ハイユニオンワールド-戦線と城壁と超物質
緑広がる大平原と密林地帯が複雑に混在する場にて。
「そろそろ城壁が突破されるようだ。
そしてココから、化け物が出現する。
なので我々は迎撃する、ただそれだけだ、各員全力で当たるように」
小隊の人員に手短に支持、もう何時現れても可笑しくない、急行した今まさに途端に出現しても可笑しくない。
手持ちの武器は、ロケットランチャーと自動小銃、一見頼りない兵器だ。
だが、これにはどんな強固な外殻をも打ち破る特殊弾丸、それがほぼ無尽蔵に退縮集積されている。
そしてプラスチック以上に軽量なため、単独での小回りの効く機動戦が可能、究極的には各員ばらけたゲリラ戦も実現可能だ。
そして最も単純戦力を底上げする武器、それが後方の場には展開され積算している。
遠隔自立機動、そして手動操作、脳波で複雑に多岐に渡る命令をこなせる戦車と機動兵器、航空機が幾らか、直接に既に私とリンクしているのも勿論ある。
「レーダーに反応あり!規模は一個星域クラスです!」
索敵兵の声と共に、化け物が雲霞の如く、どこからともなく沸いて出てきた。
敵は見たままの化け物から、見慣れた近代兵器の形をしていたり、漸進芸術の体現か、はたまた宇宙からの侵略者と見まがう姿など、千差万別複雑怪奇の様相。
それを私達は撃退、撃滅する。
それは肉体と精神と、その他弾薬等を含めたあらゆる物資を消費し摩滅させる、していくだけの完全なる大規模消耗戦だった。
この一局面の戦場だけの話じゃない、化け物との全面戦争、それ全体がそうなのである。
戦っても得られるものは何も無く、ただ明日を掴み取り、その手に収めるだけの虚しい、何時までも続くか一切まったく分からない、それが”この戦い”だった。
「よお、城壁の修復の調子はどうだ?」
沢山の錬金術師が存在する場。
それぞれがそれぞれの、ただ一つの、あるいは複数か、場合によってはマルチに役割を与えられ、特化された能力を持っている。
その中でも”城壁関係”の錬金技能、それに特化されている人材に声を掛ける。
「雑魚ならもう通さない、強敵でも足止めに十分な規模までは成ってるな」
「そうか、前線で戦って気づいたんだが、最高クラスの城壁を幾らか常時召喚可能にしておいてくれ、それじゃ」
「おい待てや、こら」
不機嫌な声だったのだろう。
面倒な仕事を押し付けて逃げる算段だったのだろうが、仕方なしとばかりに振り返る。
「なんだぁー、わたしは忙しいのだぞぉー、お前に付き合っている暇はないんだぞぉー」
「嘘付け、てまえのスケジュールくらいは、こっちでも把握できるんだ、長期戦のあとで、これから何日も非番だろうが」
「分かっているならいいな、わたしは休むのにも急がしいんだ、それじゃ」
「だから、待てというに」
腕に縋りつかれる。
「なんだ、じゃれ合いたいなら、小動物を飼うことをお勧めする、猫とかいいと思うぞ、個人的にはな」
「お前が前線の泥沼の後で、ふざけたテンションになりがちなのは多めにみよう、だがしっかりと話はきけ」
「あいよ、分かったよ、ちなみにこのテンションは生来に近いがな」
「自覚があるなら、あらためぇ、まあいいか、話すぞ」
言うには、その前に、幾らか城壁の基本設定を語られた。
城壁には様々な要素があり、硬度、展開規模、属性付加、固定火器の設置の有無等々、幾らかある。
そして先程言った、最高クラス、これはその全ての主要各要素が軒並みS級であることが求められる、という意味なのだ。
「でだ、その最高クラスを幾らか、お前の口上から読み取るに、多くて越したことはないというんだろう?」
「ツーカーなやり取りが出来ているじゃないか、それじゃあな」
「だから待て、率直に言うが、ここにいる人員程度じゃ、一枚たりとて、用意できないぞ」
「それってマジ?」
「マジだ」
「人材が払底してるってレベルじゃねえだろうよぉ、、」
見ると、想像以上の人材の不足が確認できたようで、暗い声でただの事実を吐露する悲痛に値する姿が確認された。
前よりも幾らかじゃなく人員が減っている気がするのは気のせいじゃないと、確信を持って言えるのであった。
「そうか、侵攻戦線に力を入れるから、近いうちに人員が不足する、それが今かよ」
「そうだ、アレの所為で人員を裂かれているって話は、見て分かる通り、今で本当だ」
「クソが、くだらねぇー賭けをしやがって」
「しかたないだろ、侵攻しアレに到達すれば、この戦争は終わらせられる、、、かもしれないんだからな」
アレアレと連呼されるモノ。
それは少し前に遠方を索敵観測していた折に、発見された超物質の事である。
見た目はただの三メートルほどの球体、だがコレは、現在の戦況を一変させうる力と認識された。
現存の賢者の石の上位互換とも言われるそれは、時空の裂け目と言われる、少し前にそういう事になった。
単純に上位の世界からエネルギーを供給するなら、既に幾つかある賢者の石が使える。
だが、その規模とスケールが圧倒的に違う事が分かっている。
それは上位よりも更に幾らか上位の、純然に言って既存のエネルギー関連の常識を粗方塗り替えるほどの、ありえないほどのエネルギー。
その為のパイプを、取りに行く計画が立ち上がるのは必然だろう、手中に収めれば、莫大な燃料、幾らあっても問題ないソレとして十全に使えるのだから。
「だが、ソコに到達する前に、防御戦線が打ち破られる危機だぜこりゃ」
「お前には、役割が与えられている」
「ああ、当然だろ。
お前もその役割果たせよ」
「もちろんそのつもりだ。
俺に与えられたのは、最大限城壁を維持、余裕があれば増強補強することだな」
「分かってるじゃないか、不可能でもやれ、可能にしてくれってことだ、あばよ」
「だからなんでお前は、、。
俺にもな、限界はあるんだ。
お前の望みは叶えたい、だが、お前の言う仕事を成すには人員不足で難しいってわけだ」
「そうか、そうか、うん、死ぬ気でやれとしか、言えないな」
「そんなに追い詰められてるのか?」
「そうだな、追い詰められている程度は不確定で、具体的に表明は出来ない。
だが、私が無茶を言いたくなる程度だから、お前が死ぬ一歩手前まで努力する必要性は認められるだろう?」
「簡単に言ってくれるな、、」
「厳しく言うのも、あれだろ、士気が下がりそうだ」
「まあいい、お前の言いたい事は分かった。
つまり負担を肩代わりするモチベーションがあるなら、後に支障がでない程度に協力しろと、そういうわけだな」
「ああ、わたしの為に、死ぬ気でお前が頑張ることを望む、最初から、そういう話だったろぉ」
「そんな突き抜けて上から目線の調子だったかは疑問だが、そうだな、了解したよ、出来る限りでやってやる」
「良い返事だ、時間を無駄にしたな、させたな、それじゃな」
速やかにその場を去る。
その姿を見つめつつ、城壁専職の錬金術師は溜息がやめられない、なぜならこれからの苦労が今から身に染みるほどだったからだ。




