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桃髪の少女、茜野百乃について-一回目

 

 

 茜野百乃アカネノモモノ

 そいつは桃髪の怪物だ。

 同一の物理現象であると思えないくらい、掛け値なしの高次現象。

 俺が一生掛かっても到達も、理解も一切不可能な領域に座す、上位存在なのである。 


「ってコンセプトで、小説でも書こうと思うから、今日から超人キャラでよろしく」


「いやだよ」


 一蹴された、当然だろう。

 こういうのが、小説で言うところの、ご都合主義の無いリアリティーと言えるのだろうか? 

 一応覚えておこうか。


「なんで小説書こうと思ったの? 他にやらなくちゃいけないこと、あんたには沢山あると思うんだけど?」


「いや、人間の限界を、ちょっと昨日ばかり悟ってね。

 無上に飛躍する為の情報は、世界から供給するよりも、自給自足したほうがいいんじゃないかと思った」


「意味わかんない」


「なんか真理を一途に真剣に目指す、錬金術師や魔術師みたいで、今の俺ってカッコよくない? モテない?」


「はぁ、、つまんない、その話、いい加減やめない?」


 つれない子である、まあ現実味、現実性のあるキャラとは、こういう振る舞いがデフォと参考にしておこう。


「俺のこと、好き?」


「いきなり何ぃ? すんごくキモイんだけどぉっ」


 百乃は怒った顔で睨めつけてくる。


「なんか、いきなり、こういう事言う、アニメか小説なかった? ドラマだったかな?」


「さっきから、意味不明なことばっか言ってると、絶交するわよ?」


 切れる若者ってフレーズが浮かんだ、って絶交って酷いね百乃さん。


「いやだよ」


「でしょうね、私も、今のモードの貴方がそうなの、やめてくれない?」


 都合のどこまでも果てなく良くない彼女だ。


「分かったよ、やめるよ、それで、何するの?」


「え? いきなり何よ?」


「だから、、、、うん?」


「はあ?」


 意味不明な間が空いた。


「無茶振りだったのかな?」


「さあ、ね」


 そっけなくされる、目だけは逸らさないでくれたが。


「なんかごめん、謝るよ」


「だったら、最初からやらないで、って言うほどのことじゃなかったけどね」


 どっちなんだろうか、それは。


「ところで、面白い小説書こうと思うんだけど、どうすればいいかな?」


「そんなに、自分で書きたいの?」


「うん、書けるようになりたい」


「なんか、凄く向上心あるわね、別に、自分で書けるようにならなくてもいいんじゃないの?」


「どうして?」


「だって、本屋に行けば、たくさん、そういう面白い小説ってあるんじゃないの?」


 なんか事務的に提案するような口調だった。

 こっちがトンキョンだから、バランスを取る為に自分は冷静にならなくちゃと思ったのかしら。


「自分で書けるようになれば、常に一定のクオリティーで娯楽を供給できたりする」


「難しい話ね、でもなんとなくわかった、理解はした。

 それで元の、どうすれば面白い小説を書けるかって話ね」


「そうそう、どうすると一番いいかな?」


「えーとね、素人の意見よ? 聞いてもあんまり意味無いわよ?」


「いいよいいよ、何でも言っちゃって」


「はいはい、第一に、今現在傑作と評判の作品を、読み漁るといいんじゃない?」


 言った後、直ぐに変な顔をした。


「やっぱり、今のなし、意外性に欠けるわ、面白みもね。

 前言撤回。

 貴方はね! 小説を書く前に、まずはもっとやるべき事をやってやってやり尽くして、まともな! 真人間になるべきなのよぉ!」


 ビシッと指を突き刺して、大仰に言ってくれた、キリッと眉が凛々しくカッコよくなっている。


「うっうん、わかった」


「ふん、わかればよろしい」


 ちなみに立ち上がったので、いま座った。

 とすんと椅子に腰掛け、やってやったとばかりに満足げになっている。


「それで、他にはないかな?」


「ないわね、貴方がするべき事は、貴方自身が一番よくわかっているはずよ?」


 さっきの延長線上なのか、微妙に演技っぽいアニメキャラみたいな語り口調である。


「あわわ、わかったよ」


「あら可愛い、なに、その”あわわ”って?」


「あわててるのを表現してるんだよ」


「馬鹿っぽいけど? まあ、否定はしないどいたげる」


「ありがとう」


 うぅ、なんかテンション下がってきた。


「ねぇねぇ、どんな小説書きたいの?」


「官能小説」


「、、、死ぬの?」


 なんで死ぬのか、まあ死ねと暗に言われているのだろう。


「冗談だよ、あっはっはっは」


「まあいいけど、わたしをネタにしないでね」


 完全に嫌われたのか、目を露骨に背けられた。

 そこはかとなくやってしまった感が、流石に出てくる。


「ごめん、ゆるして」


「ゆるさない」


 普段とは口数少なくなってる感じだ。


「ほんとにごめん、マジでゆるして、死んじゃう」


「反省してるの?」


「してるしてる、超してるから、後生だから」


「うん、じゃあ許す」


 、、、ちょろいなぁ、おい。


「それで、小説ってどうやったら書けるの?」


 一転、突然そんな事を聞かれたので多少惑う。


「うん? 書こうと思えば書けるよ」


「上手く書きたいんでしょう?」


「そうだね、書きまくればいいんじゃないかな?」


「見通し悪いわね。

 それで書けるようになれば、みんな天才よ」


 具体的な話を求められているようだ。


「まずは、百乃が言ったように、やるべき事をやる。

 そして、人間としてまずは至高のくらいに至って、天下を取る、目指す」


「いきなり話が壮大になった気がするんだけど、気のせい?

 だいたい天下が取れれば、もう小説なんて書かなくても、書けなくてもいいんじゃないの?」


「ふっ甘いな、ちっちっち。

 天上人になったからこそ、初めて至高の位置から至高の物語が描けるのさ」


 眉を顰めて、ムカついてるような瞳、表情。


「それって、何かの受け売り?」


「いや、今考えた」


「それじゃ、貴方が元ネタなのね?」


「うんそうだな」


「だったらネタ元じゃなく、貴方に怒りをぶつけていいのね?」


「それとこれとは、話が別だな、うん」


 彼女は溜息をつきたいような顔だけして、続ける。


「貴方が、面白い小説を書けるヴィジョンが浮かばないんだけどぉ、諦めれば?」


「おいおい、突然どうしたのさ?」


「いや、ただね、貴方に愛想が尽きたというか、好感度がガクッと下がったというか、まあそんなとこ」


「そんな酷い、俺はお前のこと凄く好きなのに!」


「うぅっっうるさい! 大声で言う事かぁ!」


 慌てたように、俺より数倍大声で喚く。

 彼女のこういう乗り易い所は好きだ、なんとなく俺に合わせてくれてる気遣いも感じられる。


「ごめん、それで好感度上がった?」


「ど、どこに上がる要素あったのぉ、、」


「好きって言ったし」


「ばかぁっ、すきすき言わないでぇ」


 なんだか心なし涙目になって、赤い顔される。

 そんなに好きと言われるのに弱いのか、愛に餓えているのかしら?


「百乃、好きだよ」


「はぁ、もう慣れたわ」


 さっきまで胸を押さえて、苦しそうに深呼吸してたのに、、、。

 環境適応度高すぎ、流石全体的にハイスペックジェネラル人間。


「ねえ、タクミぃ、好きよ」


 甘甘な声で言われた、多少胸キュンはした、けどポーカーフェイスで強がることにした。


「ああ、俺はそういうの完全になれてるよ」


「つまらないのね、もっとうろたえたりしてくれてもいいのにぃ」


「ごめんね、で、小説の件についてだけど」


「それ、まだ続けるの?

 もういいじゃない、一定で恵まれて、幸福な人が書いた本を読む感じで。

 正直正味、貴方じゃ、、ねぇ? 書いても、あんまり意味無いっていうかぁ、、」


「ひどい」


 彼女の本心っぽいので、よけい胸にきた、確かに、そうだろう、そうかもしれないけど。


「まあまあ、私が貴方の傍にいてあげる、一生幸せ確保した幸せモノでしょ? 貴方?」


「それって、彼女になってくれるの? 結婚して嫁に、妻になってくれるって事?」


「な、生々しいわね、一生の友達よ、勘違いしないで、、、きもちわるい」


「うぅ、ねえ、もう一回”貴方”って言って?」


「い・や」


 きっぱり言われる。


「なんか、貴方ってつくづく可愛そうな人ね、そこがチャームポイントなのかしら?」


「そんなこと、俺に聞かないでくれ、傷つく」


「いいじゃん、若い頃の苦労は買ってでもしろっていうし」


「意味分からないよ」


 がっくりしたような顔を装うと、隣にちょんと近づいてきて、肩をぽんぽんされた。


「ふっふ、面白いわね、あなた」


「そう?」


「うん、なんとなく、可愛げがある。

 一生、そのままで居ればいいと思うわ」


「百乃も、の方が、可愛いと思うけど?」


「そりゃ、女子ですもの、当然よ。

 可愛さで男子に負けるなんて、ありえない話よ」


 言って、ふんと鼻を鳴らすようにする。


「ねえ、一生傍にいてあげるって言われたら、うれしい?」


「うえ、そんな確認して、何を企んでるんだ?」


「別に、確認、というより再確認」


「うれしいよ、居てくれるの?」


「さあ、確約はできないけど、いたいなとは、思うのよ?」


「ありがとう」


「ええ、どういたしまして」


 彼女は桃髪の少女だ。

 俺はそれ以外に、彼女を第一に分類できる何かを、まだ見出していない。


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