帝国コロニー譚-シャルと罵詈雑言発表会場
それから、事態は膠着した。
客観的に言って、冷戦という名の水面下の戦いに移行した。
一般の民衆から見れば、世界は安穏に平和になったように見えているのだろう。
先の戦いについては、順当に上手くいった。
最新の防護フィールドによって、敵の攻撃はこちらに届かず、一方的に敵を蹴散らしたのだ。
「暇だ、退屈だ、飽きた」
巨大コロニーの、その天辺。
もっとも高い位置、町並みを見下ろせるテラスから、そのように世界に言霊を吐く。
頭上を見ると、無駄にハイテクなテクノロジーの結果、虹が見えた。
複雑な自然現象を起こせるほど、此処の住環境のレベルは高いので、その再現性の精華なのだ。
「なんか面白いことないのかよ、くそが」
鬱屈が溜まる。
現在は膠着状態なのだ、特にイベントは皆無に等しい。
勝利によって、賭けの要素の強い、敵との決戦を回避できた。
だが、それ故に、このような空白期間を生じさせてくれたのだ。
「にゃにゃ、退屈そうだね?」
「市庁舎に無断で忍び込むたぁ、命知らずだな」
「許可は得たよ?」
「市長の俺様が許可してねーだろうが」
「迂回して、議会の特別許可を得たから、レイル、あんたから許可をもらったのと同じってわけ」
隣までスタスタ歩いて、寄り添わない程度に間を空けて立つ。
「あんた、退屈そうだね」
「たりめーだ、人生は粗方楽しみ尽くして、何もすることがみつからねぇー」
「だろうね、わたしもそう。
だけど、まだやることがあるでしょ?」
「ああ、あるな。
てめぇーをぶっ殺したりして、最強になるっていう、事後処理染みた、全クリまでの作業プレイがよ」
「強気だね、あたしには、能力的に絶対敗北してる、自覚あるのかな?」
「総合力で負けてる自覚はあんのか?」
お互い横に顔を向けて、相互に睨み合う。
「はぁー、退屈だ。
こんなキャラクター程度じゃ、キャラゲーにすらならねぇ、もっといい役者を連れて来い」
「あんた、そのゲーム脳は改善した方がいいよ、傍から見ててすんごくウザぃ」
「馬鹿が、だからやってんだろうが。
そんな事も理解できないから、低脳で使える能力を活かせないんだろうが、この無能がウマシカが」
「あはっ、私ひさびさに胸が熱くムカムカしてきたよぉ」
「なんだ、いい笑顔できるじゃねえか、いつもそういう顔してろよ」
ニタニタ笑って見つめてやる、嘘でも演技でもない証拠で、露骨に顔を赤くしている奴の姿だ。
「いい度胸だね、レイル、今此処で決着をつけるぅ?」
「シャル、俺様そろそろ退屈なんだ、そのパターン変えてくれねぇーか?」
「はぁーぁ、上から目線で、ちょームカつく。
大して能力も無いくせに、虚勢だけで、中身が無い癖に、こいつ、、」
「言ってろ、能力あっても活かせない無能が」
「真の無能はあんたでしょうが、能無しが」
「水掛け論か? くだんねえぇ。
お前より僅か僅差で劣る能力があって、それをしっかり活かしてる俺様がお前より上って事実を、そろそろ認めろっつぅーに、ックックック」
「やっぱりあんたは、今一番殺してやりたい奴ナンバーワンぶっちぎりで、とても果てなくムカつくから、自主的に自殺してくれない?
退屈なんでしょ? 無駄に生きてんじゃねえよ、あんたが生きる酸素が勿体無いし、いらない存在がのうのうと生きて資源を無駄に消費すんな」
「言いたい事はそれだけかぁ? 捻りのない悪口雑言だな、残念ながら及第点はあげられねえ、落第だシャル」
「カス如きが、評価を口にしないでくれる?」
「ああまあ、ハネッ返りのガキみたく、癇癪起こしていきり立っている。
そういう憐憫の目でみれば、多少可愛いから、特別に許してやる、ありがたく思えよ。
本来なら、お前のトラウマとコンプレックスを意図的に爆発させて、惨めにのたうち回らせて、苛め抜くポイントだぜ」
「もういい、帰るわ、さよなら」
「はんっ負け犬が」
奴は気持ちの良いくらい、綺麗に地団太を一回踏んで、殺意の篭った視線をくれてから、颯爽と翻り帰っていった。
ふぅ、多少は暇つぶしになったな。




