幻想機構都市の機械美少女達
「輝けるぅ~鋼鉄ぅ~機械仕掛けのぐらぁーでんん~人工美のばぁあいーらすぅ~っには、自然美もかぁーしずくぅ~♪」
近未来的な鉄塔の頂点。
普通の人間ならば落下の危険で、とてもではないが存在できない地点。
そこに、一人の美少女が歌いながら平然な風に、飄々と心を泳がせている。
「夜空ぁ~流れ遊ぶぅ~メテオぉ~手繰り寄せてみせればぁ~君と一番高い場所でぇ~幻想ぉ~夢科学競い合わそうぉ~♪」
少女は芸術の極地に値する、類稀に秀逸にして絶品の旋律を奏でていた。
少女自身が至極の楽器すら凌駕する、生体としての楽器であるから可能とする。
その歌声に引き寄せられるように、周囲から何か良くないモノたちが集まってこないか心配である。
「閉ざされたぁーロジックぅ~君と私を隔ててゆくのかぁ~♪ ああぁ~こんな気持ちぃ~何時か報われるのぉ~♪」
曲のクライマックスに入ったのか、少女は立ち上がり、伸び上がるように歌いだす。
「な~にぃー優しき優越なるパラドクスぅ~星の彼方にきえゆぅ~くぅ~~~原始の幻視の中の真理をぉ~君にみいぃだぁ~してぇ~ええぇ~♪」
そこで歌は途切れ、辺りに静寂なる余韻のみを残して、嘘か幻のように音は絶えた。
「はふぅ~歌った歌った」
少女は座りなおし、満足したように一人ニコニコしだす。
感動で胸トキめかせている観衆達はいないが、少女本人がその一人なのは恐らく違いない。
「うん? なんだろう? アレ?」
少女は遠距離の物体に視点を合わせて、訝るように凝視している。
遠くから、箒飛行機にのって、ここ目掛けて飛んでくる物体があったのだ。
近づいてくるとその全貌が判明する。
「やあぁ~♪ ごきげんよぉおお~♪」
鉄塔の頂点に座す彼女に、箒を静止させて挨拶してくる。
その見目は輝ける銀髪を靡かせる、少女と似たような存在。
夜の闇に溶け込むような黒色の髪、衣装の彼女とは、酷く対照的な色彩である。
「ごきげんよう、貴方、だれ?」
初対面であるらしい彼女は、若干の警戒心を秘めた声で問いかけた。
「君と同じ存在だよぉ~♪ 歌姫シリーズの!♪」
手を上げて宣言し、ニッコリと微笑む。
彼女は思う、確かにその姿は、自分と似ている、気がするっと。
「気づいていたぁー本当の気持ちぃ~を♪伝えるのがとても怖かったぁ~♪ 言えずにいたぁ~一言を今すぐ君へと届けたいぃ~♪」
「え? 突然、なに?」
いきなり歌いだした少女に、困惑の声をあげる彼女。
「一目惚れしたんだよ♪!!」
「はぁ、意味が分からないんだけどぉ、、」
「友達になろお♪!?」
横に箒を動かし、鉄塔の頂点の彼女に近づいてくる。
距離的に手を伸ばせば届く距離に至り、握手を求めるように少女の真っ白な手が差し出される。
ソレを見て、彼女はどうすればいいのか分からないように、真顔で少女を見つめる。
「ほらぁ♪ほらぁ!握手握手♪ 手を頂戴ぃ♪!」
催促されて彼女は決意する。
「ごめんなさい、私、貴方のように騒がしいのは好みじゃないの」
「ええぇ!!♪」
どうやら、一方的に相性が悪いようなのか、彼女はソッポを向いてしまう。
少女は彼女の台詞に対し、驚いたように目を見開く。
芸人顔負けの、身体全体を使ったオーバーリアクションまでしている。
「ダメなのぉ♪! 友達になってくれないのぉ!♪??」
「ええ、遠慮させていただくわ」
それを聞き、少女の態度は一変した。
ダウナーにネガティブに、沈んだ表情を彼女に晒してきたのだ。
ソッポ向いていた彼女は、少女が諦めたのかなっと、ついと視線をやる。
彼女が目撃したのは、涙目の、哀れなまでに歪んだ少女の顔であった。
「っ!!!??」
彼女は今までにない胸の高鳴りを覚えた。
彼女は思う。
(なんだろう、この愛苦しい生命体は?
もっともっと泣かせてやりたい、そんな意味不明な感情の情念が止まらない、止められない、止めたくないぃ!)。
「ちょっと、こっち来て?」
声だけで催促して、何かの意志を内包した強い眼光で少女を見つめつつ、彼女は言う。
「うぅ、、、うん」
困惑気味の少女が、手を伸ばせる距離から更に近づく。
すると、彼女は箒上の少女を浚うかのように、素早く両手で捕まえて、鉄塔の頂点で姫抱きした。
「つかまえた」
「ええ!!♪」
驚く少女を見つめて、ニタリと嗤う彼女の姿。
どういった事態なのか分からない少女を、愛しく見ている、彼女はつもりだった。
「友達になってあげる、遊びましょう?」
「うっうん!♪ やったぁ~~!!♪」
心底から嬉しげな彼女を見て、彼女は先ほどと真逆の感情を抱く自分に困惑していた。
(あれ? この笑顔を守りたい、そんな、先ほどの感情と矛盾する、、、。
この子は、一体何なのかしら?
今までに無い不思議な感じ、、なんにしろ、興味深いわ)
少女は歌声のような旋律のまま、まるでマシンガンのように話し出した、
彼女は多少それに圧倒されながらも、忙しく相槌と突っ込みを入れていた。
話す内容も彼女にとっては未知の事ばかり。
だけど、彼女の話すことも、同様に少女にとって未知で、酷く驚愕されるほどに新鮮なモノであるようだ。
その日、対照的な少女の笑い声が、鉄塔上から絶えることは無かった。




