境界”と言ったが、これはもちろん物理的な感じでなく、酷く精神的な例えで比喩みたいなモノである。
誰かに捧げる生命は、簡単に自分の存在としての限界を飛躍的に突破できる、行動理念の究極に成りえる素晴らしいモノだと考える。
なぜなら、自分の事など置き捨てて、より愛する他者の為に生きるときは、自分の痛みも苦しみもどうでもよい、まるで他人事かのように忘れたような心地になれるからだ。
無我の領域に至り、完全なる客観、神の観測視点からはほど遠いだろうが、より自分の中のある種類の自我を薄めて、高い次元の何かを得られると思う。
それは命の惜しさか、自己保存の欲求・欲望・渇望の超越か、まだまだよく分からないが、、、。
その人生を生きるには、確実に精神を縛り付けて、より積極的にダイナミックに豪快に、型に嵌めて言えば”この人生というゲームをプレイする”、上での己の価値観、それを致命的なほどに変革させて断ち切りたいと心がはち切れてしまいそうになるほど思うのだ。
この想いを抱けたのは、というより心の在り方を実感として気づけたのは、本気で他人を、自分以外の他者を好きになったから。
俺にとっては光明だ、なんとしても、だ、この愛を掴み取り、決して失わないようにしたいと、己の全力を、最善を尽くす心積もりだ、それが恋に対する、ただ絶対唯一の高潔なる態度だと確信するが故に。
「それで、貴方は、私が好きで好きでたまらない。
ただ、それだけの精神状態を表現する為だけに、そんな長ったらしく冗長な、迂遠に過ぎる話をしたわけね」
「駄目だったかな、というより不快にさせたかな?」
「いえ、なんともまあ、貴方が本気で私の事が好き、愛してくれている事が、感動的なまでに迫真的、凄くすごく伝わって、本当に嬉しかったわ、ありがとう」
「どういたしまして、なら嬉しいよ」
「それで、私って、貴方にどのようなスタンスで居るのが、”確実に正しい在り方”なのかしら?」
「うん? どういうこと?」
ちなみに、今はICプレイヤーのような端末で、お互い声だけで会話している対話模様である、それでも胸が跳ねるようにドキドキするのだが。
「だって、ねぇ、言いにくいのだわ」
そう、メタ的な話にするのか、それとも”そういうの”を、一切なしにするのかを含めて、世界的に斬新で奇抜な問いかけ、の意をすら内包、を、している、と、しておこうか?
とにかく、ここでの意味深で、思わせぶり、底が知れないとすら表現してもいい問いかけの、その真意真髄を、簡単に何かそれと決め付けて、解釈の幅を狭めること自体が、この場合はナンセンスと、そういうのなのだろう? 俺は分かっている、そうして其処に居た。
「私と貴方の恋愛に対して、お互いと世界の、”正しい在り方”について語りましょうか?
でも、コレ自体が、この会話を貴方と展開すること事態が、何か決定的に世界や、私と貴方の関係性を端的に確定させてしまう、そういう危惧やリスクもあるのだけれど、、、まあ、そういうのを気にしていたら、何も身動きが取れなくなってしまうのは道理、肩の力を適度に抜いて、気楽に行きましょう、話して、何かを」
彼女はごく個人的な私事な話と、”この世界”の在り方の話をしている。
少なくとも、”この俺”はそう断定的に判断した。
「オーケイ、それは俺自身という存在も、同様に了承して了解した」
「そう、そういうノリとキャラで、今回の世界は始めるのね、できうる限り、楽しくしたいわね」
「ああ、そうだな、楽しくしたいな」
俺達は、夢のような現実を、幻に満ちた時空世界で行うのか、どうするのか、まずは話す事にした。
「ファンタジー要素は、あり?」
「いえ、その前に、現実性を突き詰めるのか、非現実的に何でもありな世界観にするのか、そこが世界の根本として、まず規定するべきポイントよ」
「現実性を突き詰めるなら、もうなんだか色々と破綻してる気もするが?」
「確かにそうね、でもまあ、ここから変則的だけれども、抜本的に変える事も可能だと、私は思うわよ?」
そのように、掌サイズのICプレイヤーを硬く握り締めながら、俺は果てなく浮き浮きドキドキ、まんま浮かれたような心地で話している。
「楽しい?」
「突然どうした?」
「いや、貴方の心情確認」
「楽しいよ、それがどうかしたの?」
「そう、その言葉が聞きたかっただけ、続けて」
「へいへい」
さて、俺達はとりあえず、”世界の在り方”は置いておくことにした、それよりも重要だと思える懸案の話に移行したからだ。
「私と、貴方の、関係性、これはどうしたい?」
「どうしような」
「恋人?」
「例えそうだとしても、どのレベルの恋人か、規定する必要を概算する、あとなんだかコレ恥ずかしい会話だなおい」
「茶化さないでよ、真剣な話なのに」
「ああうえい、そういうノリで話さなくちゃいけなかったか、ごめんよぉ」
若干険すら含んだ彼女の低い声に、俺は怯えて、というより涙目にすらなってしまいつつ言った。
「まあいいわ今回だけ許してあげる、それでどうする? どのレベルの恋人に、わたしと貴方はなりたいのかしら?」
ファサっと、なんだか長い髪の毛を掻き揚げるような音が、レコーダー越しに聞こえた気がした。
てか今気づいたが、これってどういう形式だろうか? まさか予め録音された音声と会話している、、、いやそんなわけないか馬鹿馬鹿しい。
「それは俺が決定的に断定する形で、いまこの瞬間に、言って決めないと駄目なのかね?」
「そうね、それが良いと思う、私は優柔不断は嫌いだし、そういう関係性も嫌い、”明確な関係性を希望する”わ。
それにね、ただ単に、貴方に告白されたい、そういう純真に純粋な気持ちも、あるの」
「分かったよ、規定するよ。
そうだな、、、”己の命よりも大事に、お互いの事を想い合っている”、これでどうかな?」
「上出来ね、でも、こういうのはどう? なんだか深みみたいなの、でるんじゃないの?
それは、”私の方は、貴方の事をどのレベルの恋人として見ているか、深遠に分からない”。
更に加えて規定して、”貴方は私が貴方の事を、”己の命よりも大事に、お互いの事を想い合っている”と確信していて、私も貴方がそう想っている事に気づいている”、とかね」
「頭こんがらがってきたんだが」
「意図的よ、存分に困惑するといいわ、これが恋の駆け引き、女のアレな話術トークよ、とくと味わいなさいな」
なんだか女王様みたいな威風に、思わず圧倒的に威圧されそうになる、心臓によろしくないレベルでだ。
「お手柔らかに、とにかく、どうする? この件は?」
「そうね、大事な事だから、棚に置いて保留しましょうか」
「それって、大事な事にホントにしてる? なんだかおざなりな感じだけれども、むしろスルーしてるレベルだけど、、、」
「いいのよ、今は、貴方と私が”そういう話をした”、お互いが重要事項として認識している、そういう共通認識がある、という事が規定されている、それだけで十分と私は思うもの」
「まあ、そう言うなら、無理強いはしないが、、、」
「口惜しそうね、そんなに私と”明確なる恋人関係”に、成りたかった?」
「こういう感じに焦らされるのも、十二分に120%想定してたから、問題ないよ」
確実なる強がりである、俺は今このとき、酷く胸を痛めるような有様だったのだからね。
実際受話器のように握ってるレコーダーが、微かながらも震えているし。
「ごめんなさいね、私は砂糖菓子のように甘い恋人関係も好きだけど、偶には辛味の効いたスパイシーな関係も大好物なの♪」
可笑しそうにくすくす微笑すら聞こえてきそうな弾んだ声。
楽しんでいらっしゃるのでしょうか? 突っ込みっぽく問いかけそうになった。
「貴方、簡単に手に入るものに、価値なんて見出さないでしょう? そお、そういう事にしておいて。
それに、こうやって焦らしておけば、貴方がより魅力的に自分を高いレベルで練磨する、できるだろうし、ね。
例えるならソレは、その、恋愛という戦場の灼熱に精神を焦がされ、その中で高められた精神を養成する、訓練?いえ、試練なのでしょう」
「うむ、なんとなく”意図”は察したよ」
「確信的に好かれたいなら、頑張れ、努力しなさいって話、明け透けに言ってしまえばね」
「明瞭に伝わる言い方をどうも、誤解誤釈なく、”確実に伝わった”よ」
「そう、なら安心。
そろそろ、規定は形成構築できたかしら?」
「まあ、そろそろ、俺もいいんじゃないかと、感じ始めてはいたかな」
「なら、また何か始めましょうか?」
「そうだね、何かを始めないといけない、その気だけはずっと昔からしていたんだ」
「何か暗喩してるの? 酷く思わせぶりで意味深、底知れない発言が好きな、貴方らしい唐突で、意味不明だわ」
「そういうのが、好きなんでしょう?」
「そういうノリは、私の領分、貴方は振り回されていればいい、貴方を”確実に支配”するのは私よ」
「いや、俺だよ、”確実に支配する”、のはね」
「うん、いいわねこの刺激的な関係、ライバル、好敵手って憧れ痺れるわ」
「お互いいがみ合ってる風にするの?」
「嫌な言い方やめて、お互いをお互いが、小生意気な相手を力で屈服させてやりたいと、そう想っているだけよ」
「それって、より悪化してね?」
「そう? 私的には、よりソソル言い方なのだけれど」
「疑問符を取り外そうか、確実に悪化してるな」
「なんだかライトノベルみたいな、ラブコメっぽく、そういう雰囲気が、貴方からする」
「いや、なのか?」
「別に、ただ私が、”そういう風に認識している”、のだけは理解しておいて」
「ふーん、よく分からないな」
「まあ、控えめにハッキリ言えば、そういうノリで調子に乗られると、ね、私って偶に凄く虫唾が走るときがあるから、注意してってこと。
過ぎれば文明すら破壊するような、果てもない嗜虐的で羞恥的に、貴方をこの手で甚振って苛めてしまうかもしれないから、気をつけて」
「もう、”そういうノリ”、確実に”禁止と規定”されたな」
「ええ、貴方が調子に乗ると、なんだか私的には萎えてしまうもの。
絶対に好き勝手させない、私が面白いと感じる展開に持っていく為なら、なんだってするわよ」
「お互いの思惑が絡み合って、知能戦してるみたいで、面白いな、そういう展開でいく?」
「それは、ちょっと、ねぇぇ、難しいんじゃないの?」
「なぜかな、わかってる、俺の知能がうんたらかんたらって言うつもりだな!」
「先回りして突っ込みするのは私的によろしいのだけれど、なんだかラノベっぽくて駄目だわソレ」
「お前は、ライトノベルが嫌いなのか?」
「逆よ、好き過ぎるくらい、だから、貴方との関係性までも、そんな新鮮味に欠けるモノに、したくないだけ、そう受け取って頂戴」
「まあ、ちょっと陳腐に思える事もあるしな、そういうノリってか、なんというかは」
「そうねよ! そういうノリで延々物語が綴られると、なんだか世界が箱庭の、誰かの作り物って感が滲み出て、途端萎えてしまうわよねぇ!」
「なるほど、そういうトークには熱くなるって、わけだな」
「そう、ライトノベルに熱くなる、子供っぽい面もあるチャーミングな女の子よ」
ICプレイヤーから気取った感じの声が聞こえる、マセガキっぽい大人ぶった生意気な感じである。
「今のお前、なんだかラノベっぽいよ」
「なんとでもいいなさいよ、私は私を貴方に影響されて変えたりしない、私は”影響を与える側”だわ」
「まあ、俺は、今はそれでいいか、と、想っていることにしよう」
「ええ、それが安穏な回答だわ」
俺達はその後も何事か話した、まだまだ世界もお互いの関係性も何もかも、練り足りない感じ。
「貴方、本当にわたしを愛しているの?」
「さて、どうかな」
「でしょうね、、、詰まらないわ、もっと愛されたい」
「お前は、愛を求めるのか?」
「というより、恋愛がしたいわ、燃え盛って心が後には何も残らない、炭になってしまうほどの、ある種破綻的で崩壊的で破滅的な」
「なんというか、高望みだね」
「そうでしょうね、でも、それが私の本心本質から望みなの、、、、かなえてくれる?」
「全力は、尽すよ」
「うん、”私は貴方に期待する”、ことにするわ、大事な事だから、もう一度いいましょうか?」
「一度でいいよ、その方が薄まらず、価値ある言の葉の気がするからね」
「なに、風流を分かったような事を口にして、生意気だわ生意気だわね、屈服して屈辱を与えてやりたくなるわね」
「ごめんごめんちょっとカッコつけたよ」
「別にいいのよ、偶に癪に障るけど、偶にトキメク、そういうの癖になっちゃいそう、そうも矛盾的に想うの」
「おおう、というより、こういう睦言のような、カップルみたいなトークもするんだな」
「まあ、しょうがないわ、だってどうしようもなく、したくなってしまうんだもの、”禁止”しても無駄よ、こういうのはね」
「そうなのか、だったらいいか」
「なに? 言いたい事がありそうね、言いなさいよ」
「いや、なんだか甘甘だなぁ~と、なんとなく想っただけだよ」
「やっぱり貴方はMで、苛められる方が好み、少なくとも”私の中だけでは確実に規定”とか、してあげましょうか?」
「変なキャラ設定はやめてくれ、いろいろと暴走しそうで怖いから」
「そうね、暴走はいけないわ、事前に歯止めは掛けるが奏功でしょう」
「うん、それがいいと思うよ」
「それじゃ、そろそろ切るわ」
「飽きたの?」
「いやな言い方しないで、ずっと話していたいの?」
「うん」
「しょうがない人、貴方にも、他にやる事はあるでしょう」
「まあ、あるにはあるけど、もっと話していたいよ」
「可愛らしい、殊勝な態度ね、でも、そろそろ夢から覚める頃合だわ」
「え? まさか夢落ちにする気じゃないだろうなお前」
「別に、そこまで明け透けに言ってないわ、勝手に解釈して”規定”に持ち込まないでよ」
「ああ早とちりした、ただ何時もの思わせぶりな台詞だったんだな」
「そういう風に、安直に言われるとムカつかない訳じゃないけど、まあそういうことよ」
「それじゃ、夢落ちではないんだな」
「なによ、酷く念押ししてくれるのね」
「だって、お前との関係が、夢だったなんて想いたくない」
「うん、トキメキ点70点ってところね」
「いちいち俺の台詞を採点すな、恥ずかしいっての」
「あっはは、そうね、今回限りよ、まあ不意打ちでまたするかもしれないけど」
「もうしないでくれよ」
「善処するわ、で、現実に戻るって意味にしましょう、お互いの生活にね」
「そうか、なんだか俺とお前がまったく別々に生きてるみたいで、寂しいな」
「別々の人生って意味ね、だったらこう”規定”する? ”実は二人は同棲してて、隣室で話してる”、とかね」
「なんだか色々とぶち壊しに成りそうだから、それ禁じておこうか」
「ふーん、貴方って意外も意外、雰囲気を大事にするのね」
「お前の中で俺はどういう感じの奴なのか、すごく知りたい」
「冗談、そういう気遣いは加点よ」
「評価されてんのか俺は」
「常に私と居るときは面接されてるかのような高い意識と気概で望みなさい」
「何様だよ、まったく」
「それじゃ、そろそろお別れということで、、、」
「その電話越しで嫌な相手へのさり気無い逃げ口上みたいなの、傷つくからやめてよ」
「また会いたいわダーリン、わたし貴方との愛瀬だけが、唯一の生き甲斐なの、寂しいと死んじゃう兎か子猫のようなのん」
「キャラ変わりすぎ、いっしゅん唖然としたよ」
「ニヤリ、でしょうね、それじゃ一旦さようなら」
「ああ、一旦さようなら」
「あら張り合いがないのね、もっと私との会話を少しでも先延ばしにするような、醜いまでの執着を示して欲しいものだわね」
「そんなに俺が惨めを晒さなきゃ、お前は満足せんのか」
「ええ、私の為に泥だらけ、血反吐吐くくらい、殺し合うほどに愛し合ってみたいから」
「狂気ってか、魔性だな」
「そういうのに魅力を感じる、駄目な誰かさんに合わせてるのよ、素じゃないわ」
「どうだか、ね」
「影のある、大きな不幸を背負った、そういう傷だらけの少女にしか劣情を催さない可哀想な貴方に合わせて、己を地に堕としている私になんて言い草!」
「お前がなんて言い草だ!」
「ふっふ、それじゃね」
「ああ、じゃーな」
なんというか呆気なく通話は終わった。
まああのままズルズル話し続けるよりは、なにかと良かった、”今回”はスッキリした感じの終わりだった。
さて、次が始まるのは、俺がもういちど”この夢”を見て、心底から望んだ時の刻限になりそうだな。




